経済&マーケット

検証:株価は今、投資サイクルのどこに位置するのか

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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株式市場における循環的なブル相場の歴史からは、昨年3月以降の株価回復がまだ継続する事が示唆されています。

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しかし、シクリカルな強気相場において、株式リターンは2年目で減速することも稀ではありません。

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債券利回りの上昇を受けて、株価には更なる調整が入りやすい状況にあるものの、明らかな割高感や景気過熱感、金融引き締め、株価のピーク局面で良く見られる投資家心理の高揚感は確認されていません。

はじめに

新型コロナウイルスの脅威から株価が過去最低を記録して、早くも1年が過ぎようとしています。昨年3月23日に記録した水準から、米国株式は73%、グローバル株式は66%、豪州株式は53%の上昇を記録しています。この様に、株式市場の回復は相当力強いものとなっており、足元では債券利回りが急上昇したことからも、この新たなブル相場に対するリスクを懸念する声が上がっています。これに対する反論は、投資サイクルは強気相場が終わる局面にはまだ達していないというものです。このレポートでは、現在株価が投資サイクルのどこに位置するのかを検証します。

 

第二次世界大戦後における循環的な強気相場

これを考えるにあたり参考となるのが、過去のシクリカルな強気相場の検証です。次の図表では、米国株式市場における第二次世界大戦後の循環的な強気相場を示しています。

米国株式市場:第二次世界大戦後における循環的な強気相場

これら米国市場の循環的な強気相場において、平均的な株価の上昇幅は172%、継続期間は64か月です。2010年代の長期に渡る強気相場を除いても、上げ幅の平均は149%、継続期間は57か月となっています。

次の図表では、豪州の株式市場における第二次世界大戦後の循環的な強気相場を示しました。平均的な株価の上昇幅は116%、継続期間は46か月と、2010年代における2つの弱気相場を一部反映した結果、米国よりも小幅かつ短期な内容となっています。

豪州株式市場:第二次世界大戦後における循環的な強気相場

これら過去の例と比較して考えると、昨年から続いている株価の上昇トレンドがここで終わるとすれば、相対的に短期間だと言えます。勿論、期間や上昇幅だけで強気相場を語る事はできませんが。

 

投資サイクル

次の図表では、投資サイクルを図解しました。

投資サイクル

一般的に、株式市場の強気相場(図表の緑線)は3段階で進行します:

  1. 第1ステージは通常、経済状況や信頼感がまだ力強さに欠ける状態にあるものの、超緩和的な金融情勢や低金利、低い債券利回りを背景に、一部の投資家が株価にバリューを見出す局面です。
  2. 第2ステージでは、経済成長の加速に伴って企業収益が好調となり、懐疑的だった投資家が楽観的な見方に転じます。金融引き締めの可能性が浮上するものの、極めて緩和された引き締めが開始となる点やインフレが抑制されている点から、引き締めがスタートしても緩和状態が維持されます。つまり、債券利回りの上昇があっても、株価の循環的な上昇を邪魔する程ではありません。
  3. 第3ステージでは、堅調な経済や企業業績を背景に、投資家マインドは楽観から高揚へと変化し、株価を割高な水準へと押し上げます。一方で、インフレが問題化し、中央銀行が金融引き締めに動くことで、債券利回りの大幅な上昇を招きます。投資家は既に大量の株式を買い入れている点や割高な株価、金融引き締めという要因が相まって、新たな弱気相場の土台が形成されます。

上記した図表から分かる通り、循環的な強気相場は平均で3-5年の間継続します。これを左右するのは、余剰生産能力の解消やインフレの上昇のスピード、そして割高感や高揚感の過剰度です。つまり、「強気相場は、時間ではなく疲労によって終わりを迎える」というわけです。

また、第3ステージとは関係のない外的ショックによって弱気相場がスタートするケースもあります。昨年がこの例で、過熱感は確認されていませんでした。実際のところ、米連邦準備理事会(FRB)や豪州準備銀行(RBA)を含む中央銀行の多くは、コロナ禍のシクリカルな弱気相場とリセッションの前まで、金融政策の緩和を行っていました。しかしながら、シクリカルな回復が新たに始まっています。

 

第1ステージ後のギアチェンジ

強気相場に突入後の2年目において、株価の上昇はより小幅となり、値動きが激しくなるケースが多くなっています。次の図表が示す通り、豪州株式の平均的な上昇幅は、1年目が28%であるのに対し2年目は僅か7%、米国市場では1年目が42%、2年目は僅か8%です。これは、強気相場における最初の株価上昇局面で割安なバリュエーションが解消されている点や、成長を示す先行指標が加速から拡大にシフトしている事、そして刺激策の巻き戻しを反映した結果です。これは、不透明感が後退したときに買い戻そうという考えでは、株価上昇局面を捉え損ねてしまう事を示しています。

強気相場では、2年目に入って株価の伸びが鈍くなる

今、株価はサイクルのどこにあるのか?

昨年3月以降、株価は大幅に上昇しているものの、現在は初期回復局面(第1ステージ)から収益成長を背景とした上昇局面(第2ステージ)への移行途中にあると見れら、循環的な強気相場の終わりで見られる過熱感や疲労感が出始めるのは、まだ先となりそうです。サイクルを見極める上で一番良い考え方は、バリュエーションや経済成長、インフレ圧力や金融情勢、投資家マインドを検証することです。

  • 株価だけをその過去水準と比較した場合、予想PERは長期平均を大きく上回っており、決して割安とは言えません。しかし、今年に入って債券利回りが上昇したものの、優れたイールドを提供しているのは債券ではなく株式です(以下の図表を参照)。
債券に比べ、株式は優れたイールドを提供
  • 経済刺激策とワクチンの普及を背景に、世界経済は今年力強い成長を遂げる見通しで、これが収益見通しの大幅な上方修正を促しています。米国では、2020年10-12月期の収益が予想を12%上回ったほか、豪州では1月中旬以降、今年度の収益成長が13%程度上方修正されています。
  • 2021年において経済と収益は大きく成長すると見られるものの、製品や労働市場における余剰生産能力の解消にはまだ時間がかかります。ということは、昨年のデフレ分は今年のインフレ率の計測には含まれないことや、エネルギー費用や幅広い原材料の上昇、サプライチェーンの問題を受けた物価上昇を背景に、総合インフレ率は今年急上昇する可能性が高い一方で、循環的な弱気相場の兆候ともいえる過剰な状態とは対照的に、コアインフレ率と賃金の伸びは軟調さが継続する可能性が高くなっています。
  • つまり、FRBやRBAが示唆している3年以上先という利上げのタイミングが早まる事も考えられますが、早くても2年先となる可能性が高く、欧州中央銀行(ECB)や日銀においてはもっと先となるでしょう。
  • 最後に、投資家の間では楽観的な見方が強まっていますが、高揚感には至っていない模様です(ビットコインについては周期的に高揚感が出ていますが)。豪州では、賢い貯蓄手段として、株式よりも銀行預金が選好される傾向が続いています。

 

投資家への影響

大きな観点から見ると、サイクルのピークで確認される疲労感は確認されておらず、株式の循環的な強気相場はまだ継続する可能性が高いと言えます。

とはいえ、債券利回りの上昇を受けて、株価にはさらなる調整が入りやすい状況にあります。中でも、高PER銘柄であるテック株は、債券利回りの低下を一部背景に長年にわたりアウトパフォームしてきており、収益成長の伸びというプラスの影響があったとしても、株価の下落を防ぐには不十分でしょう。これまでのところ、これらテクノロジー関連銘柄は調整を逃れています。最終的には、より割安でテック株の比率が相対的に低い、豪州など米国以外の株式市場こそ、今年のアウトパフォーマーとなる確率が高いと言えます。

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