経済&マーケット

市場見通しQ&A:世界回復、ワクチン、インフレ、株価暴落リスク、豪州住宅価格、その他の問題

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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世界回復は軌道に乗っており、ワクチンが効果を発揮しています。

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ジョブキーパー(給与補助金)制度の終了によって、豪州経済が回復軌道から外れる事はありません。

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インフレ率は中期的に問題になる可能性があります。

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株価には修正が入るリスクがありますが、経済と収益の回復が支えになっています。

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豪州の住宅価格は再び活況を呈していますが、今後数ヶ月で減速措置が講じられるでしょう。

はじめに

本レポートでは、投資見通しに関する一般的な投資家の質問のうち、主要なものを簡単なQ&A形式で取り上げます。

世界経済の回復は軌道に乗っているのか?

はい。ワクチン、財政刺激策、金融緩和、2桁の家計貯蓄率からも明らかな積み上がった需要を背景に、経済の再開が維持される中で、今年の世界成長率は5.5%前後を見込んでいます。企業の景況感は世界的に堅調です。世界的なリバウンドは中国が先導する格好となったものの、今年は急速なワクチン普及と大規模な財政刺激策を反映して米国が主導しているように見受けられます。ワクチンの普及が加速するにつれて、下半期には欧州と日本でより力強い成長が見られると予想しています。新興市場の成長も好調となるでしょう。

ワクチンに効果はありますか?異変ウイルスに対しては?

ワクチンの効果は変異ウイルスに対しても見られます。現在、ロシアと中国のワクチンに並び、5つの西洋ワクチンがあります。(人口の58%が1回以上のワクチン接種を受けている)イスラエルと(同45%が少なくとも1回のワクチン接種を受けた)英国における多数の試験と結果によると、様々なワクチンの感染予防効果は約75%であり、重篤な病気、入院または死亡(新しい変種を含む)の予防において100%近い有効性が示されています。この点は、イスラエル、英国そして(1回以上のワクチン接種を受けた人口は僅か29%であるものの、現在は1日当たり300万人に対する接種を実施している)米国における新規感染者数、入院および死亡件数の急激な減少から明らかです。

しかし、持続的な経済の再開に確信を持つ上で重要なのは、入院と死亡に対する予防効果です。集団免疫を獲得するまでは、新規感染件数の増加が時折あるかもしれませんし、ワクチンの供給がどのくらい継続するのかも不透明で、追加の供給が必要となるかもしれません。欧州では新規感染件数が再び増加していますが、新興国や豪州と同様にワクチン接種で後れを取っており、1回でも接種を受けているのは人口の僅か10%となっています。とはいえ、ワクチンの生産は急速に拡大しており、ほとんどの先進国では今年年末までに(米国に関しては年央)、新興国では来年を通して、ある程度の集団免疫(人口の70%以上がワクチン接種済み)が獲得できるでしょう。

ジョブキーパー制度の終了後も、豪州経済は回復を維持できるのか?

豪州経済が、回復軌道から脱落するというシナリオは考えにくいでしょう。ジョブキーパー(給与補助金)制度の終了を受けて失業のリスクが高まるのは、労働時間がゼロの労働者と言えます。昨年4月時点における労働時間ゼロの労働者は72万人、現在は2月の正常水準を7万人上回るレベルにあります。この7万人が失業する場合には失業率が上昇しますが、その幅は僅か0.5%程度となり、2月の5.8%という予想以上に低い水準からの上昇となります。そして、2月には9万人近い雇用が創出されている点も忘れてはいけません。労働時間が短縮したワーカーは、2月時点で正常水準を10万人上回るレベルに達していますが、これら労働者にとってのリスクは、失業よりも収入の減少だと言えるでしょう。複数のデータからは、求人件数が1年前より15%程度増加している事が示唆されており、旅行やオフィス街関連サービスといった分野の失業分は、その他分野における雇用の伸びがカバーすると見られます。ジョブキーパー制度を通じた経済への資金注入規模は、昨年9月の120億豪ドルから、今年3月には25億豪ドルへと既に縮小されており、この間も豪州経済は回復を続けています。ジョブキーパー制度の終了による影響は、個人向けの減税や投資インセンティブなどその他の支援策によって一部相殺される見通しです。従って、豪州経済は今年約5%程度の成長を遂げると予想しています。

豪州で継続している一時的なロックダウンは?

これらは混乱を招く要因であり、国内旅行の計画を立てる上で大きな障壁であるものの、その期間が短い限り、(最近の状状況がそうであるように)豪州経済全体への影響は軽微です。(CSL社による国内生産の開始とともに)ワクチン接種のペースを加速することができれば、集団免疫の獲得に伴って、ロックダウン措置も終了となるはずです。もちろん、ブリスベン(やその他地域)の一時的なロックダウンが長期化する場合には、政府はロックダウン地域を対象としたジョブキーパー制度又はこれに類似した対策を検討する必要が出てくるかもしれません。

財政刺激策によって米国経済は過熱するのか?

今年初めに導入された6000億米ドル規模の刺激策に次いで、バイデン米大統領が1.9兆米ドル規模の新型コロナ救済支援策を打ち出しており、今年米国で計画されている経済対策は昨年の2.3兆米ドルを超える規模に達しています。これに加え、インフラや気候変動に焦点を当てた追加の経済対策も予定されていますが、これは複数年かけて実行に移され、その資金の一部は企業や高所得者を対象とする増税で賄われる計画です。これら全てを合わせると2年間で約5兆米ドル(対GDP比23%)と、1930年代のニューディール政策以来最大の景気刺激策となります。経済の再開を受けて、米国のGDP成長率は今年8%程度まで押し上げられる可能性が高く、新型コロナ以前の水準を上回る見込みです。バイデン政権が長年続く社会的分裂に取り組もうとしているのは明らかですが、これほど大規模な刺激策には経済過熱のリスクがつきものである事は間違いありません。

インフレは問題になるのか? 

昨年のデフレ分は今年のインフレ率の計測には含まれないことや、エネルギー費用や商品価格の上昇、サプライチェーンの問題、豪州の洪水による生鮮青果の価格上昇の影響を受けて、米国と豪州では今年、インフレ率は4%に向かって上昇する可能性があります。しかし、歪みが解消され、供給が持ち直し、サービス需要が回復する一方で、賃金の伸びは低調が続く可能性が高いことから、これは一時的なものになる可能性が高いでしょう。

とはいえ、今後2~3年後以降については、インフレリスクは上向きに振れる可能性が高いと言えます。これは、余剰生産能力が解消するだけでなく、グローバル化によるインフレ率低下の影響が薄れ始め、政府による経済への介入が高まる時期に、超積極的な金融政策が最終的にインフレを押し上げるためです。つまり、1990年代初期にインフレ上昇圧力がピークに達した時の様に、今まさに、その逆の分岐点に立っている様に見受けられます。

インフレ率の上昇に対する最良のヘッジとは?

持続的なインフレ率の上昇は、最終的に、経済の利回り構造に対する上昇圧力を意味しますから、金利の低下から長年恩恵を受けてきたハイテク株のような高PER銘柄にとって、マイナスの影響を及ぼす可能性があります。持続的なインフレの上昇に対する最良のヘッジは、インフレ連動債、コモディティのような実物資産、より強い収益成長が期待される一部の株式です。

金利はいつ上昇し始めるのか?

米連邦準備理事会(FRB)も豪州準備銀行(RBA)も、目標以上のインフレ水準を維持するのに十分な労働市場のひっ迫化には長い時間を要すと見ており、利上げ開始の時期は早くても2024年との考えを示しています。当社では、もう少し早い2023年となる可能性があると見ていますが、それでもまだ当分先の話で、欧州や日本に関してはさらに時間を要するでしょう。住宅ローンの固定金利は長期債利回りに連動していますので、すでに底打ち始めている点に注意してください。

巨額の公的債務は問題を引き起こすのか?

これは問題になる可能性がありますが、大きな危機は回避されると考えて良いでしょう。第一に、公的部門の借入コストは依然として極めて低い状態です。第二に、日本は何年もの間、高い公的債務を抱えてきたものの、大きな問題にはなっていません。第三に、問題が発生した場合、各国政府が、中央銀行が現在所有している債券を帳消しにするという展開も考えられます。最後に、豪州の公的債務は比較的低い水準にあります。

株式市場の暴落のリスクは?

株価は、新型コロナ発生を受けた1年前の安値から強いリバウンドを記録しており、債券利回りの急激な上昇の継続や集団免疫獲得以前の新規感染者数の増加が引き金となって、相当程度の修正が入る可能性が高くなっています。暴落は常にリスクであるものの、当社のベースケースではありません。その理由として、まず第一に、強気相場入りした2年目において、株価は既に割安ではなくなっており、企業収益の増加に依存するようになることから、リターンが減速するのは珍しい展開ではありません。第二に、今年の債券利回りの上昇は急激なものとなっていますが、昨年株式市場が景気回復を織り込み始めたのと同様の動きが、債券市場でも見られている事を反映した結果です。第三に、債券利回りが収益利回りを上回った2000年とは対照的に、債券利回と比較すると、株式市場は依然として、力強い収益利回りプレミアムを提供しています。つまり、株価はまだ割高ではありません。第四に、成長見通しの改善を裏に、今年はこれまでのところ、業績予想が大幅に上方修正されています。第五に、主要市場のサイクルの頂点で見られるような景気過熱、金融引き締め、投資家の高揚感はまだ確認されていません。最後に、米国株式市場が過去最高を記録している点については、株価は時間の経過とともに上昇するため、市場はしばしば過去最高値を記録します。

アウトパフォームが見込まれる株式市場/セクターとは?

米国の成長は、最近、大規模な追加の財政刺激策と迅速なワクチン普及によって後押しされ、米国株と米ドルのサポート要因となっています。しかし今年は、昨年の相対的な勝者(ハイテク株や米国株など)から、よりシクリカルなセクター(資源、産業、観光、金融サービスなど)へのローテーションが進むであろうという見方を当社は維持しています。米国外でのワクチン供給が加速しており、今年下半期には欧州と日本がワクチン接種の出遅れ分を取り戻すと予想されます。米国における刺激策の恩恵の一部が世界経済へと波及し、債券利回りの上昇がハイテク株の重荷となる一方で、バイデン米大統領による経済支援第2弾への資金拠出に向けた増税は、米国株に比較的重くのしかかることになるでしょう。

豪州株は上向き始めるのか?

世界経済が回復し、債券利回りが上昇するにつれて、豪州株式市場で比較的高いエクスポージャーを持つ景気循環セクターや金融サービスといったセクターが恩恵を受ける事になります。これに加え、豪州上場企業による配当金の急速なリバウンドを受けて、総配当利回りは今年5%へと押し上げられると見られ、最終的に豪州株が米国株をアウトパフォームすると予想されます。豪S&P/ASX200指数は、7,200近辺で2022年を迎えることになりそうです。

豪ドルは再び上昇するのか?

一時的に1豪ドル0.80米ドルを打った豪ドルですが、米ドルの反発を受けて、その上昇が失速しています。しかし、ワクチン普及を背景に米国以外の成長が加速する可能性が高く、また中国の成長は引き続き堅調に推移すると見られることや、米国における刺激策の恩恵の一部が世界経済へと波及し商品価格は引き続き堅調となるため、安全な逃避先としての米ドル需要は下落し続ける可能性が高いでしょう。その結果、豪ドルは上昇を再開する可能性が高く、年末には1豪ドル0.80米ドルを超えると見込まれます。

ビットコインへの投資は行うべきか?

ビットコインがデジタル通貨として定着する可能性は低いと考えています。なぜなら、取引には時間がかかるうえコストが高く、その値動きは極めて激しく、大量の電力を必要とするためであり、キャッシュフローを創出する資産ではないからです。これらを考慮すると、ビットコインは投資ではなく投機にしかなり得ないでしょう。もちろん、参加者が増加(または減少)することで、価格が更に上昇(または下落)する可能性がないとは言い切れませんが。

中国摩擦はどの程度大きな脅威なのか?

今のところ、堅調な商品価格、輸出の一部を他の市場に振り替える能力、実用的かつ短期的な面で、豪州産鉄鉱石の代替が困難になっていることを受けて、中国摩擦が(個々のセクターではなく)豪州経済全体に与える影響は抑制されている状態です(基本的にはその他の供給源が十分ではない)。とはいえ、注目すべき問題であることに間違いありません。

豪州住宅市場にブーム再来の理由は?

豪州住宅市場の再ブームを引き起こしている要因は、景気回復、雇用市場の回復、超低金利、購入者向けインセンティブ、FOMO(取り残されることへの恐れ)です。住宅価格は今年3月に1980年代以来最も速いペースで上昇した模様です。住宅ローン金利が超低水準にあることからも、この状況は今後18ヶ月間継続し、住宅価格はさらに20%程度上昇する可能性があります。しかし、今年後半には、次の要因を背景に価格上昇ペースの減速が見られるでしょう:
• 政府の住宅向けインセンティブは縮小に向かう可能性が高い
• RBAと豪州健全性規制庁(APRA)は、住宅ローン貸出の減速に向けて、マクロプルーデンス規制に再び乗り出すと予想されます。住宅価格を規制の対象にはしないながらも、過去の経験からは、住宅価格の急騰が貸出基準の悪化と金融安定リスクの増加につながることが示唆されていることから、近々貸出基準の厳格化というブレーキをかけ始めることは理にかなった行動です。手始めは、金利バッファーの拡大となるでしょう。
• 豪州の国境開放に伴った移民数の回復は段階的なものとなり、住宅は供給過剰となる可能性が高いと言えます。
• 30年にわたり豪州不動産市場をサポートしてきた金利低下という追い風は吹き止んだ可能性が高く、長期の固定金利はすでに上昇し始めています。
• アフォーダビリティの低下が再び圧迫要因になり始めています。

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