経済&マーケット

2021年に注目すべき世界経済と投資市場に関するチャート7つ

主なポイント

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株価は短期的な調整や修正が入りやすい状態にありますが、景気回復と低金利を背景に、今年の投資市場は良好なリターンを提供すると考えられます。

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今年注目すべき7つの世界チャートは:新規感染者数と死者数のトレンド、グローバル企業景況感PMI、失業率、世界のインフレ率、債券利回り、債券と株式のイールドスプレッド、米ドルです。

はじめに

当社見通しの概要は、昨年11月初旬から力強い上昇を記録した株価は短期的な調整が入りやすい状態にあるものの、(政府刺激策やワクチンの普及を受けてより持続的な経済再開が可能になったことによる)景気回復と低金利を背景に、今年の全体的な投資リターンは堅調となるというものです。そして投資リターンは、資源や資本財、観光関連、金融といった景気回復から恩恵を受けるセクターで相対的に良好となる見通しです。このレポートでは、2021年の見通しを考える上で重要となる7つのチャートを見ていきます。

 

チャート1:新規感染者数

ワクチン投与が開始となり、経済の再開が世界的に維持され、生活が正常化に近づくという期待感が高まっています。当社では、ベースケースとして、これらは来年あたりに実現すると見ています。ここで注目すべきは、新規感染者数と死亡者数のトレンドです。

世界の新型コロナ新規感染者数と死亡者数

世界の新規感染は最近減速していますが、これは直近のロックダウン措置の効果によるものと思われます。ワクチン投与は、先進国で人口の5%程度、新興国はそれ以下にとどまっているためです。感染予防や重症化防止の効果、変異ウイルスに対する効果や予防効果の持続性、人口の何割がワクチンを投与を受ける/感染すれば集団免疫を獲得できるのかなど、ワクチンを巡ってはまだ不明な点が数多く残っています。とはいえ、人口の30%超に対しワクチン投与を終えているイスラエルの実例からは、有効性に関するポジティブな兆候が確認されています。

 

チャート2:グローバル企業景況感PMI

主要国の企業購買担当者らの景況感を集計したグローバル購買担当者景気指数(PMI)は、世界経済の状態を知るにあたりタイムリーで適した指標です。昨年初旬に初めてロックダウン措置が講じられたことで低下したPMIですが、ソーシャルディスタンスの確保といった制限が残るサービス部門が後れを取っているものの、大きく改善を見せており、今年の力強い成長見通しと足並みが揃った格好です。とはいえ、当社の世界成長見通しである5%超を達成し、収益の大幅回復を下支えするには、更なる改善が必要です。

グローバル総合PMI&グローバルGDP

チャート3:失業率と不完全雇用率

足元では、投資家にとって成長改善と低金利という理想的な環境が整っている状態です。低金利に関して注目すべきポイントは余剰生産能力で、これを測る上で最も適した指標は失業率と不完全雇用率です。

労働力の不完全活用率

失業率と不完全雇用率の合計は、米国と豪州で昨年の高水準から大幅に低下したものの、いまだ高い水準にあります。今後も急低下が継続する場合には、中央銀行らによる金融引き締めのタイミングが早まる可能性があります。とはいえ、新型コロナ以前の水準であっても大したインフレ圧力を生まなかったことから、完全雇用の達成はまだ当分先となるでしょう。

 

チャート4:世界のインフレ率

若干のインフレ懸念と共に幕開けとなった2021年ですが、昨年4-6月期における消費者物価指数の下落は過去の話であり、商品価格上昇の影響が浸透するとともに、米国と豪州では、2020年7月-2021年6月期の総合インフレ率が前年比3.5%~4.0%近辺に向かって上昇しているように見えます。各国中央銀行は引き続きコア/基調インフレ率に注目しており、現在は米国、欧州、日本、中国ともに目標を下回る水準にあります。これと同様に、豪州準備銀行(RBA)が注目する豪州の基調インフレ率も前年比1.2%となっています。

米国、日本、ユーロ圏、中国のコアインフレ率

チャート5:債券利回り

パンデミック初期における資金の安全な逃避先需要と、その後中央銀行による国債購入を通じた経済への資金供給を背景に、長期債券利回りは大幅に低下しました。長期債券利回りの上昇とイールドカーブのスティープ化(短期金利と長期金利の金利差が拡大する)は、貯蓄の減少と借り入れ増加の結果経済が回復する一環で起きる現象です。債券利回りが上昇しなければ、リスクテイクによる投資、言い換えれば短期で資金を調達し、長期で運用することができないという懸念が出てきます。とはいえ、債券利回りの急な行き過ぎた上昇は望ましくありません。なぜなら、1994年に実際に起きたように、借入コストの上昇を招き、景気回復の出端を挫くことになり、株価バリュエーションの圧迫要因になるからです。債券利回りは、昨年の最低水準(米国や豪州では0.5%近辺、その他ではそれ以下)から上昇していますが、行き過ぎてはいませんので、今のところはまずまずの状況です。今年は、利回りが更に上昇する可能性が高いと考えられますが、例えば債券を積み増し過ぎた投資家が大量に売却するなど、早すぎるペースで利回りが上昇する場合には懸念点となります。

米国、日本、ユーロ圏、中国のコアインフレ率

チャート6:債券と株式のイールドスプレッド

昨年3月からの株価上昇を受けて、株価収益率(PER)など従来の株価指標が極端な水準となっており、一部では割高論やバブル懸念が出ています。しかし、金利と債券利回りが低下する局面において、PERは上昇、従って株式益回りは低下するのが常です。これを踏まえた上で考えると、株価のバリュエーションは行き過ぎてはいません。これを見る方法のひとつ、株式益利回り(PERの逆数)と10年物国債利回りの比較からは、株価のラリーや最近の債券利回りの上昇にもかかわらず、株式はまだ、そこそこのリスクプレミアムを提供している事が示されています。このイールドスプレッドは、注目すべきポイントです。債券利回りが上昇すれば、株価の魅力が下がる訳ですが、この分は今年力強い成長が見込まれる企業収益の伸びで補うことが出来ます。

債券よりも株式の方が割安な状態が続いている

チャート7:米ドル

米ドルは、カウンターシクリカル(反循環的)な通貨です。従って、複数の通貨に対するそのシクリカルな動きは、世界的に重要な意味を持ち、注視すべきポイントです。製造や素材など景気に敏感なセクターが米国経済に占める割合は相対的に低いため、米ドルは、世界成長に対する懸念が浮上すると上昇し、見通しが明るくなると下落する「リスクオフ」通貨になる傾向にあります。そして、新興国を中心とした世界の債務の多くは米ドル建てであるため、米ドルの上昇は新興国の債務返済負担が増加することになります。当社の見通し通りに世界経済が回復を続けるとすれば、米ドルは更に低下する可能性が高く(次のチャートにおける赤ラインが更に低下)、新興国にとってポジティブな展開となります。これはまた、米ドルに対する豪ドルのアップサイドを意味します(次のチャートにおける青ラインが上昇を継続)。これらは、米ドルを巡る大きな動きです。

主要通貨と豪ドルに対する米ドルの動き

最後に

株価は、2020年3月の過去最低水準から力強い回復を記録しました。短期的な調整は避けられないものの、このレポートで取り上げた指標が良好な状態を維持し、正しい方向に向かう場合には、株価は更に上昇すると考えられます。

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インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト シェーン・オリバー

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