インフラストラクチャー

欧州におけるエネルギー転換 PART2:欧州は過ちを正し、今後の道筋を描かなければならない

By ジュゼッペ・コロナ
グローバル上場インフラストラクチャー、ヘッド 英国、ロンドン

エネルギー転換は、大規模かつ複雑な課題です。

1980年代からこの取り組みを続けてきた欧州を例に取り、
全4回のシリーズを通してエネルギー転換を考えます。

PART2:欧州は過ちを正し、今後の道筋を描かなければならない

 

欧州では、30年近い間CO2排出が減少しています4。これは、エネルギー消費の低下(人口統計と脱産業化)、そして劣化や政策変更を受けて石炭火力発電所がよりクリーンな発電所(ガスや再生可能エネルギー)に入れ替えられた事によるものです。トレンドや政策が追い風となり、ゆっくりと着実に省エネ・CO2排出削減が実行されてきました。排出削減と強靭な政策方針や枠組みを安定的に実現しているのは、世界で欧州だけです。

ネットゼロ排出達成に向けて、経済のその他分野へと取り組みを拡大するにあたり、欧州は熱や運輸、工業プロセスを巡る新たなソリューションを開発しなければならないほか、電力セクターにおける予期せぬしわ寄せに対応する必要があります。

これらの課題やオポチュニティを理解するにあたり、欧州のエネルギー転換に関する研究が進むドイツの例を見ていきます。

欧州の現状

1970年代以来、欧州は世界の最先端でエネルギー転換に取り組んできました。これは、欧州が化石燃料資源に乏しいというだけでなく、経済の発展過程においてエネルギーを大量に消費する必要があったためです。

この結果、原子力やガス火力発電の促進が進み、そして再生可能エネルギーや排出取引の開発におけるパイオニアと世界をリードするようになりました。

今日、欧州連合(EU)はネットゼロ排出を2050年までに達成する目標を掲げています5

欧州の順境と決断力のある政策方針によって、排出削減に成功

欧州の人口成長は、1965年以来、その他地域よりも大幅にゆっくりとしたペースで進んでいます。1965年に15%弱だった欧州人口の割合は、現在9%未満まで低下しました。

1人当たりのエネルギー消費量(年間)は、1960年代の約26メガワット時から、現在は約34メガワット時と増加しています。1人当たりのエネルギー需要は1988年まで拡大していたものの、脱産業化やオフショアリング、エネルギー効率によって、継続的な低下基調に転じました。これとは対照的に、同期間における世界のエネルギー需要は拡大を続けています。

人口とエネルギー消費

人口と1人当たりエネルギー消費量が緩やかに増加した結果、欧州におけるエネルギー総需要の伸びは、その他地域を下回っています。エネルギー需要は2006年にピークを打った後に低下したものの、2014年以降は経済回復とともに再び上昇しています。欧州全体のエネルギー需要は1965年以来で約2倍に増加、年間平均で1.2%の成長を記録しています。これに対し、新興国のエネルギー需要は、産業化と生活水準の上昇を背景に、2000年以来年間平均2.8-6.2%のペースで拡大しています。

欧州では、連続する世代がそれぞれ力強い選択を行ってきました。1970-1980年代は石油や石炭の代替として原子力の活用が推進され、2000-2010年代には、これらに代わってガス火力、風力、太陽光発電への投資が支援されています。これら取り組みの結果、1965年には世界で2番目の排出の多い地域(1メガワット時当たりのCO2排出約0.27トン)から、今や世界で最もクリーンな地域(同約0.18トン)へと変化を遂げています。

一次エネルギー消費とCO2排出量
CO2排出量

欧州のCO2排出量がピークを打ったのは1987年。それ以降、絶対値(5,509メガトンから4,112メガトン)そして世界排出量に占める割合(27%から12%)の両方で減少しています。

 

大規模な取り組みが一部で実を結ぶ

クリーンエネルギーの導入を先導したのも欧州ですが、クリーンエネルギーと引き換えにアフォーダビリティが低下しました。

1973年のオイルショック以来、欧州はガス火力や原子力発電を推進してきました。これらへの投資が進むとともに、ガス火力と原子力発電がエネルギーミックスに占める割合も1990年代まで増加を続けました。

一般的なイメージに反して、再生可能エネルギーが占める割合はごく僅かでしかありません(水力を含めると全体需要の6.3%弱)。

欧州におけるエネルギーミックスのCO2集約度が低下した背景には石炭火力発電所の段階的な閉鎖があり、これは風力や太陽光エネルギーが導入される前の話です。

一次エネルギー需要とCO2排出削減

以下で示した通り、CO2排出削減に向けた最も効果的な方法は、電力システムにおける次の様な取り組みです:

  • 褐炭から他の石炭に切り替える事で大幅な効果が期待できる
  • 燃料炭やディーゼルからガス火力発電にシフトすることで、半減以上のCO2排出削減が見込まれるほか、再生可能エネルギーや原子力エネルギーではゼロ排出の達成が可能
  • エネルギー消費の分散化を通じて輸送ロスを低減することで、CO2排出の削減が可能
  • 欧州におけるエネルギー需要の約50%を占める熱供給と運輸を一部電化し、ゼロ排出の広域電力システムにCO2集約度を合致させれば、ゼロ排出の達成となる
CO2集約度

しかし、電力セクターのみが排出削減に取り組むだけでは不十分です。これは、電化や排出削減の効果が限定的な分野も存在するためです。

現在のバッテリー技術やその重量を考えると、電動のトラックや飛行機は経済的ではありません。その他のソリューションはまだ見つかっていない状況ですが、クリーンな水素を燃料に使用したり、燃料の節約や炭素回収といった技術が活用できるでしょう。

冷暖房からの排出は、電力システムにおける大規模な投資を通じた電化によって削減が可能です。とはいえ、建物の断熱/保温効果を改善することでエネルギー消費をゼロにする方が、よりクリーンかつ安い方法だと当社では見ています。

工業プロセスにおいて、電力では達成不可能な高温が必要になるケースがあります。この場合における排出削減のオプションとしては、水素と炭素回収・貯留が有効だと考えられます。

一般的に、電力消費の分散化によって輸送ロスを低減することが可能であるため、化石燃料を使った発電の場合にはCO2排出の削減に寄与します。また、分散化によって輸送網への依存がなくなったことでエネルギー価格が低下すれば、移行投資の資金確保にも寄与します。一方で、エネルギーの分散化が実用的でないケースもあり、利用者離れによって残った顧客のネットワーク費用負担が増加する可能性もあります。

前進するには、異なる考え方が必要

ここ20年の間、欧州では政府補助金を活用した再生可能エネルギー発電の大規模な開発が行われてきました6。政府における財政負担は相当な規模であり、多くの国が補助金の縮小や廃止に動く一方で、エネルギー転換で前進するために必要な技術に対する金銭的支援は不十分な状況です。

例えば、AMPキャピタルは、ビジネス・エネルギー・産業戦略省によるCO2回収・利用・貯留(CCUS)開発の枠組みを検討するワーキング・グループに参加していますが、この取り組みにおける唯一のハードルが資金です。再生可能エネルギーに対するコミットメントがある中で、英国政府はより多くの税金を割り当てる事には消極的です。一方、収益性が不透明であるため民間セクターも慎重になっています。

エネルギー転換の取り組みを電力以外のセクターへと幅広く拡大していくために必要なのは、新たな技術のスケールと知識向上に向けた新しい考え方です。

4. BP Statistical Review of World Energy 2020年
5. https://ec.europa.eu/clima/policies/strategies/2050_en
6. https://climatepolicyinfohub.eu/renewable-energy-support-policies-europe

この続きは、PDFでご覧ください。

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