コアロジックのデータによると、豪州全国主要都市の住宅価格は8月に0.5%のマイナスを記録しました。2019年6月-2020年4月までの安定した上昇基調から一転、4か月連続の下落となっています。
直近の高値からこれまでの下落幅は2.5%ですが、そのペースは減速しており、主要都市8都市のうち5都市では横ばい又は上昇を記録しました。
シドニーとメルボルンの様子
当然のことながら、住宅価格の下落が顕著なのはコロナ禍の影響が大きい都市であり、偶然にも、新型コロナウイルス感染前に最も活発だった都市となっています。
住宅価格の下落幅は、シドニーで8月0.5%、直近ピークから2.6%となる一方で、メルボルンでは8月1.2%、直近ピークから4.6%と、予想通りの悪化が確認されています。
一方興味深いことに、その他主要都市の中で上昇を記録したのはホーバート、ダーウィン、キャンベラの3都市と、公共部門の雇用が比較的多い点が支援材料となっている模様です。

弾力性を見せる地方都市
地方都市における8月の住宅価格は横ばいと、コロナ危機からの打撃に対する弾力性を見せています。これには、債務水準が相対的に低い(従って家計圧迫に比較的打たれ強い)、移民減少の影響が相対的に小さいなど、幾つかの要因が寄与していると考えられます。もう一つの興味深い可能性は、在宅勤務の普及を背景に、感染リスク回避や都市生活からの脱出といった地方移住の増加です。
コロナ危機の影響はまだ出尽くしていない
新型コロナウイルス感染による影響は、政府支援策によって緩和されている事は明確です。仕事を失った人は100万人に達していますが、政府支援がなければ失業者数は3割程度多くなっていたと考えられます。そして、「ジョブキーパー」給与補助金制度、「ジョブシーカー」求職失業者援助金制度の拡大、住宅ローン返済猶予、その他支援策を通じた高債務世帯や不動産投資家の保護が講じられていなければ、強制売却によって住宅価格は急落していたはずです。
見通し
感染拡大が抑制されていれば取引が幾分か活発となる可能性が高く、来年春の売却シーズンにおけるシドニー市場の結果が注目されます。メルボルンでは、ビクトリア州政府の最も楽観的な経済再開見通しシナリオを考慮した場合でも、その見通しは明るさに欠け、取引が増加した場合でも価格は下落する可能性があります。
全体的に見ると、8月の下落を最後に住宅価格が上向く可能性は低いでしょう。雇用市場が弱含んでいるだけでなく、これまでシドニーやメルボルン市場の追い風となってきた移民が国境閉鎖によって減少している点は大きな打撃です。活発さに欠ける賃貸市場や避けられない政府支援の先細りを考慮すると、これら市場では今後も更なる下落が続くと見込まれます。
(4月のピークから見た)全国の下落幅は、来年半ばまでに10-15%程度になると見られ、メルボルンでは更に5%程度悪化する可能性があります。一方で、アデレード、ブリスベン、パース、ホバート市場への影響は相当小幅となり、キャンベラでは同期間を下落なしで切り抜けるかもしれません。
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