新型コロナウイルスというパンデミックの対応策として、豪州では極めて大規模な財政刺激策が講じられています。出し渋りは景気後退の悪化や長期化を招くという認識の下、その方針を巡っては、幅広い合意を得た超党派の支援策が打ち出されました。
コロナ危機初期における連邦政府の対応は、事業や個人向けの現金支給にフォーカスした内容でしたが、足元ではインフラ支出を含むその他様々な措置へと注目が移りつつあります。経済に資金を注入するにあたり、インフラ投資は確固たる価値を提供する選択肢です:即時の刺激効果だけでなく、生産性向上や生活を豊かにする環境開発を通じて、長期に渡り経済や福祉面で社会を後押しするものです。
プロジェクトの見極め
ここでの課題は、どの様にすれば意義あるプロジェクトに資金が行き渡るのかという点です。大恐慌の最中に建設されたシドニー・ハーバー・ブリッジや第二次世界大戦後に導入されたスノーウィー・マウンテンズ制度が良い例であるように、インフラ投資は経済を活性化し、様々な恩恵を継続的に提供するものです。
埋めるためだけに穴を掘るような、無意味なインフラ・プロジェクトの実行は誰も望んでいません。しかし、1年前に素晴らしいアイデアと考えられていたプロジェクトでも、今になっては的外れとなるケースもあります。大規模プロジェクトの計画には数年という年月がかかるため、即時に着手可能なプロジェクトを優先するのか、それとも本当に必要とされているプロジェクトを選ぶのか、その選択には緊張が走るのは仕方のない事です。
社会ニーズの変化に対応
過去を振り返っても、世界的に大影響を及ぼした出来事は社会に根本的な変化をもたらし、新たな種類のインフラ需要を生んでいます。例えば、第二次世界大戦時に増加した働く女性は、その後も完全に消え去る事はなく、その後数世代に渡り、働く女性をサポートする育児・保育という新しいインフラ需要が誕生しました。
これと同様に、足元のコロナ危機でも新しい働き方をサポートする需要が確認されています。豪ブロードバンド・プロバイダーNBNによる光ファイバーへの有料アップグレードは、ニューノーマルにおける需要の伸びを反映したものです。
この様な商業面のニーズだけでなく、社会インフラも継続的な恩恵を生み出す分野です。子供たちの遊び場やビーチ、国立公園の利用増加や、公共交通機関と公共施設における安全衛生面の改良など、モビリティに対する新しい考え方を背景に、インフラ資金の独創的な活用方法が登場しています。さらに、ヘルスケア分野では、これとは別に大規模な追加投資が予定されています。
豪州のインフラ投資計画
豪州政府のインフラ投資パイプラインは1,000億豪ドルという大規模なもので、今月発表された連邦予算では、主に道路や鉄道、ダムを中心としたプロジェクト総額100億豪ドルが2020/2021年度分として上乗せされました。これらは全て意義あるプロジェクトですが、その承認の理由は、足元のニーズ対応というよりも、即時に着手可能なプロジェクトとしてパイプラインに上がっていた点が大きかったのは間違いないでしょう。
政府による頑張りがあったとしても、これらの支援プログラムには限界があり、民間セクターとの連携を模索することで、更なるレバレッジを得る事が可能となります。民間資金の活用における難点は、プロジェクト開始にかかる時間が長いという事、そして刺激策の一環として初期に手掛けるプロジェクトは、政府の資本負担が少なく、民間セクターのアイデアや専門性を活用し易いPPP方式よりも、設計・施工契約方式に頼るケースが多いという点です。
結論を言えば、過去の財政規律に関係なく、連邦政府が必要に応じて支出を拡大している事は確かであり、これは豪州経済にとって朗報だということです。
今後様々なインプラプロジェクトが走り出す中、政府資金が頭打ちとなる局面で期待されるのが民間セクターとの連携であり、公共投資からの恩恵を最大化し、パンデミック後の社会における新たなニーズに答えるような、革新的なプロジェクトを実行するオポチュニティです。
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