経済&マーケット

それでもラッキー・カントリー:豪州株が今後1年でアウトパフォームする5つの理由

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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豪州は、新型コロナウイルス感染の拡大防止において世界的にも優れた成果を上げており、強力な経済支援策だけでなく、アジアの主要な貿易相手国では世界に先駆けて回復が進展している点や、資源ブーム終焉の影響は既に過去のものになっている点からも、2021年の景気循環的な世界経済の回復から恩恵を受ける見通しです。

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その他主要国と比較すると、豪州経済の回復はより力強いものとなる可能性が高いと見られ、従って豪州株やその他豪州資産も、グローバル資産を上回るパフォーマンスを記録すると期待されます。

はじめに

今年5月に発行したレポート「ラッキー・カントリー:豪州がこの暗黒時代を他国よりも上手く乗り越える事ができる理由3つ」では、新型コロナウイルスの感染対策においてその他主要国よりも優れた結果を出している点や、より強力な経済政策対応を打ち出している点、主要貿易相手国である中国は世界に先行して経済回復が進んでいることからも、その他多くの国と比較して、豪州はこの世界的な危機を上手く乗り越える事ができるはずであり、グローバル資産と比較して豪州資産が恩恵を受ける事になるというシナリオを取り上げました。これまでのところ、ビクトリア州における感染第2波につまずき、度々感染が目立つニュー・サウス・ウェールズ州もまだ楽観視できない状況で、南オーストラリア州ではクラスターが発生しています。

しかし、基本的な論点はまだ有効であり、ラッキー・カントリーである豪州に住む自分は本当に幸せだと日々感じています。このレポートでは、前述のレポートを踏まえた現状をアップデートし、2021年において力強い回復が期待される豪州経済と、豪州株式がグローバル株式をアウトパフォームする可能性が高い理由について見ていきます。

 

ポイント1:新型コロナウイルスの感染防止対策において他国よりも優れた結果を出している

新型コロナウイルスの感染拡大防止において、豪州は世界的にも優れた結果を出し続けています。OECD加盟国の比較(1人当たりで見る新規感染件数、死亡者数、感染件数累計、感染検査実施件数)において、世界トップは豪州、次いでニュージーランド(1・2位は豪州とニュージーランドで入れ替わりが続く)となっており、米国は22位、スウェーデン28位、スペイン32位、フランス36位となっています。以下の図表をご覧ください。

それ程過密でない生活、気候の良さ、若い人口、そして運が寄与しているのかもしれませんが、最大の要因と考えられるのは、強がりや途方もない理論ではなく、医療専門家の助言に基づいた公衆衛生対応であり、徹底的な接触確認、隔離措置、素早く的確なソーシャル・ディスタンシングの実施、感染拡大防止策からも、その特徴がうかがえます。政府や関係機関の連携に関しては、トランプ米大統領が米感染症研究の権威である国立アレルギー感染症研究所の見識に対立するなど米国では迷走が続く一方で、豪州では様々なレベルでの連携がスムーズに行われています。そして、過半数を大きく上回る豪州国民が正しい行動をとる事で、これら取り組みを後押ししています。

 新型コロナ感染拡大防止策の効果で見るOECD加盟国

日次の100万人当たり新規感染件数は、米国の400件超に対して豪州は0.4件、同100万人当たり死亡者数については、多くの主要国が700人前後を記録する中で、豪州では36人程度となっています。豪州の死亡率が米国同様であったとすれば、死亡者数は18,000人増えていたことになります。

ワクチン開発については最近朗報が続いており、ファイザー社とモデルナ社が開発中の2件は、中間解析結果で90%を超える有効性が確認されています。しかし、課題はまだ残されています。有効性や安全性に関してより多くの情報が必要であり、これらが満足する内容だったと仮定すると、集団免疫獲得に十分な幅広いワクチン投与の実施は早くて来年半ば(全世界の場合には更に時間を要する)となる可能性が高いと見られます。それまでの間、経済再開を慎重に継続し、信頼感の回復を通じた消費の上向きを目指すにあたり有効なのは、優れた感染拡大防止策です。

 

ポイント2:より強力な経済政策対応が打ち出されている

新型コロナウイルスによる経済への打撃に対応するため、世界各国の政府が打ち出した政策措置は大規模なものでした。次の図表をご覧ください。

世界各国における新型コロナ支援刺激策

直接的な財政支援で群を抜くのは豪州で、2020年分はGDPの11%弱相当と、その他主要国よりも大規模となっています。また、(事業、雇用、収入の維持を目的とした「ジョブキーパー」賃金支払い助成金制度など)的確に焦点を絞った内容となっており、10月に発表された2020/2021年度連邦予算案では減税の前倒しや投資における税優遇が盛り込まれ、懸念されていた財政の崖が回避されるほか、今後数年にわたる追加の刺激策が打ち出されています。豪州準備銀行(RBA)による金融緩和の開始は他国に遅れをとる格好となりましたが、大規模な国債購入プログラムの実施を通じて、足元ではこの後れを取り戻しています。

 

ポイント3:中国/アジアの貿易相手国

豪州最大の輸出相手国である中国が完全なる回復を遂げる一方で、その他アジア圏の貿易相手国も、感染拡大防止が功を奏し、回復に向かっています。これらは豪州の輸出需要をサポートするものであり、豪州の主要輸出品である石炭価格がまずまずの推移となっているのは、このためです。

 

ポイント4:資源ブーム終焉の影響は既に過去のものとなっている

2013年頃に始まった資源投資の減少は、豪州経済にとって大きな重石となってきました(2012-2013年から2018-2019年にかけては、年間でGDP 1.5% 相当のマイナス)が、この影響が過ぎ去った今、資源投資は再び改善を見せています。豪州統計局(ABS)が発表した直近の資本投資データによると、今年度における資源投資は1-8%の伸びが示唆されています。これは、長年にわたり弱含んでいた西オーストラリア州の経済データが、足元で比較的力強い内容となっている背景のひとつです。

 

最後に:比較的シクリカルな豪州経済と豪州株式市場は、2021年に世界的な回復から恩恵を受ける

ITやヘルスケアに代表される成長セクターへのエクスポージャーが高い米国と比較すると、資源と金融へのエクスポージャーが比較的高い豪州経済と豪州株式市場は、より循環的であると言えます。従って、米国株式市場と米ドルは後退局面でアウトパフォームし、上昇局面でアンダーパフォームする傾向にあります。つまり、ワクチンと世界的な刺激策を背景に、世界経済が2021年(主には下期)に力強い回復を見せるとするならば、豪州経済、豪州株式、豪ドルは相対的にプラスの恩恵を受ける事になります。

 

豪州経済への影響

世界的にも優れた新型コロナ感染防止対応と政策支援、主要な貿易相手国である中国とアジアにおける回復の進行、資源投資が足枷から追い風に変化している点、世界的なシクリカル回復を考慮すると、豪州経済は来年、その他主要国よりも力強い回復を確実に遂げる事ができるでしょう。この点については、週次で集計される多様なデータ(クレジットカード売上、飲食店予約件数、求人、信頼感、モビリティ指数など)を元にAMPキャピタルが独自で取り纏めた経済活動トラッカーでも確認することが出来ます。ビクトリア州のロックダウン再開を受けて8月に後退を見せたものの、最近では回復のペースが加速しており、米国や欧州よりも堅調な豪州経済の姿が確認できます。

経済活動トラッカー:豪州、欧州、米国の比較

投資家への影響

豪州経済が相対的に力強い回復を見せることで、グローバル資産よりも、豪州資産が恩恵を受ける事になるでしょう。豪ドルは来年を通して上昇を続け、1豪ドル0.80米ドル近辺に達するかもしれません。豪州株については、2009年10月から続いている相対的なアンダーパフォーマンスのサイクルは終了を迎えています。次の図表では、豪州株価とグローバル株価の相対比較(現地通貨ベース)を示しています。ここ30年間における豪州株の相対パフォーマンスを形成するのは、:ITブームから2000年3月までのアンダーパフォーマンス、2000年代の資源ブームを通じたアウトパフォーマンス、資源ブームの終焉、そして新型コロナによる景気循環銘柄への打撃を背景とした2009年10月以降のアンダーパフォーマンスという3つの波です。

グローバル株価と豪州株価の比較

しかしここにきて、豪州経済が迅速な回復を見せ、ITやヘルスケアといった成長セクターに替えて資源や金融に代表されるシクリカルセクターへと選好がシフトし、商品価格がじりじりと上昇を続けることになれば、豪州株の相対的なアンダーパフォーマンスは来年、巻き返しを始めると考えて良いでしょう。結果として、豪州株のリターンは来年、堅調なものとなる見通しで、グローバル株式が豪州株式をアウトパフォームするシナリオは考えにくいと言えます。

 

注視すべきリスク

とはいえ、豪州経済・株・ドルがアウトパフォームするシナリオにおいて、主なリスクは5つあります。

第1に、ワクチンの効果が不十分で、世界の経済全てが新型コロナウイルス感染に脅かされやすい状態が継続することです。しかし、感染拡大防止で引き続き優れた結果を出すことが出来れば、豪州は比較的上手く乗り越えることができるでしょう。

第2に、豪中関係の緊張が一段と高まることです。これまでのところ、中国向け輸出でリスクが出ているのはGDPの0.5%未満と小規模ですが、鉄鉱石にまで影響が広がるとなれば打撃は大きくなります。米バイデン新政権は、中国摩擦の解消に向けて外交的なソリューションにフォーカスしており、豪中摩擦の出口を提供してくれるかもしれません。

第3に、インフレと債券利回りが上昇する可能性があります。これは株価収益を後押しすることから、当初は良い問題と言えますが、債券利回りが急上昇する場合には、株式やその他資産にとって問題に発展します。

第4は、財政支援の早すぎる終了です。しかし、連邦政府はこれに対する配慮を見せており、支援策の期間延長を実施しています。

第5に、渡航禁止を受けて豪州の回復は絶望的だという懸念の声が上がっていますが、これはあまり正しい見方とは言えません。今年上期における7.3%のマイナス成長の多くはシャットダウン措置と信頼感の後退によるものであり、渡航禁止を背景とした観光&教育分野における正味の影響は最大で1%程度です。つまり、渡航禁止が続く限り完全なる回復は見込めませんが、大半の経済活動は正常に戻れるのです。移民ゼロの状況が継続すれば、豪州の長期成長率は年間1%程度低下することになり、不動産や建設セクターの足枷となるものの、経済回復の妨げにはなりません。

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