経済&マーケット

経済に迫る新型コロナウイルスの脅威:その注目点と投資家が取るべき行動とは

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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新型コロナウイルス感染の広がりを受けて金融市場では混乱が続いており、原油市場にもこの影響が波及しています。

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経済活動への更なる打撃のリスクが上昇しています。注目すべき点は、新規感染者数、経済的ストレスの程度、政策刺激策です。

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投資家は、株価の下落は正常であり、株価下落後の売却は損失を確定させる一方で、反発局面はオポチュニティとなり得る、そしてこのような局面ではノイズを排除して長期戦略にフォーカスすることが重要であるという点をが年頭に置くべきでしょう。

はじめに

中国国外における新型コロナウイルス感染の拡大を受けて、経済活動に対する影響を巡り不透明感が高まる中、投資市場では混乱が続いています。OPEC内の規律が破壊し、原油価格が更に低下したことで、原油生産国の債務返済能力への懸念が高まり、経済への影響が悪化しています。グローバル株式と豪州株式は、それぞれ直近の高値から20%程度下落しています。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染確認件数(新規件数、前日比)

不透明感が極めて高い中、このレポートでは世界経済と豪州経済の成長に関するシナリオを考え、今後の展開を見る上で注目すべき点を取り上げます。

空騒ぎなのか、それとも世界的な大惨事となるのか

新型コロナウイルス感染に関する見解は、二極端の意見に分かれているようです。単にしぶといインフルエンザであり、大騒ぎすることではないという見方がある一方で、数百人という死者をもたらす人類そして経済とっての大脅威であり、過剰なレバレッジが浮き彫りになるとともに、世界的なリセッションを引き起こすという見解もあります。個人的に、私の中の楽観主義者は、前者の考えを信じたいと思います。

  • 新型コロナウイルスの感染者はこれまでに114,000人を超え、うち4,000人近くが死亡しました。もちろん、この感染者数は増加を続けていますが、中国では新規感染者数が大きく減少しており(以下の図表を参照)、感染者数は80,754人、死亡者数は3,136人となっています。2017年から2018年にかけて米国で蔓延したインフルエンザに感染した米国人は4,480万人、死に至った人は61,099人でした。
  • 新型コロナウイルスによる実際の死亡率は、現在報告されている3.5%よりも低い1%以下である可能性があります。これは、実際に感染した人の中には、治療を受けるほど症状が悪化しなかったケースがあり、これらは感染者数に含まれていないからです。大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の例は、ざっくりとした目安となるでしょう。3,711名の乗客と乗員のうち、検査の結果感染が確認されたのは705名であり、このうち死亡したのは7名で、全員70歳以上の高齢者だったと報告されています。この数字を見る限り、死亡率は約1%と、一般的なインフルエンザによる65歳以上の死亡率を僅かに上回る程度です。
  • その感染力は、通常のインフルエンザほど強くないと見られます。
  • 中国の展開からは、封じ込めが可能であることが示されています。もしかすると、これは他国では実行が不可能な武漢における極度の移動制限や閉鎖措置のおかげだったのかもしれません。しかし、武漢ほどの措置が取られなかった中国のその他都市でも、感染者数は減少が見られています。極度な隔離措置を取っていないシンガポールや香港でも、新規感染の封じ込めにある程度成功しています。
最初の感染者が確認されてからの60日間における国別感染者数の推移
  • もう一つのシナリオは、中国以外の当局がある時点で封じ込みは不可能であるという判断を下し、死亡率も高くないことから、感染拡大防止から重症患者の治療にシフトするものです。これによって、人々は通常の生活に戻ることができますが、握手を避ける、頻繁な手洗い、マスクの着用など、人々の行動はこれまでとは異なったものとなるでしょう。

とはいえ、とにかく私も分からないというのが実情です。新型コロナウイルスに関しては未知の部分が多く、感染が今後どの程度続くのかも不明です。政府の対応が重症患者の治療にシフトした場合でも、病院に十分な受け入れスペースがあるのかも不明です。さらには、人的、そして行動面の側面が存在しており、これが経済への影響を悪化させています。豪州では幅広い感染が確認されていませんが、トイレットペーパーの買い占めといった人々の行動は、経済にリアルな影響を与える可能性があります。手指消毒剤やトイレットペーパー、ロングライフ(賞味期限の長い)食品の需要は大きく増加するかもしれませんが、これは一時的な伸びにとどまり、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と封じ込め措置による滞りによって、経済活動への影響がより大きく、長期化するリスクが高まっています。短期的な中断を背景に、債務支払いが滞り、企業や家計の破綻を招くという二次的影響のリスクも、経済活動への影響を悪化させます。今年1月中旬以来45%下落している原油価格の動向は、新型コロナウイルス感染の二次的影響とその波及を浮き彫りにしています。最終的に、新型コロナウイルス感染が収束した後には、ガソリン価格の低下は個人消費を後押しするという点からプラスであるものの、今のところ、原油価格下落のダウンサイド、そして生産企業の債務問題や事業投資の軟化に注目が集まっています。

世界経済の後退とその行方に対するベースケース

未だ不透明感が高い中で、株式やコモディティ価格、債券利回りの底入れを語るのは時期尚早です。次の図表では、世界経済に関する3つのシナリオを示しました:

  • 新型コロナウイルス感染発症以前のシナリオ:基本的に世界経済成長の緩やかな加速を織り込み
  • ベースケース:中国経済が急ブレーキをかける中で、1-3月期近辺で景気は大きく後退するも、4-6月期には回復を見せ、米国を含む先進国のリセッションの一部を相殺する
  • より悪いケース:(中国経済が急ブレーキをかける中で)1-3月期、そして(先進国に影響が波及するとともに)4-6月期においても世界経済が減速した結果リセッション入りするも、生活が正常に戻るにつれ、中国に先導される形で回復に回帰

注記:これらシナリオでは、四半期の年率成長率を示しています。重要なのは、成長の細かい水準ではなく、そのパターンに注目することです。

世界(G4)GDP成長のシナリオ

次の図表では、豪州経済成長に関する3つのシナリオを示しました:

  • 新型コロナウイルス感染発症以前のシナリオ:豪州経済見通し
  • ベースケース:中国における隔離・封じ込め措置と世界そして豪州におけるコロナウイルス感染の拡大を受けて、1-3月期と4-6月期に若干の後退を見せた後、下期に回復を見せる
  • より悪いケース:1-3月期と4-6月期においてGDPがより大きく縮小した後、通常の生活に戻るにつれてリバウンドを見せる
豪州GDP成長のシナリオ

先週のウィークリーレポートでは、豪州経済のリセッション入りを予想しています。森林火災や観光業への影響、中国経済の減速による中国向けの教育やコモディティの輸出への影響を受けて、1-3月期のマイナス成長は既に予想していたものです。しかし、世界そして豪州における新型コロナウイルス感染の拡大によって、4-6月期もマイナス成長となる見通しです。これは、世界経済見通しと同様に、新型コロナウイルス感染が収束するまでの間の一時的なものであり、北半球が夏を迎える頃には終息を願いたいものです。より悪いケースでは、株価と債券利回りにより大きな低下をもたらすでしょう。

注目点

新型コロナウイルスの経済への影響において最悪の状況は過ぎ去ったという信頼感が出始めれば、株価は底入れする見通しで、これは既に織り込み済みです。つまり、議論の争点は、影響の大きさであり、これは新型コロナウイルスがどの程度の期間にわたり経済に影響を与え続けるか、そして二次的影響の可能性に関係しています。この点について、注目すべきは以下のポイントです:

  • 最初の図表で示した新規感染者のピーク
  • 新型コロナウイルスに効果のあるワクチンと抗ウイルス剤に関するニュース
  • 各国政府による措置が、封じ込めから他へシフトするのか
  • 新規失業保険申請件数や米国と豪州の消費者信頼感データなど、タイムリーな経済指標
  • 社債利回りと国債利回りのスプレッドなど、企業ストレスの程度
  • 失業率や不良債権など、家計ストレスの程度
  • 3か月物金利とキャッシュレートの差である銀行の資金調達コストなど、市場ストレスの程度。これらは上昇しているものの、世界金融危機(GFC)の水準は大きく下回っています。
マネーマーケットの資金調達コストは、GFCの水準を下回る
  • 金融と財政政策の対応:劣弱な企業や家庭に対する新型コロナウイルス関連の影響を最小限に抑制し、金融市場の流動性を確保するとともに、新型コロナウイルスが終息した後の素早い回復を促進する上で、極めて重要となるものです。これまでのところ、政策担当者は正しい方向に向かって進んでいます(豪州では素早い動きが見られています)が、この先まだ長い道のりが待ち受けています。

投資家への影響

株式市場の急落は恐ろしい展開でした。投資家は、次のポイントを忘れてはなりません:

  • 定期的な株式市場の下落は、健全であり正常なことです。最終的に長期トレンドの上昇が維持されている中で、その他のより安定した資産クラスよりも高いリターンを提供しています。
  • 株価下落後における株式の売却や、より保守的な投資戦略への乗り換えは、損失を確定させるだけです。
  • 下落によって、株価は割安となり、長期リターンの見通しが上昇します。つまり、株式市場の下落によって誕生する投資オポチュニティを模索することが重要です。底入れ時期を予測することは不可能ですが、長期の平均を参考にすることも一つのアイデアです。
  • 株価は下落しましたが、配当は下げていません。企業は長期で安定的な水準の配当を好むため、業績が好調な局面でも配当は収益のように大きく増加することはなく、低迷期においても大きく減少することはありません。
  • 株式やその他の関連資産は、ネガティブな見方が最も高まる局面で底入れします。
  • 適切な長期の投資戦略に忠実に行動し、市場が混乱する局面で投資オポチュニティを発掘するための最高の手段は、ノイズを抑制することです。
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