日本の人口高齢化:オポチュニティと課題

By AMPキャピタル

退職者層の増加と生産年齢人口の減少が進む先進国では、どの様に資金を捻出してこれらの人口を支えるのかが大きな問題となっている事は、皆さんも良くご存じかと思います。世界で最も高齢化が進む日本にとっても、これは深刻な問題です。しかし、政府、人々そして、プロフェッショナルがこの状況を受け入れ、一丸となって取り組むのであれば、そこには投資とイノベーションの機会が待っています。

人生100年時代

長期にわたり富を築き上げてきた先進国では、デモグラフィック(人口統計)が変化しており、経済生産性や定年退職後の生活といった見通しに影を落としています。米国や西欧の大国でも少子化や長寿は問題で、労働・納税者が減少する一方で、社会保障に頼る高齢者の数が大幅に増加すると予想されています。

この世界的な人口構造変化の先頭に立つのは、高齢者1人を支える現役世代の人数が2060年までに1人へと減少が見込まれている日本です。日本の人口は今後40年で約1/4縮小すると見込まれており、これはマレーシアの人口に匹敵する規模です1

少子高齢化が進む日本
出所:世界通貨基金(IMF)、内閣府、平成29年版高齢社会白書

労働人口が縮小すれば、世帯収入も減る事となり、最終的には国民貯蓄が減少します。IMFは、高齢化と人口減が日本政府の社会保障給付に重石となり、国民自身による資金確保への圧力と負担が増加すると指摘しています1

これらの影響を最も大きく受けているのは、定年退職を目前に控える人たちです。老後に向けたポートフォリオにおいて、成長資産程とはいかないものの、確実な利回りを確保するために組み入れられる事が多いディフェンシブ資産からのインカム獲得にあたり好ましいとは言えないマクロ経済環境が、この状況をさらに悪化させています。

IMFは昨年、「少子高齢化を背景とした納税者の減少や、ヘルスケアや年金といった高齢者向け給付の拡大によって、日本の財政は逼迫する見通しです。デモグラフィックの動向は、低金利と密接に関係しています。日本に代表される高齢化社会において、人々は退職に向けた貯蓄を増やすわけですが、軟調な経済見通しを受けて投資パフォーマンスは優れず、金利低下の圧力となります。」と発表しています。

悩ましい環境下に置かれているのは、日本だけではありません。高齢化が進む豪州も、老後に向けた資産運用では安全な資金の逃避先とされる資産が好まれる傾向にあり、日本と同じような問題に直面しています。豪州準備銀行(RBA)は、2011年10月以降、その当時4.75%だった政策金利を徐々に引き下げ、現在は過去最低の0.25%となっています。これと足並みを揃える格好で、銀行預金や国債といった投資からのリターンも低下傾向にあります2

この様な苦境下にある豪州でもオポチュニティが存在しており、日本の年金制度にとっても、危機を好機に変えるチャンスです。以下では、ケーススタディとして豪州における取り組みを検証します。

ケーススタディ:豪州

豪州における年金の現状は完璧とは言い難いものであり、実際のところ、連邦政府による継続的な見直しが図られています。とはいえ、自己積立型モデルを支援する法令や投資環境の整備が進んでおり、世界でも最高基準という評価を受けています3

その代表的な例が、豪州のスーパーアニュエーション制度です。1991年に元財務大臣の経歴を有するキーティング首相によって義務化されて以降、高齢化が進む豪州国民に対して強制的な貯蓄を促してきました。あれから29年たった今、ジェネレーションZ世代と数多くのミレニアル世代の現役者にとって、働き始めると同時に退職に向けた貯蓄を開始するのは当然の事となっており、現役者の多くにとって、スーパーアニュエーションは持ち家に次いで第2に大きい資産となっています4

PwCが解説するように、この強制貯蓄を通じて、豪州における財産の多くのカストディアンとなったのが資産運用業界です。豪州と同じ様な苦境に直面している日本そしてアジアの投資家や資産運用会社にとっても、同じようなオポチュニティが提供されています。

PwCは2005年のレポートにおいて、「アジアにおける多くの高齢化人口は、年金の資金不足と貯蓄不足という危機に直面するでしょう。手遅れになる前に、年金や貯蓄の運用管理における根本的なシフトを起こし、投資リターンのギャップ解消に向けた資産運用会社の取り組みが極めて重要となっています。」と指摘しています5

この観点から、同レポートは、不動産やインフラ投資など、アジアにおける「オルタナティブ」な資産クラスへの注目の高まりを予測しています。ここでPwCが念を押しているのは、資産の評価、ソーシング、運用に必要な適切なスキルの必要性です。

同レポートは、「アジア太平洋を中心に人口の高齢化が加速する中で、必要なリターンを提供する新しい投資先の模索に迅速に乗り出したのが、年金基金です。」としています。

「アジア太平洋地域のインフラ資産は、2017年から2020年にかけて年率24.8%のペースで拡大する見通しで、その後2025年までに28.5%に達する見通しです。この主な理由は、金融、通信、テクノロジーの各セクターの成長であり、都市化が進む中で大規模投資が必要となる見通しです。オルタナティブ資産全体では、2017年の2.9兆米ドルから2025年には6.9兆米ドルへと拡大する見通しで、インフラはこの伸びの1/5程度を占めます。」

「インフラ投資需要の増加は、アセット・マネージャーに対してアルファ創造の機会を提供するものです。」

厳しいマクロ経済環境への対応という観点からも、豪州のケースから学ぶべき教訓が幾つかあります。豪州の年金基金は、ディフェンシブな資産クラスからの利回りが低い事を認識し7、優良な実物不動産やインフラ資産への投資を通じてインカムの獲得に動いています6

AMPキャピタルでも、この流れを反映して、キャッシュや債券から優良インフラのエクイティやデット、PPPへと資金を移し替えて、インカムを確保するリタイアメント・ファンドの運用を行っています。中でも、個人投資家に人気のファンドの一つは、上場インフラと非上場インフラを組み合わせたタイプのもので、個人投資家では通常手の出せない優良非上場インフラ資産へのアクセスを可能としています。

お金だけではない

豪州のケーススタディから明らかな通り、リタイアメントとは投資家それぞれにユニークな人生のステージであり、その計画と投資においても同様の取り扱いが必要です。実際のところ、これはグローバルな経験値であることがEYのリサーチで明らかになっています。

この2019年のレポート8で、「解消しなければならないギャップ、解決しなければならない問題、そして目の前のオポチュニティは、単にリターンを創出すれば良いという問題ではありません。リタイアメントとは、慎重にな対応を必要とする感情的かつ個人的な体験で、これは世界のウェルスマネージャーやリサーチ担当者が学んだ教訓の一つです。人々は、ある特定の数字を思い描いているのではなく、それぞれに達成したい人生の目標やゴールを持っています。アドバイザーには、このギャップを埋める金融ソリューションの提供というオポチュニティが提供されています。」とEYは語っています。

AMPキャピタルでは、リタイアメント向けのファンド運用において、対ベンチマークでのアウトパフォーマンスを目指す伝統的なファンド戦略に代わるオプションを模索することで、この教訓を生かしています。ベンチマークにフォーカスした運用では個人投資家が投資を通じて達成しようと考えている目標に関する知識が欠如してしまうと解説するのは、リタイアメント・ソリューション担当ヘッドであるダレン・ビーズリーです。

「これとは対照的に、ゴールベースという目標主導型の投資アプローチは、従来のファンド戦略の限界を打開するように設計されています。単にベンチマークをアウトパフォームする事を目標にするのではなく、パフォーマンスの物差しは特定の目標を達成できるのかです。」

「一般的に、リタイアメントにおけるインカム獲得を目指すゴールベースのファンドにでは、個人投資家の課税状況や大幅ドローダウンに対する許容度、インフレ感応度、流動性のニーズが考慮されています。」

「このアプローチでは、投資を手掛ける運用者にとっても付加価値創造がし易くなり、リタイアメントという特別なライフステージに適した結果を目指す運用が可能となります。」

今後の道のり

投資家そして金融のプロフェッショナルに提供されている機会オポチュニティは莫大です。中でもアセット・マネージャーにとって、イールド追求という幅広い投資家の動きにおいて、新たなインカム源とオルタナティブな成長の源泉の提供に寄与するという重要な役割担うチャンスです。

日本も、変革に立ち向かい、これまでの経験に挑戦することで、この少子高齢化の波を経済そして投資家にとってのイノベーションと成果に変えていくことができるでしょう。

この様に莫大かつ野心的なビジョンの実現は程遠いと思えるかもしれませんが、似たようなデモグラフィクスの課題に直面する他国の例を見ると、政府と民間のプロフェッショナルと人々が協働し、新たなオプションを模索することで、資産形成を行う事が可能だという事が分かっています。

ここで必要不可欠なのは、リーダーシップです。豪州に代表される世界の例からは、構造的かつ大規模な行動の変化は不可能ではないことが示されていますが、その実現における第一歩は勇敢かつ大胆なアクションでした。これらの行動は、機械やアルゴリズムに基づくものではなく、高齢化社会という逆境に明るい光を見出す人々の力によるものです。

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ゴールベース投資とは、異なるライフスタイルや個人の目標達成を助けることを目的としたアプローチです。

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