豪州の連邦政府は先週末、新型コロナウイルス対策として財政刺激策第2弾を発表しました。
主なポイントは次の通りです:
- 新型コロナウイルスで影響を受けた個人や事業向け支援として460億豪ドルを追加
刺激策第一段(事業や個人向け176億豪ドル、ヘルスケア・セクター向け24億豪ドル、州政府からの支給50億豪ドル)と合わせると、刺激策は合計でGDPの3.5%程度に匹敵します。
これは、最近景気対策を発表した他国の内容と合致した水準です。

- その他の刺激策には、借入促進に向けた低金利の銀行向け融資があり、この一部は先週豪州準備銀行(RBA)によって発表されています。
連邦政府はまた、中小企業向けにキャッシュフロー支援としてローン保証200豪ドル規模を発表しています。これも含めると、刺激策の総額はGDPの約10%に相当します。
そして、RBAからは、利下げと利回り目標0.25%の達成に向けた豪州3年物国債の買い入れが発表されています。つまり、豪州では、足元で必要とされている刺激策が数多く発表されています。
昨日発表された刺激策には次が含まれています:失業者・低所得者向け支給(2週間あたり追加で550豪ドル)、収入支援対象者の拡大(「ニュースタート」手当)、生活保護受給者(520万人)向け支給750豪ドル(既に発表されている750豪ドルに追加)、新賃金が新型コロナウイルスから直接の影響を受けている人を対象としたスーパーアニュエーション(年金)の非課税での早期引き出し(当年度から来年度にかけて最大で1万豪ドル)、退職者向けにスーパーアニュエーションの引き出しルールを緩和、中小企業向け現金支給(2万豪ドルから最大10万豪ドル)。
新型コロナウイルス対策として発表された世界の刺激策(米国と中国で発表される見通しの分を含む)は、GDPの約2%程度に匹敵します。第二次世界大戦以降で世界最大の危機と立ち向かうにあたり、今回の刺激策は世界金融危機(GFC)時よりも規模が大きくなっています。

今後の見通し
豪州のモリソン首相は、追加刺激策の可能性が高いと発言しており、今後数週間の間により幅広い家計に対する現金支給が発表される見通しです。
政府支出を通じた刺激策の拡大と経済成長への打撃によって、格付け企業による豪州の信用格付けは、現在のAAAから引き下げとなるリスクが出ています。しかし、世界の他国も似たような状況に置かれており、経済支援策を受けて各国は財政のやりくりに追われることになるでしょう。理論上、豪州の信用格付けがAAAからダウングレードされたとすれば、豪州債券利回りと政府の借入コストは上昇することになります。しかし、この点に関する決定的な証拠はありません。米国の格付けが引き下げとなった2011年、債券利回りは低下しています。
以前にもお伝えしている通り、財政刺激策だけでは、1-3月期そして4-6月期における豪州のリセッション入りを避けることは不可能です。中国からの観光客と教育支出の減少、そして山火事の影響を受けて、1-3月期におけるGDP成長への打撃は大きなものとなる見通しです。4-6月期におけるGDPの伸びは、世界(中国を除く)が新型コロナウイルス対応に急ぐ中での事業中断によって大きく影響を受ける見通しで、今年におけるユーロ圏や米国のリセッション入り観測もまた、豪州の輸出の伸びに悪影響を及ぼすとみられます。さらには、豪州国内の感染拡大を受けて、封鎖となるエリアが増加すると見込まれています。豪州経済への影響は3.5%程度のマイナスというのが当社のベースケースですが、これよりも大規模となる可能性も残っています。
一連の財政刺激策は、豪州のリセッションを軽度に抑えるという点で有効であり、企業を破綻の危機から救済し、失業率の急上昇を防ぐという点で寄与するものです。しかし、この世界的なパンデミックが終息した後は、力強い回復を確保しなければなりません。世界の新型コロナウイルス新規感染者の変化を、中国本土の動向と比較して注視する事が重要です。残念なことに、外出禁止令が出て間もない欧州や米国では、感染者数がピークに達した兆候はまだ見られていません。
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