経済&マーケット

注目すべき株価の底打ちを示すサイン

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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3月の最安値から15-20%程度回復を見せた株価は、底打ちし始めた可能性がありますが、確信をもって断言するには時期尚早です。

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注目すべきサインは、新型コロナウイルス感染の早期封じ込め(改善が確認され始めている)、経済への打撃を最小限に抑えるための金融・財政刺激策(実施済み)、経済への影響が最小限にとどまっている、成長のモメンタムが底打ちし始めている(これは遅行指標の可能性があるものの、判断するにはまだ早い)、テクニカル面で見た底入れの兆候(一部確認済み)です。

はじめに

2月の最高値から3月には約35%下落して最安値を更新した後、グローバル株式と豪州株式は15-20%の上昇を記録しました。企業信頼感PMIの下落や2週間で過去最高となる1,000万件を記録した米国失業保険申請者数など、経済指標が落胆させる内容となっているにも関わらず、このラリーが発生しています。ボラティリティの高い状況が続いているものの、3月中旬における下げだけの状況とは異なり、株価は上下に動いています。

グローバル・コンポジットPMIと世界GDP

一般的に市場は先導するため、最悪のシナリオは既に織り込み済みの可能性もあります。そして、ここ数週間ではコロナ危機への対応として大規模な財政・金融刺激策が導入されています。という事は、株価は既に底打ちしたのでしょうか?今後もまだ、新型コロナウイルス感染や経済に関する悪いニュースが見込まれており、都市封鎖や外出禁止もどの程度継続するのか不明です。従って、経済打撃の規模と期間、回復時期の見通しやその内容を予測するのは困難です。過去の弱気相場を振り返ってみると、しばしば株価の力強い上昇が発生しています。この例として、2008年10-11月において米国株式は2度の上昇を記録した後、2009年3月に最安値を付けました。株価が底入れしているとしても、足元の状況はこれと同様のケースである可能性があります。

では、株価の底入れ時期を予想する又は株価が底入れしたという確信を得るためには、どの様なポイントに注目したらよいのでしょうか?

注目すべき兆候は以下の通りです1

  • 新型コロナウイルス感染の早期封じ込め
  • 経済打撃を最小限に抑える措置
  • 経済打撃が最小限に抑えられている事に対する信頼感と成長モメンタムが底入れしている兆候
  • 株価の底を示すテクニカル面の兆候

新型コロナウイルス感染の早期封じ込めに対する信頼感

都市閉鎖や外出禁止の期間や程度、ひいては最初の経済打撃を見極める上でガイダンスを提供するという観点から、これは重要なポイントです。ここで注目すべきポイントは以下の通りです:

  • 封じ込め措置の程度。封じ込め対策(隔離や連絡のフォローアップ)が失敗に終わった(韓国は成功した可能性あり)後、多くの国ではソーシャルディスタンス(他人との距離を確保する)といった抑制に乗り出しました。これは、イタリアの様な医療体制の逼迫を受けた死者増加を防ぐために必要な措置でした。ここでの疑問は、抑制が徹底されているのかという点です。各国の例を見る限り、徹底されていると言ってよいでしょう。厳格な規制が敷かれているのは、主要41か国のうち豪州を含む80%に上ります。
各国政府による行動の制限
  • 抑制措置は効果を上げているのでしょうか?これを見極めるにあたり注目すべきは、新規感染者数の減少です。3月9日に全国的なロックダウン(都市封鎖)が開始となったイタリアは良い例で、感染抑制に成功すれば、世界に希望の光をもたらすことになります。この点については、イタリア、スペイン、ドイツ、その他EU、豪州で新規感染者数が減少するというポジティブな進展がみられています。一方、米国の状況を判断するにはまだ早すぎですが、米国における震源地となっているニューヨークでは新規感染のペースが鈍化しています。
イタリア、米国、豪州における新規感染者数

中国の例を見ると、新規感染者数はロックダウン後11-21日でピークを打ち、その後行動制限の緩和が可能となるまでには1か月程度を要しています。このため、中国の経済指標は3月に改善を見せ始めています。(中国感染者数データの信ぴょう性に対する疑問が出ているものの、その動向は正当であるとみられ、習近平国家主席が3月10日にコロナウィルスの発生源となった武漢を初めて訪問した点や経済活動の再開とも合致しています。)

ということは、新規感染者数の減少傾向が維持される場合には、イタリアや豪州などでも、今月末または5月にロックダウンの緩和が可能となるかもしれません。

もちろん、行動制限の緩和が早すぎた場合には、(1918年のスペイン風邪で発生したような)第二の新規感染者数増加の波を引き起こすリスクがあります。これを防ぐためにも、新規感染者の隔離や連絡のフォローには強い姿勢で取り組む必要があり、(中国で実例が確認されている通り)帰国者からの感染を防ぐために海外への渡航禁止の継続が求められます。これらの対応を短期間で終えるには、次の2つが必要です:

  • 抗体検査:症状が軽度又はゼロの感染者が検査を受けていないことからも、感染者数は大幅に過小評価されている可能性が高いと言えます。大規模な新型コロナウイルスの抗体検査を実施することで、実際の感染者数と回復した患者数の割合を認識する事ができます。回復した患者から感染が広がる可能性は低く、職場復帰が可能となるでしょう。一部の推定データによると、イタリアと英国では感染者数が国民の40-60%を占めるとされており、これが事実であれば、ある程度の「集団免疫」がついているとみられ、安全なシャットダウン緩和の実行がより容易となります。とはいえ、このような検査の開始はまだ数か月先となるでしょう。
  • 抗ウイルス剤又はワクチン:ワクチン開発には1年程度かかるとみられますが、抗ウイルス剤に関しては急スピードで臨床試験が行われています。

つまり、様々な取り組みが行われているとはいえ、豪州を含む複数の国で新規感染者の減少が確認されていることから、シャットダウンは効果を発揮していると言え、(抑制措置が徹底している限り)約1か月後には行動制限緩和の可能性が見えてきました。しかし、海外渡航禁止が解除されるのは一番最後となる可能性が高いでしょう。

経済支援策

世界では、ここ1か月で過去最大規模と言える金融・財政支援策が発表されており、シャットダウン期間を通じた企業支援や雇用・収入のサポート、金融市場の正常な働きを維持するための措置が導入されています。これらに関しては、「新型コロナウイルスを受けた世界の政策対応」と題したレポートで解説しています。豪州など一部の国の状況は、その他米国などよりも良いものの、必要なことは何でもするという姿勢が世界的に打ち出されている点は、シャットダウンによる第二の経済打撃は最小限に抑えられ、コロナ危機終息後の経済回復に対する信頼感を提供しています。追加措置が必要となるかもしれませんが、この点はプラスであると考えています。

経済打撃が最小限に抑えられている/成長モメンタムが底入れしている兆候

このポイントを見るために注目すべき指標は以下の通りです:

  • クレジット・スプレッド:社債と国債のイールドギャップは縮小する必要があります。両方とも、過去最高水準から改善したものの、まだ正常値を上回っています。
  • 短期金融市場における資金調達コスト:3か月物金利と政策金利見通しの差であるマネーマーケットの資金調達コストは、豪州で低下しているものの、米国では高い水準が維持されています。
  • デフォルト率は僅かな上昇にとどまる:これは、民間支援とローン/賃料の支払い免除の効果を図る上で重要です。ほとんどの国において判断するのはまだ早すぎます。
  • 日次の経済活動指標(例:エネルギー生産や交通渋滞)の安定化:これは中国で有効な指標であることが確認されていますが、その他先進国では時期尚早です。
  • 企業信頼感PMIの安定化/改善:中国では改善を見せているものの、その他世界では低下を続けています。

株価の底を示すテクニカル面の兆候

株価の底入れを示す兆候は以下の通りです:

  • 過度な売り越し:これは3月に発生しています。
  • 極めて悲観的な投資家センチメント:現状は冷えているものの、極めて悲観的までには至っていません。
  • 下落モメンタムの低下:3月の最安値更新があるかによって明確となるポイントです。

サインの一覧表

これまでにカバーした兆候の一覧です。中でも重要なものは、青色で示しています。

 サインの一覧表

まとめ

これら兆候の多くは既に確認されていることからも、既に底は見えているといっても良いかもしれません。とはいえ、シャットダウン期間は不透明で、新規感染者数が再び増加する第二波のリスクや極めて軟調な経済データが見込まれることからも、確信をもって底入れを断言するには時期尚早です。

1 スコット・マッケルロイ、マット・ホプキンス、ネーダー・ナエイミらからのインプットを含む

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