豪州の労働人口の多くは、リセッションを経験したことがありません。1990年代初期における最後のリセッションを覚えている人達にとっては、その記憶がよみがえってくることでしょう。今回のコロナ危機を受けたリセッションは、過去とは様相が異なるものとなる見通しです。
新型コロナウイルス感染の広がりを受けて、連邦政府が豪州国民の衛生安全の確保に動いた結果、経済活動が犠牲となっています。これは正しい選択であり、世界各国でも同様の措置が取られています。
残念なことに、このコロナ危機によって30年近く成長を続けてきた豪州経済は、1991年以来初めての景気後退局面に突入します。1-3月期においてはマイナス成長となる見通しが極めて高く、シャットダウンの影響を受けて4-6月期も10%程度のマイナスが見込まれており、豪州経済は大打撃を受けています。つまり、新型コロナウイルス感染が収束するまでは、豪州経済は相当縮小すると考えられます。
リセッション入りが見込まれるのは、豪州だけではありません。米国や中国といった超大国の経済も、ソーシャルディスタンスや外出禁止措置、生活に必要不可欠ではない通常の活動や事業、サービスの停止からの影響で大きく打撃を受ける見通しで、世界的なリセッション突入の可能性が高いと言えます。
豪州がリセッションに突入するとともに表面化してくるポイントが幾つかあります。最も大きなものとして、雇用市場の厳しさです。失業率は上昇し、転職も困難となる見通しで、人員削減や解雇は今後も増加すると考えてよいでしょう。
これを受けた収入の減少や賃金の低下によって、当事者らの購買力は低下することとなります。仕事をキープしている人々にとっても、不透明感が高まり、将来に不安を抱いたり、収入や雇用を巡る懸念が浮上します。これは、生活必需品以外の出費に対する意欲など、消費動向に影響を及ぼします。
とはいえ、長期目線で投資を考える人にとっては、オポチュニティが提供されている点も忘れてはなりません。
例えば、政策金利は過去最低の0.25%となっており、住宅ローンの返済が楽になります。このコロナ危機からの打撃は豪州住宅市場にも波及しており、シドニーやメルボルンを中心とした市場では、今まで手の届かなかったマイホームの購入が可能となるケースもあるでしょう。
これは株式市場でも同じです。株価下落で荒れている市場ですが、長期投資家にとってはバリュー発掘の良い機会です。
最後に、今回のリセッションがこれまでと異なるのは、バブルとその崩壊がなかった点です。今回の引き金は、強制的なシャットダウンと大規模な事業中断であり、豪州経済のファンダメンタルズとの関係はありません。従って、新型コロナウイルス感染が収束した後には、これまでの景気後退時よりも素早いスピードで正常化するであろうと、私は希望を抱いています。
賃金補助やローン返済の猶予など、連邦政府による金融支援策は、この見通しに対する信頼感を提供するものです。これらは早期から積極的に開始されており、多くの企業や個人を支援しているとともに、新型コロナウイルスが落ち着きを見せた後には、豪州経済の素早い回復を可能とします。
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