環境・社会・ガバナンス(ESG)

企業による従業員の取り扱いに厳しい視線

By エミリー・ウッドランド
上場株式、サステイナブル投資共同ヘッド 香港

コロナ危機によって雇用市場が戦後最大の打撃を受ける中で、世界各地では何百万人という人が窮地に立たされています。企業にとっては、事業への莫大な影響だけでなく、従業員への対応においてもその手腕が問われることになります。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、人間の健康がいかにもろく、社会経済の正常な働きとは切り離せない関係にある事を、私たちに再認識させるものです。企業は、株主、社員、顧客、サプライヤーなど、複数ステークホルダーのニーズにバランス良く対応するという、複雑なチャレンジに直面しています。

この異例の事態において、長期のESG(環境・社会・ガバナンス)検討要因の中には先延ばしにされるものがある一方で、忘れてはならいのは社会のSです。企業における従業員や顧客、サプライヤーの対応に、社会の注目が集まっています1

何百万人もの人が失業の危機に直面し、その他では大勢の作業員が健康や安全を脅かす環境での作業を強いられています。ここでは、このコロナ禍において、企業が考慮すべき社会面の影響と検討事項を見ていきます。

 

人的資本管理

コーポレートカルチャーは企業における最大の無形資産のひとつです。コロナ危機を通して従業員と契約社員をどの様に取り扱うのかという企業の選択は、今後長期に渡り、その弾力性に影響を与えるものです。中でも、ギグエコノミーの台頭を背景に、単発の仕事や非正規雇用を巡る保障の危うさ、労働搾取の実態、社会的不平等の深刻化が明らかになっています2,3

足元で求められているのは、短期的な生き残りと長期的な事業の持続可能性のバランスです。効果的なヒューマンキャピタルの管理は、最終的に長期の雇用維持を通じた迅速な景気回復をもたらし、ひいては競争優位性に寄与するものである4,5とAMPキャピタルでは考えています。

当社では、従業員の安全、保障、心身のウェルネスを確保し、経済面・運営面で可能な場合には金銭面やその他の支援提供を促進するため、投資先企業とのエンゲージメントを実施しています。より長期の視点では、非正規雇用に対する手厚い保証、雇用モデルの再考など人的資源管理に関する、質の高い、より踏み込んだ開示が企業に求められるようになると予想されます。

 

コミュニティと顧客の支援

コロナ危機対応の一環として、企業が価格設定や商品サービスの供給を通じてどの様に社会に貢献するのかは、その評判やブランド、「ソーシャル・ライセンス・トゥ・オペレート(social license to operate)」(地域社会への貢献を通じて、社会的な営業許可を得る)の点にも多大な影響を及ぼすものです。サプライヤーに対する支払い処理は、より幅広い経済に連鎖反応を引き起こすものであることから、厳しい視線が集まっています。

多くの企はが、自社能力を活用した援助に迅速に乗り出しています。生産ラインを切り替えて、コロナ危機対応に必要なマスクや消毒液などの生産を始めた企業もあり、社会問題解決における民間企業の力が見えた格好です。その他では、債務救済や支払い猶予を提供する企業もあり、長期的な顧客ロイヤリティや好意の維持が期待されます。また、物品の支給や一時休業に追い込まれた他社作業員の臨時雇用などを行っている企業もあります。

 

サプライチェーンの忍耐力

コロナ危機によって表面化したもう一つの重要な検討事項は、複雑に絡み合うグローバル化したサプライチェーンです。バリューチェーンを構成する主要な部分でディスラプションが発生した場合、企業にとっては事業生存の危機に発展する可能性もあります。これは、まさに今、食品や医療品事業を手掛ける企業が直面している問題です。多くの企業は、海外サプライチェーンや必需品の業務委託の見直しや再考に迫られています。食品や必需品サプライチェーンを確保するためにも、政府主導で実施となる可能性もあるでしょう。

つまり、少なくとも一部の製品に関しては、グローバル化離れのリスクが高まっています。これは、オフショアモデルに依存する新興国経済だけでなく、外国資本による資産買収の制限といった点でも、長期的な影響を及ぼすと考えられます。さらには、サプライチェーンにおける人権リスクが高まる可能性もありますが、現時点でその展開を予測するには時期尚早であることから、当社では今後もモニタリングを継続していきます。

 

まとめ

コロナ危機からの打撃が長期化するのを防ぐ観点から、短期的な経済面の対応は必要な行動だと言えます。しかし、同じく重要なポイントは、この危機においてどの様に従業員を取り扱うのかであり、不始末な行動は、人々の人生や健康、企業の風評、保障、顧客とのリレーションシップを脅かす、長期的なダメージを与えかねません。

 

1. ウォール・ストリート・ジャーナル、Coronavirus Pandemic Could Elevate ESG Factors、2020年3月
2. 国際労働機関、X ILO Monitor: COVID-19 and the world of work. Second edition Updated estimates and analysis、2020年4月
3. ガーディアン、The inequality virus: how the pandemic hit America's poorest、2020年4月
4. ギャラップ、Engagement at Work: Its Effect on Performance Continues in Tough Economic Times、2016年
5. マッキンゼー・アンド・カンパニー、The hidden value of organizational health—and how to capture it 、2014年4月

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