債券

豪州の銀行セクターがコロナ危機を乗り切れる理由

By アンドレア・イエーネ
グローバル債券部門シニア・クレジット・アナリスト 豪州、シドニー

豪州がこのコロナ危機を乗り切るにあたり重要な役割を果たすのは、銀行セクターの力です。世界金融危機(GFC)時よりも、同セクターの体制は整っています。

豪州の大手銀行は、財務健全性が高い状態で景気後退局面に突入します。近年で向い風に見舞われたものの、その資本や資産の質、収益性は世界でもトップクラスです1

この先は険しい道のりが待ち構えていますが、忘れてならないのは、豪州銀行セクターの準備体制はこれまで以上に整っているという点です。

 

刺激策のクッション

豪州銀行協会(ABA)と連邦政府の動きによって、銀行が中小企業による融資返済を6カ月猶予する措置が打ち出されています。豪健全性規制庁(APRA)は、これら融資を不良債権に分類しなくても良い権限を銀行に与えていますが、長い目でみると、資産の質や収益、資本ポジションに打撃を与える事からも、これは信用評価にとってマイナスです。

従って、銀行のバランスシートでは、資産の評価が低下すると見込まれます。とはいえ、コロナ危機の規模や期間がより明確になるにつれ、政府からの追加支援・刺激策がクッションの役割を果たす格好で、資産の質の大幅な低下は回避される見通しです。

家計や事業をサポートするにあたり核となるのが政府支援策であり、銀行の信用力低下を緩和する役割を果たします。豪州では、賃金助成金を含む支援策第三弾が発表となり、3月末時点における財務・金融支援策の規模はGDPの16%に上ると見られ、大規模な内容となっています。

 

強靭なポジションからのスタート

豪州銀行大手の信用力は高く、2008年のGFC以前と比較して2倍の資本と流動性が確保されています。これら銀行におけるTier1比率は、2008年度末時点で7.35%から8.17%だったものが、直近の報告では12.36%から15.84%へと改善しています2。GFC後、世界の規制当局が導入してきたより厳格な自己資本ルールは、ここにきて緩和されており、銀行は損失を吸収するだけでなく、コロナ危機という重要な局面における事業や個人への融資継続が促進されています。

これと同時に、銀行の顧客預金残高が増加したことからも、資金調達における短期金融市場への依存度が低下しています。実際のところ、顧客預金は融資残高の78%-89%を占めるようになっており、2008年の36%-62%から大幅に拡大しています3

これらポジションの改善があったとはいえ、豪州の銀行システムでは海外投資家からの資金流入が続いています。つまり、強靭な銀行システムとAAマイナスの信用格付けを維持する事は、極めて重要なのです。格付けが引き下げとなれば、資金調達コストが上昇する可能性があります。

しかし、短期金融市場における資金調達コストが上昇した場合でも、幾つかの緩和要因が存在します:

  • 豪ドルは、重要な安定化の役割を担っています。
  • 豪州準備銀行(RBA)は、政策金利を過去最低の0.25%へと引き下げたほか、3年の融資枠提供を発表するなど、資金調達コストを可能な限り低水準を維持するというコミットメントを証明しています。この銀行向け融資の提供により、銀行は今後3年間で満期を迎える債務返済の大半を賄うことができます。また、既に弱含んでいる信用の伸びは、今後更に大きく低下する可能性が高いと、AMPキャピタルでは見ています。

 

今後の行方

豪州では、約30年ぶりのリセッション入りが一瞬の間に現実味を帯びた格好です。これは異例の事態であり、恐怖心や懸念に煽られるなど、全ての人が影響を受けます。しかし、銀行に代表される豪州のセクターは、強靭な基盤と十分な体制をもって景気後退局面に突入するわけであり、回復に向けて、この危機を乗り切るに十分な戦力を兼ね備えていると言えます。

 

1 KPMG、https://home.kpmg/au/en/home/insights/2019/11/major-australian-banks-full-year-2019.html
2 ブルームバーグ
3 各行の年次報告書

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