気候変動リスクとしてよく知られるのは海面水位の上昇ですが、実際のところ、洪水よりも差し迫った脅威は水不足だといえます。
経済協力開発機構(OECD)による1と、気候変動の影響は、水資源の変化を通じて現れることになります。水供給の減少にどう対応していくのかは、今後数十年にわたり地政学情勢の焦点となるでしょう。
国連食糧農業機関(FAO)が指摘する2のは、ヒマラヤの氷河の消失です。この融解水が流れ込む河川は、数十億人という幅広いアジア人々の水資源となっています。また、サブサハラアフリカ地域の7,500万ヘクタールに及ぶ耕作地も消滅の危機に直面しているといいます。これらは気候変動が私たちの水資源に与える影響の僅かな例にすぎません。
世界では、10人に4人が水問題に苦しんでおり、下痢によって年間220万人が死亡しています3。
最も乾燥した有人大陸である豪州でも水不足が問題となっており、過疎地を中心に、多くの人々が水の節約に取り組んでいます。
自宅の植物の水やりのためにシャワーにバケツを置いたり、歯磨き中に水道を止めたり、水不足という重大な問題を解決するには役不足で意味のない行動のように思えるかもしれません。しかし、問題解決に取り組もうとするその姿勢を投資に置き換えたならば、地球そしてポートフォリオに莫大なプラスの効果をもたらす事ができるかもしれません。
起こすべき行動
企業活動における水リスクの完全なる開示だけでなく、水使用の割合が最も大きいサプライチェーン4における開示を要求することが重要です。これらは、企業におけるサステイナビリティ開示制度の一環として自主開示される場合もあれば、気候変動など環境分野に取り組むカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)が取り纏めている水リスクに対する企業エクスポージャーのレポートなどを参照することができます。
水関連の事業にかかわる企業で構成される指数も複数開発されています。これらには、S&Pグローバル・ウォーター・インデックス5のように水関連株を幅広くとりまとめたものや、ナスダックOMX米国ウォーター・インデックス6の様にサステイナビリティ基準に焦点を当てたものなどがあります。
この様なツールが提供されているにも関わらず、最近のデータからは、投資家による持続可能な水資源に関するイニシアチブは進んでいないことが明らかになっています7。これは懸念すべき点です。気候変動を受けて海面水位が上昇するのは今後数十年、数百年後になるとみられるものの、人々を死に至らせるリスクをはらんだ安全な水資源の減少は、まさに今起きている問題なのです。
とはいえ、市場は資源不足を大きな問題としてとらえており、私たちの多くが実際に水不足という現実に直面するでしょう。私たちは、投資判断を通じて、この問題に取り組む事が可能なポジションにいるのです。
1. Water and climate change adaptation、OECD(2013年)
2. Climate change, water and food security、国連食糧農業機関
3. 10 facts on climate change and health、世界保健機関(WHO)
4. Larson W.、Freedman P.、Passinsky, V.、Grubb E.、Adriaens P.(2012年)、Mitigating corporate water risk: Financial market tools and supply management strategies、Water Alternatives 5(3): 582-602
5. S&Pグローバル・ウォーター・インデックス(2019年11月)、S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズ
6. ナスダックOMXグローバル・ウォーター・インデックス(2019年11月)、ナスダック・グローバル・インデックス
7. Hogeboom R.、Kamphuis I.、Hoekstra A.(2018年)、Water sustainability of investors: Development and application of an assessment framework、Journal of Cleaner Production、202 (2018) 642-648
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