経済&マーケット

豪ドルが底入れ間近な理由5つ

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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大規模な財政刺激の出動がない限り、追加利下げと量的緩和というRBAの金融緩和拡大によって、豪ドルは更なる下落する可能性があります。

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しかし、豪ドルは底入れ間近(もしくは、既に底入れしている)と考えるに十分な理由存在します。これらは、豪ドルはすでに大幅に下げている、豪ドルはフェアバリューを僅かに下回る水準にある、世界の景気サイクルは来年上向く可能性が高い、豪ドルに対するセンチメントは極めて悲観的である、そして豪州の財政は経常黒字である点です。

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当社のベースケースは、RBAの追加利下げを受けて今後数か月で1豪ドル=0.65米ドルまで下げるものの、2020年の年末には同0.65~0.70米ドル程度で足踏みとなるでしょう。

はじめに

0.60米ドル台後半への下落を経て、5月に0.65米ドルまで持ち直した豪ドルですが、長期にわたり弱気の流れが続いており、10月初旬には0.6671米ドルまで下げています。豪ドルにとってマイナス要因はまだ多く残るものの、底入れ間近または既に底入れしていると考えるに十分な理由が実は存在するのです。

誰もが知っている豪ドルのマイナス要因

豪ドルにとって大きなマイナス要因は、豪州経済の減速とその余剰能力は米国よりも高い点です。例えば、労働市場の不完全活用率は米国の7%に対して豪州は13.8%と高く、前年比で見た実質経済成長率は米国の2%に対して豪州は1.4%となっており、一人当たりGDPの伸びは米国で1.4%、豪州は-0.2%となっています。住宅価格の下落、消費支出の軟化や干ばつの影響が経済成長の足枷となっており、今後6か月程度にわたり、この弱含んだ状況は継続する見通しです。

労働市場における不完全活用率

これらを背景に、豪州のインフレ率は米国よりも低い状況が続くと見込まれます。望ましくは、追加の財政刺激が必要ですが、連邦政府はインフラ支出を前倒しています。とはいえ、干ばつ追加支援策と合わせても、これら今後18か月に渡る財政刺激出動は、GDPの僅か0.1%程度にしかならず、成長見通しに大きな影響を及ぼすには役足らずです。したがって、より大規模な財政刺激策が近々導入されなければ、RBAは更なる利下げを通じて政策金利を0.25%まで引き下げると同時に、(紙幣増刷によって成長を後押しするなど)ある程度の量的緩和を実施する可能性が高いと考えられます。これとは対照的に、米連邦準備理事会(FRB)は利下げ終了間近となっており、量的緩和を再開する可能性は低いといえます。したがって、豪ドルの比較的な魅力は薄いのです。次の図表で示した通り、利下げや金利底入れ局面における米国と豪州の金利差を受けて、通常豪ドルは下落し、安値を付けます。

豪州と米国の金利差と豪ドル

つまり、豪州において追加の金融緩和の可能性が高まっているということは、豪ドルにはまだダウンサイドが残っているということになります。もちろんのこと、金融緩和からより大規模な財政刺激へと政策がシフトすれば、豪ドルにとってより好ましい展開となるものの、豪州連邦政府が予算黒字化達成によりフォーカスしていることを考えると、これが短期で実現する可能性は低いと考えられます。

豪ドルの5つのプラス要因

とはいえ、(振り返ってみれば)もはや豪ドルの見方は、下落だけとは言えません。これには5つのプラス要因が関連します。まず、豪ドルはすでに大きな下落を経験しているという点です。2011年の1.11米ドルという数十年にわたる豪ドル高から、昨年1月につけた高値から0.81米ドルへと18%下落し、足元の最低水準に至るまでの下げは40%近くとなっています。

第2に、この下落によって、豪ドルはフェアバリューを僅かに下回る水準に落ち着いています。これは、長期フェアバリューを大きく上回る水準にあった2011年とは対照的な様相です。これを解読する上で参照すべきは購買力平価です。豪ドルは長期的に相対的な価格差に沿って動く傾向にある点は、この理論に合致してます。

相対価格で見て、豪ドルはフェアバリュー近辺にある

そして今、豪ドルはフェアバリューを僅かに下回る水準にあります。上の図表からも明らかな通り、豪ドルは極端な動きをする傾向にあるため、フェアバリューを下回る水準まで大きく下落する可能性があるのは、もちろんのことです。しかしこれは、世界経済と商品価格のシクリカルな見通し次第です。

第3に、世界的な金融緩和、世界の在庫と製造サイクルの底打ち、大統領選挙再選を目指すトランプ米大統領による貿易戦争の一時休戦を背景に、グローバル経済と商品価格のサイクルは、来年上向き始める可能性が高くなっています。

グローバル製造業PMIと中央銀行の政策方針

これまでの経験に基づいて考えると、これは米ドルにとってマイナス要因です。なぜなら、シクリカルなセクターに対する米経済のエクスポージャーは低いためです(グローバル成長が加速する局面では米国から資金が流出し、減速する局面では米国へと資金が流入する傾向にある)。米ドル安は、商品価格そして、原材料など景気循環業種へのエクスポージャーが高い「リスクオン」の豪ドルにとって、プラスに働きます。

主要通貨に対する米ドル貿易加重指数

第4に、豪ドルの極端なショート又はアンダーウエイトのポジションが示す通り、極めてネガティブな豪ドルの見方がグローバルに継続している点です。つまり、豪ドルを手放したい売り手は既に売り放してしまっているため、明るいニュースが出た際にはラリーに翻弄される可能性があります。

豪ドルのポジションは極めてショートの状態が継続

そして最後に、豪州は再び経常黒字化を達成しました。これには、鉄鉱石価格の上昇、堅調な資源やサービス輸出、スーパーアニュエーションが保有する海外資産の増加を背景とした純資産ポジションの増加が寄与しています。つまり、経常収支の改善は、一時的なものではないと言えるでしょう。ということは、海外マネー流入への依存が低くなり、豪ドルにとってプラスです。

1970年代以来初となる経常黒字

今後の見通し

米国よりも弱含む成長や更なる金融緩和が見込まれる豪州の見通しを踏まえると、豪ドルの短期的な下げ圧力が残るでしょう。しかしながら、既に大幅な下落を経験している豪ドルは長期フェアバリューを僅かに下回る水準にあり、グローバル経済の改善が見込まれる点や豪ドルのショートポジションが積みあがっている点、経常黒字化を考慮すると、豪ドルは底打ち近く、または既に底打ちしている可能性が高いといえます。AMPキャピタルのベースケースでは、RBAによる緩和継続を受けて1=豪ドル0.65米ドル近辺まで下げ、2020年の年末には、同0.65~0.70米ドル辺りで足踏みすると見込んでいます(とはいえ、私もそこまで強固たる見方をしていないのが事実です)。

もちろん、米中貿易戦争が再び激化し、世界経済が崩壊するようなことになれば、輸出需要や信頼感の大幅後退を背景に、豪州の失業率は急上昇し、住宅価格はまた大幅下落となるなど、豪ドルはさらに下げる事になりますが、その可能性は低いと言ってよいでしょう。

投資家、そしてRBAへの影響

豪ドル底入れ間近のリスクを考えると、豪ドルヘッジなしで海外資産の高いエクスポージャーを保有する意味が薄れています。豪州の投資家にとって、豪ドルに対するポジションを持っておく事は、(例えば貿易関連など)世界動向や(例えば家計債務など)豪州の状況が悪化する様な万が一の局面においてプロテクションの役目を果たすことは間違いありません。

向こう1年において豪ドルのサポート材料となるような世界動向は、豪州経済を底上げしたいRBAの考えを複雑化するものです。豪州輸出に対する需要増はプラスであるものの、豪ドルの上昇圧力はそれを抑制するための追加金融緩和の必要性を示唆するものとなります。

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