経済&マーケット

豪州連邦総選挙:与党保守連合が政権維持、豪州経済への影響とは?

5月18日に投票が行われた豪州連邦総選挙では、与党保守連合(自由党・国民党)が勝利を収めました。豪州経済への影響という観点から見ると、これまで通り、特に大きな変化はないと考えられます。

AMPキャピタルのシニア・エコノミスト、ディアナ・ムッシーナによると、与党保守連合の短期的な注目点は、今年度予算の焦点ともなった中・低所得層向け所得税減税です。この減税効果は、GDPの約0.5%相当に値します。

「この減税措置は消費に寄与しますが、世帯刺激策の効果という観点からは、住宅価格下落分を補うまでには至らないと見込まれます。」

与党保守連合はインフラ支出への取り組みを引き続き強化すると見られており、今後も多様なプロジェクトの発表が継続する見通しです。しかし、この取り組みは今年年末にかけてピークに達すると見られており、「年末から来年に向けて、インフラ関連の雇用が軟化する可能性がある。」とムッシーナは指摘します。

初マイホーム購入者も、恩恵が期待できるでしょう。与党保守連合は、手付金5%しかない購入者に対する支援を示唆しています。これにより、初マイホーム購入者は貸手抵当保険(LMI)に加入することなく住宅ローンを組むことが可能となりますが、一方で、少額な手付金の貸付や融資基準に関連する潜在的リスクを生む可能性があります。

全体的に見て、豪州経済の見通しは比較的抑制されたものとなるであろうと、ムッシーナはコメントしています。「消費の弱含みを受けて、今後2年間のGDP成長見通しは2.0~2.5%程度にとどまると予想しており、インフレもまた2%水準で横ばいが継続する見通しです。」

この結果、豪州準備銀行(RBA)は今年中に2回利下げを実施し、政策金利は年末までに1%へと引き下げられると予測されています。

財政政策の観点からは、与党保守連合は今任期中に黒字化を達成すると見られています。今年度連邦予算に概要が盛り込まれた新税率の導入は5年先となる可能性が高く、中・高所得世帯を対象とした大規模な変更が含まれます。これは、ブラケット・クリープ問題対応に寄与するでしょう。

金利と為替市場への影響は限定的だと指摘するのは、グローバル債券部門マクロ・マーケッツ担当シニア・ポートフォリオ・マネージャーのアンドリュー・スコットです。豪州経済を大局的にみると、連邦総選挙よりも重要な課題が存在するからです。

「市場の注目点は、引き続き貿易や失業率となるでしょう。とはいえ、今回の連邦総選挙の影響は少なからず存在します。例えば、金利や為替相場の動きです。」

野党労働党は低賃金労働者の賃金に関する積極的な介入を提案していましたが、与党保守連合の勝利を受けて、実現の可能性はゼロになっています。この点については、金利の観点から2つの見方があると言えます。

「RBAは長期に渡って賃上げを目指しています。賃金上昇は失業率の低下に寄与したことでしょう。しかし、足元で重要なのは失業率です。当社では利下げ見通しを維持していますが、賃金をめぐる不透明感が若干排除された今、RBAの次なる動きが問われています。全体でみると、豪州経済に影響を及ぼしているその他要因にかかわらず、与党保守連合の勝利は豪ドルをサポートするものです。

スコットが指摘するのは、今年度の連邦予算案に盛り込まれた減税が実施されるまでの間には複数回の選挙が行われる点です。従って、経済状況見通しを予測するのは困難です。

「これら減税実施が極めて先であることからも、市場はの注目は、金利や通貨市場を動かす短期的なイベントに集まっています。」

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