グローバル上場不動産は、バランス型ポートフォリオに分散効果をもたらすとともに、実物不動産からの経済リターンを提供します。このレポートでは、ダイナミックで安定した不動産ポートフォリオの構築において重要となるであろう、革新的な投資アイデアを取り上げます。
「グローバル上場不動産において私たちが求めるのは、ディフェンシブな成長です」と語るのは、AMPキャピタルにおいて上場不動産チームを率いるジェームス・メイデューです。
中でも投資妙味に優れているのは、米国の簡易型住宅セクターです。これには幾つかの理由があります。
- まず、供給が限定的であることから、賃料は継続的な上昇が見込まれます。
- そして、これら資産は設備投資が少額であるうえに、強靭なキャッシュフローを創出します。
- 簡易型住宅は、今後20年に渡る高齢者増加の波、いわゆる「シルバー津波」となって押し寄せるベビーブーマー世代の退職者の間で、手の届く住宅オプションとして人気が高まっています。
- ウォレン・バフェット氏やサム・ゼル氏など、世界的著明な投資家も、同セクターに注目しています。
米国だけでなく、世界その他の地域でも、簡易型住宅需要の成長を支える環境が整っています。
アジア地域の見通し
アジアでは、産業用不動産に注目する投資家が増加しています。これは、消費拡大、サプライチェーンの現代化、Eコマースの拡大を背景とした長期的な構造上の成長を反映したものです。
グローバル上場不動産のアジア担当ヘッドを務めるジェシカ・コーは、「これらの流れを受けて、アジアでは、各市場全体で現代的な設備を備えた倉庫が僅か5%しかない日本、インド、香港を中心に、倉庫が大幅に供給不足となっています。」と語ります。
「市場の成熟に伴って、キャップレートが更に圧縮する可能性があります。例えば、中国の物流資産は、オフィス資産と比較して210bpsのスプレッドが乗っています。これとは対照的に、米国に代表される成熟市場では、このギャップは僅か30bpsです。全体的に見ても、産業用不動産は魅力的な長期リターン獲得の可能性を提供しています。」
欧州の見方
ドイツの住宅/集合住宅市場では、規制が投資機会を生み出していると語るのは、グローバル上場不動産の欧州担当ヘッドのライアン・ワトソンです。
「人口は移入超、そして都市化が進むドイツでは完全に供給が不足しています。新規の供給がない限り、この需給バランスの崩れは継続する見込みです。従って、これらセクターへの投資は、今後複数サイクルに渡り、賃料成長とキャピタル成長という安定した良好なリターンが期待できるでしょう。」
これら投資機会にアクセスするにあたっては、市場と規制環境を十分に理解している事が重要であるとワトソンは指摘します。分散が大切であるように、成長都市を投資先に選択する事も重要です。その規模と運営効率を通じて、大手プレーヤーがマージンの12%拡大に成功していることからも、スケールも検討すべきポイントです。
さらにドイツでは、主要都市の一部で、政府による賃料上限のキャップが定められているものの、市場賃料は上昇基調にあり、この差が、今後長期に渡る構造的な賃料成長の基盤を形成しています。
市場下落時に市場賃料が低下したとしても、上限が定められた賃料は(インフレに連動して)安定的に上昇を続けるため、投資家にとっては成長が見込めるディフェンシブな資産だと言えます。
豪州市場のダイナミクス
豪州では、オフィス、小売り、産業用不動産の所有・開発から運営を一貫して手掛けるファンド・マネージャーを選好する動きが見られます。これら投資家の注目が高まっているのが、賃貸用開発のビルド・トゥー・レント、幼児教育、ヘルスケアといった新興セクターです。
グローバル上場不動産の豪州担当ヘッドのマーク・ファーガソンは、「一部のファンド・マネージャーは、グローバル運用を手掛けることから、豪州だけでなく他地域のエクスポージャー獲得において、優れたポジションにあります。」と語っています。
米国の投資機会
「クリエイティブ・オフィス」こそ、米国における興味深い投資機会であると語るのは、グローバル上場不動産の米州担当ヘッドのマシュー・ホジキンスです。
「従来の働き方は、ミレニアル世代の価値観にそぐわないのです。彼らが求めているのは、古びた仕切り型の空間ではなく、コラボレーションを可能とするオフィススペースなのです。」
とはいえ、新たな働き方という流れに適応できている不動産オーナーはごく僅かです。今の所、米国西海岸に多く見られますが、今後この構図は変化していくでしょう。
「この新しい職場カルチャーは、西海岸がインキュベーターとなって全国に広がっていくと予想されます。」とホジキンスは語ります。「この分野を支配する不動産オーナーこそが、今後10年にわたり全国トップの座を維持することになるでしょう。」
不動産ディベロッパーにとって好ましい状況は、供給が限定的な不動産の需要が増加することです。まさしくこの状況に沸いているのが、世界的にも主要なIT都市、サンフランシスコのクリエイティブ・オフィスです。
同市では、プロポジションMと呼ばれる規制によって新規オフィス開発が制限されています。一方で、テクノロジー業界が成長を続ける中で、テックジャイアントや次世代を担う新興ビジネスからの需要は旺盛となっています。
「北のシアトル、南のサンディエゴ、その中間に位置するサンフランシスコとロサンゼルスは、ミレニアル世代の移入が多い地域です。規制水準は市場毎に異なり、サンフランシスコが最も厳しく、サンディエゴは最も緩和的ですが、西側は太平洋、東側は山脈に囲まれており、開発には限度があります。それでも、これら地域の人口は、移入超が続いているのです。」と、ホジキンスは同資産クラスに対する将来的な需要ドライバーを解説します。
今回取り上げたトレンドは、当社が注目しているグローバル投資機会の僅か一握りであり、多様なグローバル不動産投資機会を表していると言えるでしょう。これら資産は、運用目標やリスク、期間など異なる投資家ニーズに幅広く応えるものであり、グローバル・ポートフォリオ構築において相互に補完し合うものです。
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