足元では、豪州経済の減速、景気後退の可能性について注目が集まっています。
先週発表となった2018年10-12月期のGDP統計からは、成長の鈍化が確認され、懸念が高まりました。
2018年10-12月期のGDP成長は、前月比+0.2%、前年同期比+2.3%と僅かな伸びに留まり、市場予想、そして豪州準備銀行(RBA)の見通しである2.75%を下回る結果となっています。
「一人当たりGDP成長率」の後退
豪州の一人当たりGDPは、2018年の7-9月期に-0.1%、10-12月期に-0.2%と、2四半期連続でマイナスを記録しています。2006年以降で初めて、この「一人当たりGDP成長率の後退」を記録したことも、懸念が高まった要因です。
では、実際にリセッション入りの可能性はあるのでしょうか?
4つの懸念要因
豪州経済を取り巻く懸念要因は、大きく4つ存在します。
1. 住宅建設の低迷:
リセッション懸念の多くは、住宅市場の軟化に関連しています。これまでのブームから一転、住宅建設は、前年比-30%という建設許可件数の減少と足並みを揃える恰好で、今後1年程度にわたり減少を続けると予想されます。住宅建設は大きな雇用を生み出すことからも、この減速は経済の重石となります。
2. 住宅価格下落を受けた逆資産効果
住宅価格は昨年から下落を継続しており、いわゆる逆資産効果によって、消費が冷え込んでいます。住宅価格が上昇する局面では、資産価値の上昇を受けて消費が増え、賃金上昇がなくとも気にならないため、貯蓄に手を付けてしまう、という訳です。
しかし、住宅価格が下落する局面においては、失った資産を補うために貯蓄を増やしたいと考えるため、消費が減少します。新車販売の軟化や一般消費財の一部では、この逆資産効果が確認され始めています。
3. 銀行貸出の減少
中小企業を中心として銀行による貸出が減少している点も、経済成長の足枷となる可能性があります。
4. 干ばつの影響
豪州の南東部では、幅広いエリアが干ばつに見舞われており、これが経済に悪影響を及ぼしています。
これら4つの要因は、豪州経済にとって大きなリスクです。全てを合わせて考えた場合、1.5-2.0%相当の経済成長が失われている可能性があります。
豪州経済のサポート要因
一方で、豪州経済のサポート要因も幾つか存在します。
- 公共インフラ支出は堅調
- ここ5年で経済成長の重石となってきた資源投資の軟化は、底打ちしつつある
- 非資源投資拡大の兆しが確認されている
- 中国経済そして世界経済は今年後半には回復する見通しで、これが豪州経済の支援材料となる
そして、豪州には金融刺激策の余地が残されています。これは、4月に発表を控えている連邦予算案からも、減税や支出といった形で確認することが出来るでしょう。
また、RBAにも利下げの余地が残されています。当社では、年末までに、現在の1.5%から1.0%への利下げを見込んでいます。この利下げ効果の浸透が、住宅ローン世帯の支援となるでしょう。
成長は限定的となるも、リセッション入りはない
全体的に見て、豪州経済の成長とそのスピードは抑制されたものとなる見通しです。
つまり、インフレ上昇にはより時間がかかるという事になり、失業率が上昇すると予想されます。
成長の軟化、そしてRBAによる利下げは、豪ドルの足枷となり、対米ドルでは70セントを下回る可能性もあります。
豪州株も、経済成長の減速から影響を受けると見込まれます。
しかし、失業率の上昇を受けた住宅ローンのデフォルトや強制売却など、リスクが存在する一方で、豪州が深刻なリセッション入りする可能性は低いと考えられます。
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