オンライン小売の急速な拡大を背景に、リバースロジスティクス(消費者や利用者から生産者へと向かう物流)産業の成長が見込まれており、この波及効果は商業用不動産セクターにまで及ぶと予想されています。この新たな産業は今後、機関投資家にとって重要なテーマであるとAMPキャピタルでは見ています。
リバースロジスティクス専門オペレーターは、オンライン購入商品の返品に際する回収・チェック・配送を手掛けます。これら企業はグローバルで事業を展開しており、単なる物品回収を超えるサービスを提供しています。実際のところ、同セクターは複雑な仕組みであることからも、ロジスティクス分野だけでなく、運営とプロジェクト管理における専門能力が必要とされます。
このリバースロジスティクス・セクターの成長、成熟に伴って数多くの事業機会が登場すると見込まれており、投資家にとっても興味深い投資オポチュニティが提供される見通しです。
150億豪ドルの成長機会
この成長機会は、データに裏付けられています。当社調査では、返品市場の規模は2025年までに150億豪ドル規模に成長すると予測しています。これは、衣料品や本、おもちゃといった人気の高いクリスマス・プレゼントを中心に、オンライン購入商品の返品率は平均30%であるというニューヨーク・タイムズ紙のレポートとも合致しています1。
豪州統計局(ABS)によると、豪州におけるオンライン消費は年間で200億豪ドルを超えており、成長が継続しています。つまり、豪州におけるオンライン購入商品の返品は年間約60億豪ドル規模と推定され、小売業者にとっては物流面における複雑かつ大きな課題となっています。
さらには、顧客が返品に際して高水準の顧客サービスを要求するという点も、リバースロジスティクス・セクターへの投資ニーズを裏付けていると言えるでしょう。AMPキャピタルの調査では、ネットショッピングの消費者評価で最も低い評価が付いているのは返品のプロセスである事が明らかになっています。この顧客の要望に応えるため、オンライン事業は、物流力と販売力の強化に取り組んでいます。
返品をめぐる顧客の感想
2018年、AMPキャピタルは消費者500人を対象にオンライン小売に関するアンケートを実施しました。オンライン・ショッピングにおいて最も煩雑と感じるのが返品であると回答した対象者は65%を超えていました。消費者にとって最大のペインポイントは、返品の発送手続きにかかる時間や手間なのです。
一部のオンライン事業者は返品の回収や送料無料といったサービスの提供を開始しており、顧客体験をリターンに結び付けるという観点から先行するビジネスも存在します。しかし、これは一部に限られていることからも、利便性に優れたスムーズな返品サービスを消費者に提供する、返品に注目した新たなサービスが登場しているのです。
返品という顧客の悩みの種は、実店舗の小売事業者にとってもオポチュニティを提供しています。アンケート回答からは、消費者は自宅や職場から1km以内の返品場所を好むという結果が出ています。返品無料や即時返金といったサービスがあれば、より優れた顧客体験を提供することができるでしょう。
ネットショッピングの拡大は実店舗に悪影響を及ぼすと考えがちですが、実際のところ、興味深いオポチュニティが登場しています。例えば、オンライン事業者や物流企業に代わり返品を受け取るといったサービスが、実店舗の新たな事業モデルとして登場しています。
新しいオポチュニティ
米国では、ベンチャー企業「ハッピー・リターンズ」が、主要なショッピング・センターに返品受付ブースを設置しています。これは、返品に来場する客足を獲得するという観点から、ショッピング・センターにとっても恩恵です。
CBRE調査でも、リバースロジスティクス産業の成長は不動産セクターにもプラスの効果をもたらす事が示されています2。リバースロジスティクス事業には供給網の拡張が必要ス可決であることから、倉庫や配送センターの需要が増加します。当社リサーチでは、返品市場の拡大を受けて、2025年までに2百万平方メートル規模の物流スペースが必要となると見込んでいます。これは、商業用不動産オペレーターにとって明らかなプラス要因です。
商業用不動産、特にロジスティクス施設における賃料の伸びは、リバースロジスティクスといった新しい産業の今後における成長ストーリーを支えるものです。小売産業におけるオンラインの成長とともに、当社ではこの新たな産業における投資機会をに注目していきます。
1 ニューヨーク・タイムズ紙、Many unhappy returns? Online holiday shopping’s big hangover 、2017年12月
2 CBRE、Return to sender: Holiday season heightens challenge of online returns for retail supply chains 、2018年12月
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