責任投資

インパクト投資のオポチュニティと課題

評価手法の向上とともに、インパクト投資はより高度化しています。世界の投資家の間では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)といった枠組みに対するコミットメントが広まっていることからも、まだニッチな投資分野といえるインパクト投資への注目と議論が高まっています。

AMPキャピタルが最近同分野における専門家や有数のファンドマネージャーを招いて開催したラウンドテーブルにおいても、このインパクト投資が注目点となりました。

投資機会

インパクト投資家が目指すのは、金銭的なリターンだけでなく、社会や環境面でプラスの効果をもたらす投資の実行です。

グローバル・インパクト投資ネットワーク(GIIN)が発表した調査結果1によると、インパクト投資家の資金は、平均して41%がプライベート・デット、18%がプライベート・エクイティに投じられています。このトレンドは徐々に変化しつつあるとはいえ、公開市場ではピュア・プレイのインパクト投資先企業を発掘するのが困難であるためです。

また、インパクト投資の機会は、先進国よりも新興国に多く存在すると言えます。これは、真なる社会的インパクトを実現するプロジェクトなど、新興市場における資金ニーズは先進国のそれを大きく上回るためです。

インパクト投資の課題

インパクト投資の課題は、その結果をどの様に測定するのかという点です。環境面のインパクトは、CO2排出削減、再生可能エネルギー発電量など、共通した定量データが存在することからも、社会面の結果よりも計測しやすい傾向にあります。一方で、社会面のインパクトを測るデータには、アフォーダブル住宅の供給件数や政府支出の削減などがあります。

とはいえ、一言でインパクトといっても影響は様々であり、共通性に欠け、定量化と比較が難しいことからも、異なる投資を横比較する一定の計測は極めて困難です。現在、最も一般的に使用されているインパクト投資のパフォーマンス計測ツールは17つのSDG目標で、気候変動対策やジェンダー平等など、特定の目標にたいするパフォーマンスを図る方法です。事業や投資におけるインパクト・マネジメントに関する国際イニシアチブとして発足した「インパクト・マネジメント・プロジェクト(IMP)」も、インパクト投資の測定・報告枠組みのソリューションのひとつとして、認知されつつあります。

もう一つの課題は、投資家に強靭なリターンを提供する事と、投資先が問題解決に向けて十分な資金を調達する事のバランスを適切に取る事です。

簡潔に言うと、魅力的なリターンの創出は間違いなく可能です。豪州責任投資協会(RIAA)の調査によると2、豪州の投資家が実際に得たリターンは、期待する市場リターンとほぼ同等であったという事が明らかになっています。世界的に見ても、2018年GIIN年次投資家調査1からは、調査対象者の過半数以上が、期待するインパクト結果(回答者の82%)とリターン(同76%)に合致する結果が得られた事が示されています(リターンはリスク調整後の市場リターン)。これらのうち15%は、インパクトとリターンの両面で期待を上回るアウトパフォーマンスを実現しています。

この様に、極めてポジティブな調査結果が出ているとはいえ、過去データがまだ積み上がっておらず、市場リターンやベンチマークの適正水準が明確でないことからも、インパクト投資パフォーマンスについて有意義な結論付けを行うのは未だ困難です。

全体的に見ると、インパクト投資資金のアロケーションやリターン計測の方法には、まだ改善の余地が残されていると言えます。社会やその他世界的な問題解決に取り組む団体やコミュニティのためにも、同セクターは正しい方向に向かって進んでいます。

 

GIIN、https://thegiin.org/assets/2018_GIIN_Annual_Impact_Investor_Survey_webfile.pdf
2 RIAA、https://responsibleinvestment.org/about-us/。インパクト投資は黎明期にあることからも、実際の投資やそのインパクトとリターンに関して入手できる情報は限定的です。別途記述がない限り、同記事で使用したデータは全て、RIAAによるレポート「Benchmarking Impact - Australian Impact Investment Activity and Performance Report 2018」を参照しています。

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