採鉱の過程で発生するスラグ(鉱滓)の堆積場である鉱滓(こうさい)ダムは、重大なESG(環境・社会・ガバナンス)リスクをもたらしています。
ダム決壊の惨事は近年で複数発生しており、多くの死者を出したほか、環境や地元コミュニティにも大きな悪影響を及ぼしています。投資家は、ダム決壊リスクの適切な評価とその開示を求めて、グローバル資源企業らとのエンゲージメントに乗り出しています。
鉱滓ダムのリスク
坑道を掘らずに地表から掘り下げていく露天掘りの鉱山では、この過程で発生する鉱滓を地中に戻すことができないため、鉱滓ダム(テーリングダム)が活用されています。
この種の廃棄物は、処理を通じて化学特性が変化する場合があり、その有害性が高まる可能性があります。従って、これら廃棄物を保管する鉱滓ダムは、継続的なモニタリングを通じてその安全性が確保されていなければなりません。
2015年、ブラジルのベント・ロドリゲス村近郊に位置する鉱滓ダムが決壊し、19人が死亡するとともに、下流の住民らに深刻な影響をもたらしました。そして、2019年1月、同じくブラジルのコヘーゴ・ド・フェイジョン鉱区のダムが決壊し、作業員ら240名を超える死者を出しています。
これらの事故は、地元コミュニティと住民の生活基盤、そして環境に莫大な影響を及ぼしており、関係企業とその株主は巨額の復旧・復興費用を支払っています。
一部のケースでは、影響を受けた村全体を新しいロケーションへと移動させたり、汚染された水資源の復旧や損害賠償の支払いが行われました。これに加え、関係会社に対する罰金や生産中断、事故対応に必要な時間と手間といった追加的な費用が発生しています。
投資家の対応
ずさんに管理された鉱滓ダムがもたらすリスクに対して、投資家の懸念が高まっています。欧州年金基金大手を筆頭に、投資家は鉱滓ダムのリスクとその管理方法について資源企業に追加的な開示を要求するとともに、鉱滓ダムについてグローバルかつ独立した国際安全基準の確立を求めてロビー活動を行っています。
このイニシアチブと並行する形で、国際金属・鉱業評議会(ICMM)、国連環境計画(UNEP)、AMPキャピタルも署名機関として賛同している国連責任投資原則(UNPRI)は3月、鉱滓ダムの国際基準確立にむけて、独立したレビューを共同で開催すると発表しています。
鉱滓ダムの設計、運営、維持における国際基準の確立に向けた取り組みは極めて重要であり、AMPキャピタルでも開示強化を図りました。これは、鉱滓ダムそれぞれのリスクに関する投資家の理解を深め、投資家自身の意思決定に役立つものです。
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