ファンダメンタルズのグローバル見通し
成長:トレンド以下へと減速後に安定化
2019年、世界経済成長は減速が継続するものの、金融緩和や財政政策が支えとなり、年央には安定化する見通しです。この安定化で重要な役割を果たすのは、中国です。グローバル成長はトレンドを若干上回る水準へ回復し、年末に向けて余剰生産能力が低下するでしょう。米国は引き続き好調となる一方で、グローバル成長がトレンドを上回る水準へ回復するには、中国と欧州の安定化が必要不可欠です。豪州は、高水準の家計債務、弱含む住宅市場、信用引き締めを受けた金融情勢の悪化が重石となり、アンダーパフォーム組となる見通しです。
インフレ:緩和の後に安定
総合インフレを左右するのは、引き続き原油を中心とした商品価格動向となる見通しです。供給制約が生産価格のサポート要因となる一方で、インフレが上昇するには、グローバル需要の安定化や米ドルの水準が安定または弱含む必要があります。コアインフレは短期的に抑制が継続するものの、需給ギャップが解消するにつれて徐々に上昇するか、経済が年後半に潜在成長率を上回る成長に回帰した場合には、プラスに転じるでしょう。より長期では、構造的要因が引き続きインフレ抑制に働きますが、景気循環に伴うインフレの可能性は残されています。
金融情勢:支援的から引き締めへ
引き締め局面を終え、2019年の金融情勢は、より支援的となる見通しです。2018年、金融引き締めや流動性の低下を受けて、金融情勢は幅広くタイト化しました。その後、ボラティリティが高まり、資産市場が低調し、更なる情勢悪化をもたらしました。2019年、予想通りに成長が安定化する場合、供給制約を背景に、米国が先導する形で先進国は金融引き締めに動くでしょう。一方豪州では、利下げの可能性の方が高くなっています。
注目すべき主要リスク
欧州の経済成長とソブリン債務
欧州経済がトレンドを下回る水準へ減速するとともに、ソブリン債務問題が再び表面化すると見られます。アイルランドやスペイン、ポルトガルなど、欧州国の一部では財政立て直しに成功したものの、脆弱さが未だ残っています。最も懸念されるのは、イタリアです。10年前と比較すると、欧州各国の政治体制にはより多くの亀裂が入っており、銀行システムにおける資本状況の改善がその影響を一部相殺しているとはいえ、新たなソブリン債務問題がどの程度のボラティリティをもたらすかは不明です。
中国のレバレッジ解消
2018年を通じて中国経済の重石となった信用収縮問題は、結果的にグローバル経済の足枷となりました。中国当局が様々な対応策を導入したにもかかわらず、成長はまだ望ましい水準まで回復していませんが、安定化に向けた初期の兆候が見え始めています。これまでの政策に加え、追加的な緩和を打ち出すことで、2019年には成長安定化が図られると考えられています。
米中貿易
米中貿易戦争は、2018年におけるグローバル成長軟化の最大要因ではなかったものの、その減速に寄与したことは確かです。投資家センチメントが大きく影響を受けており、一時的な休戦はその回復をサポートするものです。米中ともに、成長減速のリスクが高まっていることからも、全面的な解決に至らないとしても、部分的な解決策の合意がなされると予想されます。
豪州における住宅市場、債務、失業率
大手銀行は住宅ローン金利を引き上げており、この貸出基準の厳格化とマクロ・プルーデンス政策が相まった結果、豪州住宅市場が低迷を続けています。インフレ圧力は引き続き限定的で、企業景況感の低下を示す兆候が一部で確認されています。堅調な雇用拡大が所得の伸びを支えているものの、賃金伸び悩みと家計債務の増加を受けて、一人当たり家計消費が落ち込んでいます。これらを背景に、豪州準備銀行(RBA)は政策金利を据え置くと見られますが、緩和リスクがより高まっています。
この行方を左右するのは、労働市場となりそうです。力強い雇用の伸びが継続する限り、RBAにとって住宅価格の下落はそこまで懸念材料ではありません。しかし、消費減速の影響が労働市場に波及した場合には、利下げ圧力が高まると見られます。労働市場の軟化を受けて住宅市場が更に低迷した場合には、より積極的な利下げサイクルに突入する可能性があります。足元の見通しでは、住宅価格は最大でピークから25%下落となる予想で、これまで既にピーク時から10%の下落を記録しています。
2019年における主な債券市場の見方
グローバルに見ても、政策担当者の姿勢はハト派寄りであることから、政策緩和と成長の安定化とともに、リスク資産の動きにも一服感が出るでしょう。しかし、ボラティリティの可能性は未だ高いままです。グローバル経済は成熟期に入っており、サイクル後期の政策が取られています。想定される今後のシナリオは2通りです。経済成長が安定しないまま景気後退のリスクが高まるか、既に供給が制約されている経済が安定的に成長することでインフレのリスクが高まるかです。
クレジット
クレジット市場の見通しは、注意が必要であるものの、建設的だと考えています。AMPキャピタルでは、満期がより短いものに注目し、全体のクレジット・リスクを抑制することで、スプレッド縮小からのキャピタル・ゲインではなく、より高い直接利回りの獲得を狙います。戦略的なリスク追加の判断は、より良いバリュエーションが達成できるかによります。企業レバレッジは縮小していますが、安定した成長と低金利環境の継続から、高い債務履行能力が維持されています。しかしながら、ここ数年間に渡りクレジット・パフォーマンスに寄与してきたファンダメンタルズの追い風は弱まっています。中期的には、クレジット・スプレッドのボラティリティが軽度に高まる環境下において、良好なパフォーマンスが期待できるセクターや発行体に注目しています。選好するのは、ディフェンシブ性に優れた、非シクリカルな産業、または堅実なレバレッジ解消ストーリーを描ける企業です。
金利
各国中央銀行は、2019年の大半を通じて、ハト派の姿勢を維持すると予想され、バリュエーションからは名目利回り低下の行き過ぎが示唆されているものの、実質利回りは低水準が維持されると考えられます。弊社では、2019年後半には成長が安定化すると見込んでおり、これがインフレ上昇圧力をもたらし、原油や商品価格の安定とともに、上昇圧力がさらに高まると見ています。これらの対立する要因を受けて不透明感が高まることからも、2019年前半においては名目利回り上昇の可能性は低いでしょう。従って、グローバルよりも国別のテーマや、レラティブ・バリューの機会を選好します。豪州では、満期がより短い債券でデュレーションを長く取り、イールド低下に向けたポジショニングを選好します。豪州のイールドは、その他世界の金利動向と足並みを合わせる形で低下する可能性が高いと考えます。一方米国は、トレンドを上回る継続的な成長と比較的にも供給制約がタイトであることから、短期デュレーションのポジションで最も選好する市場です。
イールドカーブ
イールドカーブの見通しは、地域毎に異なります。米国と中国ではスティープ化が進むと見られますが、欧州と英国ではよりフラットとなるでしょう。一方、豪州では、RBAによる金融政策緩和のリスクの高まりから影響を受けると見込まれます。
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