インフラストラクチャー

インフラ投資のケーススタディ:安定したインカム創出の仕組みを解説

はじめに

インフラ投資の恩恵のひとつは、長期にわたるインカム利回りの獲得です。ここでは、足元の低金利環境下において魅力的なインカム利回りを提供するインフラ資産について、実例とともに解説していきたいと思います。

インフラ資産から安定した長期のインカム利回りを得ることができる主な理由のひとつは、その収益が規制や長期契約によって守られているためであり、予見可能性に優れたキャッシュフローが創出されているためです。

以下では、AMPキャピタルが運用するインフラ資産3つを例に取り上げ、安定したイールドを提供する仕組みをそれぞれ解説していきます。

 

SAスクールズ

学校は、一般的に社会インフラと呼ばれるセクターに分類されます。これ以外に、社会インフラには、病院、刑務所、駐車場などが含まれます。SAスクールズは小学校1校、高校2校、特別支援学校1校を含むプロジェクトで、合わせて4,600名を超える学生が通学しています。

同プロジェクトは、病院や学校、公共交通機関等のインフラ開発プロジェクトに活用されるPPP(官民パートナーシップ)案件として形成されました。

AMPキャピタルでは、2039年までの長期運営権獲得を通じて、SAスクールズに投資を行っています。SAスクールズの役割は物理的な施設(例:教室、廊下、校庭など)の維持管理であり、教師の雇用や派遣は州政府の教育機関が担当します。

SAスクールズは、施設の維持管理の対価として、南オーストラリア州政府からの支払いを受領します。SAスクールズに要求されるのは、授業時間や合意したその他の授業時間外において学校施設を利用可能な状態に維持することです。

学校施設を利用可能な状態に維持するというSAスクールズのパフォーマンスは、294件のKPI指標に基づいて評価されます。KPIの要件を満たさない場合、同州政府はSAスクールズに対する支払いを減額する権利を持っています。しかし、これらKPI要件の達成は比較的容易である点、AMPキャピタルはこの種のインフラ運用経験が豊富である点、そしてKPIリスクの多くは施設管理の下請け業者に転嫁されている点から、減額のリスクは低いと考えられます。

SAスクールズは、安定したキャッシュ・イールドを提供しています。需要や利用リスクの無いアベイラビリティ・ベースの収益(実際に、これら学校に通う生徒がいなくても、SAスクールズに対する支払いが行われます)であるからこそ、確実性の高い安定した収益であると考えることができます。そして、その収益をもたらす契約先は、AA格という信用度の高い南オーストラリア州政府です。

社会インフラへの投資は、リターンという金銭的な恩恵以外にも、社会やコミュニティにポジティブな結果をもたらすものです。SAスクールズに関して言えば、2010年に57%だった高校3年生の卒業率が、2018年には100%へと大きく改善しています。

 

オーストラリア国立大学:特設学生寮

オーストラリア国立大学(ANU)は豪州トップにランクインする有名大学で、国内外の幅広い地域から数多くの学生を惹きつけています。つまり、キャンパス敷地内に位置する学生寮は、大学が戦略目標を達成する上で欠かせないものです。

AMPキャピタルは最近、豪州で最大規模を誇るANU特設学生寮(PBSA)ポートフォリオの2053年までの運営権を取得しました。同ポートフォリオには、合計で建物10件、4,184床が含まれるほか、AMPキャピタルは、ANUと更なるPBSAプロジェクト協働の機会を獲得しています。入居リスクは全てAMPキャピタルの負担となりますが、34年間にわたり賃料収入を獲得します。賃料はインフレ連動で増加する仕組みとなっており、5年毎に市場賃料のレビューが実施されます。施設管理は、運営権と同期間にわたり、固定価格で外部委託されています。

この投資は、過去5年の入居率98%超、2018年は同99.8%というトラックレコードが示す通り、極めて力強い需給ファンダメンタルズに裏打ちされています。

供給に関しては、競合する供給をANUが行う事に対するプロテクションが契約に組み込まれています。具体的には、入居率と需要テストによるしきい値を適用することで、長期に渡る高い入居率をサポートするに十分な、供給を上回る需要の確保を目的としています。また、市場水準大きく下回る賃料に守られた学生寮は、競争が限定的となっています。

需要については、ANUにおけるキャンパス内学生寮では、約1,700床(現在の供給水準の26%相当)の超過需要が確認されています。実際に、ANUの学生500名が、6km離れたキャンベラ大学の学生寮に収容されています。

ANU特設学生寮のポートフォリオは、1桁台後半のキャッシュ・イールドを安定的に提供すると見込まれます。ANUキャンパス内の学生寮に対する堅調な需要や、供給面での強靭なプロテクションを背景に、同資産からのキャッシュフローは安定したものとなる見通しです。

 

マッカーサー風力発電所

風力タービン140機、総出力420メガワットを備えたマッカーサー風力発電所は、南半球における稼働中の風力発電所で最大の規模を誇り、180,000世帯相当のグリーン・エネルギーを豪州の家庭に供給しています。同プロジェクトは、CPI連動や価格/取引量/施設管理リスクへのエクスポージャーがない点から、PPPと似たストラクチャーとなっていあす。

オフテイク、運営、メンテナンス、アセット・マネジメント、接続の契約は全て、豪州最大の電力小売AGLと締結しています。これらの契約は2038年まで、期間終了後の延長オプションがついています。

AGLとのオフテイク契約は、価格と取引量が固定で、残存期間は約19年です。同契約では、風力発電所における一般的な運営リスクである電力市場価格リスク、発電量リスク、再生可能エネルギー規制変更リスク、アベイラビリティ・リスク、送電接続混雑リスクがカバーされています。また、事業間の契約に基づく発電事業において、マッカーサー風力発電所はAGLに対して25年間固定の運営・維持費用を支払っており、運営リスクは限定的となっています。

契約のカウンターパーティであるAGLは、総設備容量10.6ギガワットと豪州最大の発電ポートフォリオを有するASX上場最大の再生可能エネルギー投資家です。AGLのムーディーズ格付けはBaa2(見通し安定)、S&Pは2006年の評価開始以降、BBB(又は同等)の信用格付けを維持しています。

マッカーサー風力発電所からは、1桁台後半の安定したキャッシュ・イールドが期待できます。SAスクールズと同様に、同発電所の収益は、発電量や電力価格に関係のないアベイラビリティ・ベースであることから、確実性と安定性に優れていると言えます。

 

まとめ

低金利環境が世界的に継続する中で注目集まるインフラ投資。今回はこれらのケーススタディを通じて、インカム獲得の観点から、インフラ投資が魅力的な理由の背景をご紹介しました。

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