経済&マーケット

2019年の振り返りと2020年の見通し

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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2019年は、成長の減速やリセッション懸念の高まり、米国による貿易戦争の拡大に翻弄されたものの、金融緩和を受けて投資リターンは堅調となり、債券利回りが低下、非上場資産に対する需要は高水準が維持されました。

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2020年も、金融緩和政策が継続し、世界成長が加速する見通しです。豪州準備銀行(RBA)は更なる利下げを通じて金利を0.25%まで引き下げると見込まれており、その後に量的緩和に乗り出す見通しです。

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この様な環境下において、株式市場のリターンはまずまずとなるものの、アップサイドは限定的でボラティリティが高まる展開となるでしょう。債券利回りも上昇に回帰する可能性が高く、分散型ポートフォリオからのリターンは良好とはいえ控えめなものとなるでしょう。

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注目点は:貿易戦争、イラン情勢の緊迫、米国大統領選挙、世界成長、中国成長、そして豪州における財政/金融刺激策です。

2019年:成長減速も、リターンは向上

2018年のクリスマスは多くの投資家を落胆させました。9月に高値を付けた米国株はクリスマスイブに急落し、リターン不調となった一年を締めくくるとともに、2019年への不安をあおる結果となりました。しかし、この懸念を払拭する形で、2019年は投資家にとって良い一年となりました。実際のところ、リセッション懸念や高債務水準、格差、ポピュリスト・リーダーの台頭といった流れを受けて、この結果に驚く投資家も一部存在することでしょう。とはいえ、市場は大体、市場が幅広くが落胆しているときに底入れし、その後不安の壁を上るといった様に動くものです。次に挙げるのは、2019年における主なマイナス要因です:

  • 貿易戦争と米中摩擦の悪化:休戦や協議は幾度となく決裂しており、年末の合意前に追加関税の実施という結果を招いています。
  • 中東情勢の定期的な緊迫化:しかし長引く世界的な影響は出ておらず、再々の延期となっているブレグジットも、合意なきEU離脱は避けられた模様です。
  • 中国経済が6%成長へと減速:これは主に、以前の信用収縮を反映した結果であるものの、貿易戦争の影響も受けています。
  • 世界経済の減速:貿易摩擦による投資後退と在庫低下、自動車の排出ガス規制の厳格化が製造業と収益の重石となっています。
  • イールドカーブの逆転受けたリセッション懸念:成長減速をリセッション突入とする見方が台頭しました。

とはいえ、全てが悪いニュースだった訳ではありません。成長減速と低インフレを受けて各国の中央銀行が緩和を開始、米国連邦準備制度理事会(FRB)は3回の利下げを実施し、欧州中央銀行(ECB)は量的緩和を再開しました。この点は、金融引き締めが行われた2018年と大きく異なるポイントです。

豪州経済もその勢いを失っています。住宅建設が下向き、消費支出や設備投資も軟調となったうえ、干ばつの影響が相まって、その成長スピードは2%以下へと減速しました。これを受けて、失業率と不完全雇用が上昇する格好となり、賃金成長も減速、インフレは目標を下回る水準で推移しています。この結果、RBAは政策変更を余儀なくされ、6月以来3回の利下げを実施しており、量的緩和の検討に入っています。豪州におけるサプライズは大きく二つあり、与党・保守連合(自由党と国民党)が総選挙で再選を果たしたことで政策が維持された点と、年央以降における住宅市場の回復です。

悪いニュースが多かったものの、金融緩和と成長加速見通し、安値からのスタートとなった点から、2019年のリターンは力強いものとなりました。

主要資産クラスの投資リターン
  • 2018年の株安から回復を見せたグローバル株式は、度重なる貿易摩擦の影響を受けたにもかかわらず力強い伸びを記録しました。債券利回りが低下したことで株価が割安となり、金融情勢が緩和しました。
  • 新興株式市場も良好なパフォーマンスを記録しましたが、貿易と製造の動向へのエクスポージャーが高い点や米ドル高、一部の国における政治問題を背景に、もたつきが見られました。
  • 世界的な金融緩和と、債券利回り低下が金利敏感セクターをサポートする格好で、豪州株が2007年の過去最高を更新しました。
  • インフレや経済成長の減速、中央銀行による利下げ、量的緩和の再開を受けて利回りが低下したことから、国債は良好なリターンとなりました。
  • 債券利回りの低下と金融緩和を背景に、REITも堅調なパフォーマンスを記録しました。
  • 投資家による好イールド追求の動きから、実物商業用不動産と非上場インフラも引き続き良好となりました。一方で、豪州小売セクターでは調整が入っています。
  • 商品価格は、原油や鉄鉱石の伸びとともに上昇となりましたが、金属は下落しています。
  • 年央に向けて下落を続けた豪州住宅価格ですが、与党保守連合(自由党・国民党)が連邦総選挙で勝利を収めたことで、ネガティブ・ギアリング制度やキャピタル・ゲイン税控除制度の縮小といったリスクが排除されたことや、RBAによる利下げ、豪州健全性規制庁(APRA)が返済能力を評価する際に最低7%の金利を想定する規制の緩和などを受けて、その後回復を見せています。
  • 過去最低水準で維持されている豪州の金利政策を反映し、キャッシュと定期預金からのリターンは低くなっています。
  • 利下げと米ドル高を背景に、豪ドルは若干の下落を記録しました。
  • 多くの資産クラスが力強い伸びを見せたことからも、バランス型のスーパーアニュエーション・ファンドも堅調なリターンとなった模様です。

2020年の見通し:成長の加速、良好なリターンが維持

世界減速の様相は、2012年や2015~2016年あたりの小幅減速と似ています。景気動向を示す指標は勢いを失っているものの、世界金融危機(GFC)時の水準からはかけ離れています。

グローバル製造業PMIと中央銀行の政策方針

主にトランプ米政権下で激化する貿易戦争を理由に景気減速が予想以上に長期化しているとはいえ、大きな外的ショックさえなければ、世界的なリセッション入りの可能性は低いといえます。高インフレ、債務の急速な増加、過剰投資といったリセッション入りを警告するいつもの予兆は、米国でも世界でも、確認されていません。世界的な金融情勢は2018年にタイト化しているものの緊迫の状況からは程遠く、イールドが逆転したとはいえ、その幅は小さく、すぐに解消されています。そして、世界各国の中央銀行の多くが利下げに踏み切ったことから、金融情勢は再び極めて緩和的な状況となっています。次は、2020年において主要な世界的なテーマとなるでしょう:

  • 貿易戦争が一時休戦も、地政学リスクは高い状況が継続する。貿易関連リスクは高いままとなる見通しとはいえ、米国のリセッション入りや失業率の上昇があっては、トランプ米大統領の再選が困難となるため、この米国経済へのリスクを低減するためにも、同氏のスタンスは2020年を通じて和らぐであろうと予想され、これは米中貿易を巡る第一段階の合意からも確認できます。ハードブレグジットの可能性は低くなったといえますが、若干のリスクが残っています。とはいえ、ポピュリズムの台頭や米中摩擦の継続、イラン情勢の緊迫化を受けて、地政学リスクは高いままとなるでしょう。中でも、極左派が民主党候補に選出されるとなれば、米国大統領選挙に注目が集まるでしょう。
  • 世界成長は安定化し、上向き始める。グローバル景気指数PMIはここ数か月で上昇しており、金融緩和が効果を発揮している事を示唆しています。平均した世界経済の伸びは、2019年の3%程度から、2020年には3.3%程度となる見通しです。この水準は、世界的に相応な利益の伸びを支えるに十分であると考えられます。
  • 低インフレと低金利環境が継続する。経済成長が回復するとはいえ、力強さに欠けることから、余剰能力が残る見通しです。ということは、インフレ圧力も弱い状況が続くことになります。これは、世界的な金融緩和の継続を示唆しており、FRBが4度目の利下げに踏み切るリスクも存在しています。
  • 米ドルがピークを迎え、下げに転じる。ここ2年間の様に、世界経済の減速や不透明感が高まる局面において、米ドルは上昇する傾向にあります。これは、製造業や素材といったシクリカルなセクターに対する米経済のエクスポージャーが低いためです。2020年は、景気敏感セクターの回復をくけて、米ドル高の状況は一転する可能性が高いといえます。

豪州では、インフラ支出や輸出の増加が経済成長に寄与するものの、住宅建設セクターの落ち込みや消費支出の軟化、干ばつの影響を受けて、その成長ペースは2%程度と抑制されたものになるでしょう。この結果、失業率が上昇、賃金上昇も弱含み、基調インフレ率は2%を下回る可能性があります。豪州経済は完全雇用やインフレ目標達成には程遠く、RBAは3月までに政策金利を0.25%へと引き下げ、5月の2020/21年度連邦予算発表に大規模な財政刺激策が盛り込まれないとすれば、年央までに量的緩和に踏み出すと予想されます。住宅建設の底打ち、刺激策効果の浸透、世界経済成長の回復が寄与する格好で、年後半には豪州経済の成長が加速する見通しです。

投資家への影響

グローバル経済の回復と金融緩和の継続を受けて、2020年も相応の投資リターンが見込めるでしょう。しかし、バリュエーションが高いポイントで1年をスタートする点や地政学リスクを背景としたボラティリティの影響などを受けて、2019年の様な2桁の伸びには届かないとみられます。

  • グローバル株式のリターンは、景気回復と金融緩和が寄与する格好で、9.5%程度となるでしょう。
  • 米国以外そして新興国のシクリカルな株式市場は、米ドルが下げに転じ、貿易摩擦が予想通りに後退した場合には特に、アウトパフォームが見込まれます。
  • 豪州株はまずまずの結果となりますが、経済と収益の伸びが力強さに欠けることから、リターンは9%程度にとどまるでしょう。
  • 低いポイントからのスタートとなるイールドは一年を通して若干の上昇にとどまるとみられ、債券リターンは低くなるとみられます。
  • 実物商業用不動産と非上場インフラは、イールド追求の動きから引き続き恩恵を受けることになるでしょう。豪州小売不動産の価格下落の影響が尾を引きそうです。
  • 全国主要都市の住宅価格は、繰延需要、利下げ、FOMO(取り残される不安)を背景に、2020年初期まで堅調な伸びを続ける見通しです。しかし、アフォーダビリティに乏しく、経済は軟調、銀行貸出基準は未だ厳格であることからも、その上昇ペースは遅く、2020年を通じて最大10%程度となる見通しです。
  • キャッシュと定期預金からのリターンは、極めて低いものとなるでしょう。
  • RBAによる追加緩和を受けて、豪ドルは0.65米ドル近辺まで下落した後、世界経済の回復とともに若干回復するとみられ、2020年年初からほぼ横ばいの状態で1年を終えると見込まれます。

注目すべきポイント

2020年において注目すべきポイントは、次の通りです:

  • 米国貿易戦争:米国大統領選挙を控え、貿易摩擦は何らかの落ち着きを見せると予想されていますが、挑発せずにはいられないトランプ大統領のことですから、何が起きるかわかりません。
  • 米国とイランの対立激化:今後さらにエスカレートし、原油供給に影響が及ぶ可能性があります。
  • 米国の政治:下院がトランプ氏の弾劾決議案を可決しましたが、上院が同氏を大統領から解任する可能性は低いと見られています。とはいえ、この問題はボラティリティを引き起こす要因となりかねません。また、(可能性は低いものの)極左派が民主党候補に選出された場合も同じです。
  • ハードブレグジットは回避された模様ですが、1年を通じて英国・EU間の自由貿易協定の交渉に注目が集まるでしょう。
  • 世界経済指標:上記の図表で示したPMIは上昇を続ける必要があります。
  • 中国経済:世界経済にとって、中国の減速は引き続き主要な懸念材料です。
  • 豪州における財政/金融刺激策:大規模な財政刺激策の導入があれば、RBAによる追加利下げや量的緩和が回避される可能性があります。
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