サステイナビリティを念頭に置くことで不動産投資リターンの最大化を図る事が可能だという事、そして持続可能性への取り組みを図る指標の一部では、豪州不動産市場がアウトパフォームしている事を皆さんはご存じですか?
グローバル不動産サステイナビリティ・ベンチマーク(GRESB)から9月に発表されたデータからは、グローバル不動産セクターにおけるサステイナビリティの取り組みにおいて、豪州が世界をリードしている事が示されています。豪州不動産企業は26カテゴリー中9カテゴリーでトップ1、オセアニア地域の平均スコアは81%と、グローバル平均の72%を大きく上回る水準です2。このオセアニア地域のGRESB結果は、主に豪州とニュージーランドによるもので、ここ9年の間、力強いアウトパフォーマンスを達成し続けています3。
この安定した高パフォーマンスは、セクター内に好循環を生み出しています。顧客やグリーン認証を重要視する投資家パートナーの獲得を目指す企業らは、競合を意識して、その取り組みを強化しています。
豪州不動産のオーナーやマネージャーは、再生エネルギーやエネルギー効率、そしてカーボンニュートラル(達成目標は2030年頃までが一般的)分野における野心的な目標を掲げています。実際のところ、これらの目標達成に向けて、企業レベルでのアプローチやポートフォリオ物件における取り組みなど、複数のイニシアチブが実施されています。
企業の取締役会も気候行動に対して前向きに
豪州不動産セクターでは、事業における気候変動へのエクスポージャーをリスク分析するという企業レベルの取り組みが当たり前となっています。現在豪州東部で広まっている干ばつと森林火災は、この明らかな例です。これ以外にも、熱波や激しい嵐、海面上昇なども、資産価値に多大な影響を及ぼす気候リスクとして検討されなければなりません。これらのエクスポージャーのリスク分析は既に、物件取得における評価に際して活用が始まっており、今後はバリュエーション評価への組み入れが広まっていく見通しです。
経営陣は、ガバナンス慣習と持続可能性のアラインメント強化を図っており、環境やサステイナビリティ課題の取り組みを管理する担当者やシステムの開発、取引時デュー・デリジェンスにおけるESGのスクリーニング、持続可能性に関するパフォーマンス開示、そのパフォーマンス評価ツールや第三者認証システムの活用を通じて、開示データの信頼性の確保などに取り組んでいます。また、オーナーとテナントが協働し、ビル全体でサステイナビリティに取り組む「グリーンリース」が普及しています。
金融面でも持続可能性を念頭においたイノベーションが進んでおり、グリーンボンドを通じてサステイナビリティ評価の高いプロジェクトの資金を調達したり、インパクト投資家を対象に、新建材CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー、直交集成板)など業界を大きく変えるような新技術やソリューション開発を支援するファンドを形成するなど、発展がみられています。
スカイラインの緑化
豪州の不動産セクターでは、グリーン設計革命が進行中です。既存物件の環境性能を高める改装や環境コンセプトを中核に置いた新規プロジェクトの開発が進んでいます。
ソーラーパネルなど再生可能エネルギー設備を設置した商業用施設の数は、ここ3年間で4倍に増加しています4。住宅とは対照的に、太陽が降り注ぐ昼間に電力需要のピークを迎える商業用物件は、ソーラーパネル設置にとても適した建物です。中でも、大規模な屋根スペースを有し、ほぼ無休で営業するショッピングセンターは最適です。
多くの企業は、物件敷地内でピーク時電力需要を管理すべく、イニシアチブの開発に着手しています。電力消費量が多いプロセスを時間外に実施したり、電力需要ピーク時における冷却/暖房システムの制御プロセスの開発などが行われています。
低排出の交通アクセスを可能とする設計デザインも、ビル外の排出削減に寄与します。オフィスビルでは、テナントスタッフに自転車や徒歩通勤を推奨する上で、ランナーやサイクリスト向けの「エンドオブトリップ」施設(シャワーや更衣室、ロッカーなどを備えた施設)の有無が重要となってきます。また、商業用不動産やレジデンシャル物件におけるEV充電スタンドの提供も、EV普及に寄与する重要な取り組みです。
廃棄物の処理、在来植物や人や地球・環境に優しいデザインの採用を通じた生物多様性の推進など、物件のオーナー、マネジメント、そしてディベロッパーがイニシアチブを取り、時間の経過とともに環境にプラスの影響をもたらす取り組みは数多く存在しています。しかしながら、CO2排出大幅削減の可能性を秘めているにもかかわらず、まだ見過される事が多い要因が一つあります。それは、建築材のカーボンフットプリントです。これは、リサイクル材木や最新のハイブリッド素材など、より低排出な素材の利用を通じて取り組みむことができます。
ビルの運営管理にかかるCO2排出は、運営効率の向上や再生可能エネルギー利用の拡大を通じて削減することができ、今後は建築資材に含まれたカーボンこそが、建築セクターにおける排出の大部分を占めるようになるでしょう。
キー・クオーター・タワー(QQT)は、既存ビルの核部分2/3を残して、再利用しています。既存ビルの構造を維持したことで、建設に伴うCO2排出は推定約6,100,000kgの削減を実現すると同時に、プロジェクト期間全体で5%の排出削減とビル運営管理2年分相当のCO2削減を達成しています。また、この画期的な建設手法の活用によって、完工までの期間が13か月短縮されます5。
モメンタムの維持
サステイナブル不動産で世界をリードする豪州の取り組みは、実に意味がある行動です。(地球温暖化ガスの削減とそれに必要な費用の関係を示した)地球温暖化ガスの限界削減費用曲線からは、最も費用対効果に優れた気候変動対策のオポチュニティの数多く秘めているのは世界そして豪州の建築セクターであり、豪州で最も費用対効果の高い排出削減方法は、商業用不動産の改装を通じたエネルギー効率向上であることが示されています6。
CO2排出削減に向けた意欲的な取り組みがまだまだ欠けている今、優良なガバナンスとは、地球温暖化リスクへのエクスポージャーを持つ企業に対して、可能な限り自らアクションを起こし、リスク低減を追求することです。この観点から、確かな実績を誇り、他セクターの模範として未来を担うのが、豪州不動産です。
1 GRESB(2019年)、不動産セクター・リーダー
2 GRESB(2019年)、2019年結果:サステイナブル・リアル・アセット
3 豪州不動産協会(2019年)、Nine years at the top of the GRESB table、メディア・リリース、2019年9月
4 Williams S.(2019年)、Five-fold growth in solar panels on commercial buildings、コマーシャル・リアル・エステート2019年4月
5 Williams S.(2019年)、AMP’s new Quay Quarter Tower to be a building of ‘so many firsts’、コマーシャル・リアル・エステート2019年4月
6 クライメートワークス・オーストラリア(2010年)、Low Carbon Growth Plan for Australia、2010年3月
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