コミュニケーション

ウィークリー経済 2018年10月22日

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

先週の主な話題

先週のグローバル株式市場は、売られ過ぎの水準から週初に反発しましたが、米国での金利上昇、米中間の貿易摩擦、ハイテク株、イタリアの財政赤字に対する懸念が継続したうえ、サウジアラビアでの記者失踪に端を発した緊張などを背景に、地域によって度合いは異なるものの、再度売られる展開となりました。その結果、ユーロ圏株式市場は0.3%、豪州株式市場は0.7%上昇した一方、米国株式市場は横ばい、日本株式市場は0.7%、中国株式市場は1.1%下落しました。債券利回りは米国で小幅に上昇したものの、他の市場では横ばいか低下しました。原油や金属価格は下落した一方、金や鉄鉱石価格は上昇しました。豪ドルに関しては、米ドルが上昇したにもかかわらず、前週の水準からほとんど変化はありませんでした。

ブルマーケット(強気相場)は、悪材料が噴出した際に投資家が保有するポジションを削減するため、急落により時折中断が起きますが、比較的安定した上昇が特徴です。当社は、最近の下げが価格調整によるものとの見解を変えていません。しかし、米国の金利上昇、貿易、原油価格などにまつわる一連の懸念材料を考えると、相場が底入れしたと結論づけるには当然ながら時期尚早です。

米連邦準備制度理事会(FRB)のメンバーがドットプロット(金利予想分布図)で示した通り、直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨から、FRBは今後2年間で政策金利であるフェデラル・ファンド・レートを徐々に引き上げ、予想する中央値は3.4%であることが確認されました。これは、「中立」と見なされる値(すなわち約3%)をやや上回ります。2年間かけて2.85%へ上昇させるという市場の期待は、ハト派過ぎるとの見方に変わりありません。これは、債券利回りに、まだ上昇余地があることを意味します。しかし、2016年に利回りの底打ちを確認して以来、これまで目撃してきた現象と同様に、今後の債券利回りの上昇も断続的に起きると予想されます。

出所:FRB、ブルームバーグ、AMPキャピタル

米財務省は、中国を為替操作国としての認定を見送りました。また、トランプ大統領と習国家主席が、11月29日に開催されるG20サミットの場で会談することが決まりました。しかし、これは、貿易紛争が間もなく緩和されることを意味するものではありません。為替についての決定は予想されたものです。というのも、人民元は、「操作されている」と認定するために必要となる、米財務省の基準全てを満たしていないからです。とはいえ、米財務省の為替政策報告書は、中国や「非市場メカニズムへの依存度の高まり」に批判的であったので、アメリカは来年、為替操作国として中国を名指しする可能性が依然として残っています。トランプ大統領と習国家主席の会談はポジティブなニュースです。しかし、二人の間の隔たりは大きく、当社の基本的なシナリオとして、対立が一段と激化する可能性が高いとの見解を維持します。

記者の殺害に端を発した米国とサウジアラビア間の緊張で、新たなリスクが生じています。両国の関係は、改善する前に、急速に一段と悪化する可能性があります。しかし、原油価格への脅威を考慮すれば、最終的にトランプ大統領とサウジアラビアが、両国間の貿易関係を犠牲にするとは思えません。また、サウジアラビアが米国から受けている対イラン支援に悪影響を及ぼすほどの報復措置を発動することには懐疑的です。

ここで全く異なる話題に触れます。「ギグ・エコノミー」といった従来とは全く異なる経済は、想像上のものに過ぎないのでしょうか。この言葉はクールな響きを持ち、賃金の低い伸びなどの現象を説明するために頻繁に使われています。しかし、それが本当に存在するのかは疑問です。先週、豪州中央銀行(RBA)のアレックス・ヒース氏は、臨時雇用の労働者(病気休暇中や有給休暇中の労働者を除く)は1990年代から労働力の約20%を占めており、独立請負業者のシェアは過去10年間で減少したことを指摘しました。米国では、全雇用者数に占める自営業者のシェアは過去70年間で14%から6%に低下し、30年前との比較で労働者は同じ職場でより長く勤務する傾向が見られます。従って、ギグ・エコノミーの証拠はそれほど多くはありません。

世界経済指標の動向

米国で発表された経済指標は、大半が強い内容となりました。住宅着工件数はハリケーン・フローレンスの影響で減少した一方、NHBA住宅市場指数は反発しました。9月の小売売上高は市場予想を下回ったものの、8月のJOLT求人件数は過去最高を更新し、力強い雇用動向が示唆する現在の堅調な労働市場は、消費支出を下支えすると見られます。9月の鉱工業生産も着実に上昇し、10月の地区連銀製造業景気指数からも引き続き強さが示されました。9月の景気先行指数も依然として力強い伸びとなり、新規失業保険申請件数も極めて低い水準にとどまりました。一方、7-9月期の決算発表は好調なスタートを切り、これまでのところ87%が利益で、また65%が売上高で市場予想を上回っています。S&P500株価指数採用企業で決算を発表したのは85社にすぎませんが、増益率は市場予想の前年同期比+21%を上回り、+24%程度となる模様です。

欧州の政治動向に関しては、イタリアの予算案の詳細は不安視されたほど悪くなく、欧州委員会と全速で衝突を起こすリスクは低下しました。また、キリスト教社会同盟(CSU)のバイエルン州での敗北は、懸念されていたほどの事態には至らず、メルケル首相に対する圧力はやや軽減されました。このように、イタリア、ドイツともに、ユーロ圏で大惨事を引き起こすような事態には至っていません。

アイルランド国境の問題が障害として残り、ブレグジット(英国の欧州連合(EU)離脱)に関する不透明感は払拭されていません。合意なきブレグジット(英国を景気後退に陥らせると考えられます)、新たな選挙、あるいは国民投票が再度実施されるリスクは重大です。しかし、何らかの形で、詳細な部分は解決を将来に先延ばしする策が、ぎりぎりのところで成立するというのが依然として最も可能性の高いシナリオです。このような解決策が、本当に必要になる前に成立することは、めったにありません!しかし、英国ポンドについて強気の姿勢になるには、まだ早過ぎると思われます。

中国の経済成長は鈍化し、7-9月期のGDP(国内総生産)成長率は前年同期比6.5%に減速したほか、月次データについては、鉱工業生産が弱かった一方で小売売上高や固定資産投資は市場予想を上回り、失業率も低下するなど、強弱まちまちでした。景気減速はシャドーバンキングに対する取り締まりや、関税にまつわる不透明感が反映されたと見られます。今回発表されたGDP成長率は、中国の経済成長が6.5%に減速するとの当社予想と合致した数値となっていますが、貿易面で抱える脅威を考慮すると、依然として下方リスクが存在し、さらなる景気刺激策が実施される可能性を示唆しています。一方、生産者物価指数(PPI)の上昇幅の縮小や、前年同月比+1.7%にとどまったコア消費者物価指数(CPI)の伸びから判断すると、今後の景気刺激策実施の障害となるものは見当たらないと思われます。

豪州経済指標の動向

豪州で発表された労働市場の指標は、またも混乱を招きかねないデータが含まれていましたが、全般的には良好な内容でした。9月の雇用統計は新規雇用者数が小幅な増加にとどまり、紛らわしい数値となりましたが、フルタイム雇用者数が引き続き順調に増加しており、また、失業率は5%に低下しました。失業率の急速な低下については、やや懐疑的になるべき十分な理由があります。統計のサンプルとなる対象者の入替えが要因となった可能性があり、月次の雇用データは変動の大きさで知られています。とはいえ、前年比で約2.3%増加している雇用は依然として力強く、雇用の先行指数は引き続き堅調で、失業率の低下トレンドを否定することは困難です。従って、RBAは正しい方向に進む雇用情勢に関し、当然のごとく満足することができるでしょう。ただし、豪州の雇用データに対して米国での動向を当てはめると、より力強い賃金の伸びを発生させるためには、失業率が現行の水準からかなり低下する必要があり、また、失業率と不完全雇用率の合計が豪州では13.3%であるのに対し、米国では7.5%にとどまっています。

出所:ABS、ブルームバーグ、AMPキャピタル

経済をより広範に見ると、豪州では相反するデータがまるで争うような状況を呈しており、インフラ投資ブーム、改善する企業の業況感、底打ちした鉱山関連の投資、低下する失業率に対して、ピークをつけた住宅建設、消費支出にまつわる不透明感、高い不完全雇用率、弱い賃金の伸びが存在します。その結果、好景気と呼べるようなブームも、経済の崩壊も発生する可能性は低く、抑制された成長が継続してRBAは少なくとも2020年まで政策金利を据え置くことが見込まれます。

今週の注目点

米国では7-9月期のGDPが発表され(金曜日)、成長率は前期比年率換算で+3.2%となり、4-6月期の+4.2%から減速が予想されます。4-6月期の高い成長率は、季節的に弱さの見られる1-3月期からの反動増が含まれており、7-9月期もハリケーン・フローレンスの影響が下押し要因となった可能性が考えられます。こ
のような状況を踏まえると、基調となる成長率は+3.5%近辺で推移していると見られます。他の経済指標に関しては、住宅価格指数は小幅な上昇となる一方、新築住宅販売件数はやや落ち込むと予想され(ともに水曜日)、また、10月の業況感を示す購買担当者景気指数(PMI)は堅調な数値が見込まれます(同じく水曜日)。足元の耐久財受注は増加となる反面、住宅販売保留指数は低下が予想されます(ともに木曜日)。7-9月の決算発表も増加します。

欧州中央銀行(ECB)は木曜日開催の理事会で金融政策に変更を加えることはないと予想されます。経済成長の失速、十分な伸びに達していないコア・インフレ率、世界的な不確実性に伴い、同行が最終的に量的緩和策を終了する決定を先送りし、利上げのタイミングはかなり先であるとの印象を与える可能性があります。当社の見解では、おそらく2020年まで利上げはないと判断しています。一方、水曜日発表の10月の製造業およびサービス部門のPMIは、54近辺のまずまずな水準にとどまると見られます。

豪州では、経済データの発表が乏しい週となり、水曜日発表の熟練労働者の求人数のみが主要な指標となります。ただし、ウェントワースの補欠選挙で自由党が敗北した場合は、政治面により関心が集まる可能性があります。とはいえ、保守系野党との連立により、過半数議席を維持することは依然として可能です。豪州では、経済データの発表が乏しい週となり、水曜日発表の熟練労働者の求人数のみが主要な指標となります。ただし、ウェントワースの補欠選挙で自由党が敗北した場合は、政治面により関心が集まる可能性があります。とはいえ、保守系野党との連立により、過半数議席を維持することは依然として可能です。

相場見通し

世界経済の成長が依然として堅調に推移し、企業の良好な業績の伸びを促し、また金融政策も依然として緩和的であることから、当社は株式市場の上昇トレンドが続くと考えます。ただし、貿易摩擦の脅威や、新興国市場の危機波及、米国中間選挙、イタリアの予算交渉を踏まえ、短期的にもう一段の調整局面を経験するリスクは依然大きいと見ています。豪州株式市場については、不動産価格の下落や選挙を巡る不透明感がリスクを高めています。

債券投資からのリターンは低水準にとどまる中、豪州債券は、グローバル債券をアウトパフォームすると見られます。

非上場の商業用不動産やインフラは、相対的に高い利回りを求める投資家からの需要が引き続き追い風になると考えられますが、投資家の熱は冷めつつあります。

豪州では、パースやダーウィンの不動産価格が底打ちし、ホバート、アデレード、キャンベラ、ブリスベンでは緩やかに上昇しているものの、シドニーやメルボルンでさらに15%ほどの下落が見込まれているため、全国主要都市の住宅価格は一段と鈍化すると見られます。

定期預金の金利は 2.2%近辺で推移しており、現金や銀行預金のリターンは引き続き冴えないものとなると思われます。

米国経済が豪州経済と比べて活況で、RBAキャッシュレートと米FF金利の差がさらにそのマイナス幅を広げると予想されており、また豪ドルは弊社の目標である1豪ドル0.70米ドルに近くまで既に下落していますが、さらに1豪ドル0.60米ドル台に突入する可能性もあると見ています。豪ドルのショート・ポジションは引き続きグローバル経済の変調に対する有効なヘッジとなります。

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