コミュニケーション

ウィークリー経済 2018年10月9日

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

先週の主な話題

先週のグローバル株式市場は、国債利回りが再度上昇に転じたことが主な要因となり、下落しました。米国株式は1%、ユーロ圏株式は1.8%、日本株式は1.4%、豪州株式は0.4%下落しました。金、原油、鉄鉱石価格は上昇したものの、銅価格は下落しました。米国の好調な経済指標やFRBが金利を引き上げるとの期待が高まったことから米ドルが上昇し、豪ドルは0.71米ドルを下回りました。

債券利回りは再び上昇トレンドに戻り、今後の更なる上昇余地が見込まれます。この上昇を牽引したのは米国債券市場で、好調な米国経済指標、原油価格の上昇、そして最も重要な要因として、投資家がついにこれまでの見方を変え、「FFレートには更なる上昇余地があり、FRBが3%付近と見積もる中立金利を上回るだろう」と考えたことが背景となり、10年物米国債利回りは7年ぶりの最高値を記録しました。もちろんFRBは長年、中立金利を超える利上げもあると述べていましたが、市場はこれに懐疑的な見方を維持していました。しかし先週、パウエルFRB議長や通常ハト派であるシカゴ連銀のエバンス総裁を含む一部のFRB高官が、「FFレートは少なくとも中立金利まで上昇し、同レートを超える可能性が高い」との認識を強めました。FFレートが3.4%付近まで上昇すると示すドット・プロットと、この水準を大きく下回る市場期待とのギャップを考慮すると、市場がFFレートに関する見方を変化させるには時間を要すると予想されます。この見方の変化と同時に、投資家がインフレや成長期待に対して、ここ数年の抑制された水準ではなく、より正常化した水準を織り込むことで、米国やグローバルでの国債利回りに依然として上昇余地があることが示唆されます。金利の上昇は、ある時点において株式市場にとっては深刻な脅威となりますが、米国の金融政策は引き締めからは程遠く、欧州諸国や日本の中央銀行は金利の引上げ局面にある米国から大きく後れを取っているほか、依然として債券利回りは相対的に低水準で、米国およびグローバル経済はまだ好調を維持しており、これら全てのことによって企業業績が下支えを受ける点を考慮すると、脅威となるまでは依然として長い時間を要します。債券利回りが最低水準を付けた2016年以降から市場で確認されているように、利回りは一直線には上昇しません。

米国債券利回りの上昇を受けて、豪州債券利回りも若干上昇する可能性がありますが、豪州経済の停滞によりRBAは金利を据え置き、利下げの可能性もあることを考慮すると、債券利回りの上昇は引き続き停滞する可能性があります。しかし、グローバルで調達コストが上昇しているため(銀行は銀行預金以外の調達先から約35%の資金を調達)、米国やグローバルでの債券利回りの上昇によって住宅ローン金利が単独で上昇するリスクが拡大します。もちろんこれが豪州経済にとって問題となった場合、RBAが住宅ローン金利を下げるため、政策金利を引き下げる理由となります。

USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)と呼ばれる北米の新たな貿易協定は良いニュースですが、米中間の貿易間摩擦がすぐに解決するという意味ではありません。USMCAは米韓の貿易協定の改定や、米国とEUの貿易交渉に続いて実施され、現在日本はトランプ大統領が「反自由貿易主義者ではない」ことを確認していますが、トランプ大統領が望んでいることは単に、「米国にとっての公正な取引」です。しかしこれは、同盟国と貿易協定で和解し、より中国にフォーカスした協定を結ぶという、同大統領が望んでいることと一致しています。米中間の貿易摩擦に関しては、両国の主張は依然として大きく異なり、少なくとも中間選挙が終了するまではこの隔たりは続くと予想されます。このため直近発動された、中国からの輸入品2,000億米ドル相当に対する関税は来年25%に引き上げられる可能性があり、更に追加関税の規模が拡大する可能性があります。南シナ海における米国の駆逐艦と中国軍艦との異常接近や、ペンス副大統領による中国非難の演説は、米中間の貿易摩擦が他の分野にも拡大していることを強調しています。

イタリアの予算問題は、"イテグジット"への序章との懸念はあまりにも誇張されています。もし、ポピュリスト連立政権がユーロ離脱を眼中に置いているのであれば、財政赤字の国内総生産(GDP)比率を目標である2.4%よりもはるかに大きな数値目標を掲げていたでしょう。予算案を巡る欧州委員会(EC)とイタリアの対立は、時には市場の不安定性要因となる可能性が高いですが、今回のこの目標は大問題に至るほど深刻ではなく、フランスとドイツはイタリアのユーロ懐疑派を刺激することを回避し、その他の欧州諸国はイタリアを規律づけるために(イタリアの国債利回り上昇を介して)市場原理に委ねるとの見方を維持しています。また、2021年までに財政赤字をGDPの2%以下に削減することを目標に掲げているとの報道もなされており、イタリア政府は前述のリスクを認識しているようです。

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世界経済指標の動向

先週の米国の経済指標は、ISMや雇用データが強く、堅調に推移しました。9月の非農業部門雇用者数変化は前月比で13.4万人増と市場予想を下回ったものの、これはハリケーン・フローレンスによる影響の可能性が高く、また8月の結果については69,000人上方修正され27万人増と極めて好調で、失業率も過去48年間で最低の3.7%となりました。一方で、賃金成長は前年比で2.8%と、2.9%から低下し緩慢な状態が続いており、過去3回の景気後退期の直前に見られたような4%以上の成長からは程遠い状態です。とはいえ、穏やかな上昇トレンドは維持しており、これまでのFRBによる利上げと一致した動きとなっています。一方で、複数のFRB理事が、FF金利は「ニュートラル」水準に、つまり3%程度あるいはそれを上回る水準に上昇しなければならないだろうと繰り返し述べました。これは今後2年間の市場予想が僅か3回の利上げに留まるとの見通しがあまりにもハト派的であることを示しており、今後、市場期待が一段と調整され、債券利回りがさらに上昇することを意味しています。

出所:ブルームバーグ、AMPキャピタル

日本の9月の短観は、大企業では軟調に推移しましたが、全体としては底堅さを維持しました。

中国の9月の製造業PMIは、関税の影響が出始めたことを受けて伸びが鈍化しましたが、全体としては、政府の景気刺激策の効果により、堅調に推移していることが示されました。

豪州経済指標の動向

豪州の経済指標は強弱まちまちでした。8月の小売売上高は改善し、PMIは引き続き良好、貿易黒字も若干改善したものの、コアロジック住宅価格は下落を続けており、新築住宅販売は減少傾向にあり、住宅建設許可件数も住宅投資の減速とともに減少傾向にあります。また小売売上高の改善については、7月が横ばい圏内の動きであった影響であり、9月期の伸びは6月期以降の鈍化傾向にある点は注意が必要です。貿易統計も9月期のGDP成長に寄与しない予想通りの内容でした。

豪州の住宅価格は12カ月連続で下落しています。そして、銀行融資基準の厳格化、住宅供給の増加、住宅価格の低下予想に伴う住宅購入需要の鈍化、政権交代によるネガティブギアリングやキャピタルゲイン税控除の変更の可能性が投資家需要に与える影響などが相まって、シドニーやメルボルンでは今後更に下落する可能性が高まっています。当社では引き続き、これらの都市ではピークからの下落率が2020年までに約15%に達すると予想しており、去年からの下落を踏まえると、さらに10%程度の下落があると見ています。

住宅価格の下落は資産効果の低下をもたらし、緩慢な賃金の伸びや、11年ぶり低水準となる家計貯蓄率と相まって、小売売上高の伸びは今後1年にわたって鈍化するであろうことが示唆されます。

出所:コアロジック、AMPキャピタル

これらを背景に、今月もRBAが政策金利を据え置きにしたことは当然です。無論、RBAは世界的な景気回復の継続、トレンドを上回るGDP成長率、交易条件の改善、労働市場の改善を指し示しています。しかしながら、個人消費の先行き不透明感は依然として強く、不完全雇用は引き続き高水準で、干ばつは悪影響を及ぼすと見られ、シドニーとメルボルンでは住宅価格の下落が続き、銀行融資は厳しくなり、賃金の伸びとインフレは依然として緩慢な状態です。当社では、RBAが少なくとも2020年まで金利を据え置き、次回の政策変更については、住宅価格の下落リスクや個人消費への波及を踏まえ、利下げとなる可能性もあるとの見方を維持しています。

今週の注目点

米国では、水曜日に発表される9月の生産者物価指数と木曜日に発表される消費者物価指数などのインフレ関連データが注目されます。消費者物価指数は、全項目ベースでは前年同月比2.5%上昇まで低下するものの、コアベースでは前年同月比約2.2%上昇とFRBが目標とする個人消費支出(PCE)デフレーターでみたインフレ率と整合的な水準にとどまると見込まれます。9月期の決算発表も始まりますが、法人税減税と堅調な経済状況を背景に利益は前年比20%以上拡大すると予想されています。関税や賃金の影響を巡る企業のコメントが注目されます。

中国の9月の経済指標は信用データの発表からスタートしますが、最近の金融緩和がどの程度経済指標に反映されているかという点が注目されます。

豪州では、NAB企業調査と住宅ローンの最新情報が発表されます。9月のNAB企業調査(火曜日)では景況感の堅調さが継続する一方、信頼感はさらに鈍化すると予想され、ウェストパック消費者信頼感(水曜日)は8月の下落以降若干の改善が予想されています。

相場見通し

世界経済の成長が依然として堅調に推移し、企業の良好な業績の伸びを促し、また金融政策も依然として緩和的であることから、当社は株式市場の上昇トレンドが続くと考えます。ただし、貿易摩擦の脅威や、新興国市場の危機波及、米国中間選挙、イタリアの予算交渉を踏まえ、来月あるいはそれ以上にわたり、調整するリスクは依然大きいと見ています。に市場が弱含む可能性も十分にあると考えています。豪州株式市場については、不動産価格の下落や選挙を巡る不透明感がリスクを高めています。

債券投資からのリターンは低水準にとどまる中、豪州債券は、グローバル債券をアウトパフォームすると見られます。

非上場の商業用不動産やインフラは、相対的に高い利回りを求める投資家からの需要が引き続き追い風になると考えられますが、投資家の熱は冷めつつあります。

豪州では、パースやダーウィンの不動産価格が底打ちし、ホバート、アデレード、キャンベラ、ブリスベンでは緩やかに上昇しているものの、シドニーやメルボルンでさらに10%ほどの下落が見込まれているため、全国主要都市の住宅価格は一段と鈍化すると見られます。

定期預金の金利は 2.2%近辺で推移しており、現金や銀行預金のリターンは引き続き冴えないものとなると思われます。

米国経済が豪州経済と比べて活況で、RBAキャッシュレートと米FF金利の差がさらにそのマイナス幅を広げると予想されることから、豪ドルは弊社の目標である1豪ドル0.70米ドルに近づいていますが、1豪ドル0.60米ドル台に突入する可能性もあると見ています。豪ドルのショート・ポジションは引き続きグローバル経済の変調(例えば貿易摩擦や新興国市場)に対する有効なヘッジとなります。

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