環境・社会・ガバナンス(ESG)

気候変動:投資家にとってのリスクとオポチュニティ

By AMPキャピタル

投資環境の変化

気候変動との戦いに勝算はある。なぜなら、クリーン・エネルギーを提供する緑の革命(グリーン・レボリューション)は産業革命を超える規模で、かつデジタル革命より早いスピードで起きているからだ。

アル・ゴア米国元大統領

機関投資家の間では、投資が気候変動に与える影響、そして気候変動による投資への影響に対する注目が高まっています。これは、環境だけでなく、企業収益の持続可能性の観点から、気候変動がもたらす影響の認識と懸念の広まりを表しています。この流れを受けて、重要な財務リスクが表面化するとともに、これらリスクを十分に理解しているアセット・マネージャーにとっては興味深い投資機会が提供されています。

 

気候変動が経済を変える

グローバル経済が気候変動に順応する上で必要な構造変革は莫大です。豪州だけを見ても、次世代にわたり世界の平均気温上昇を2度未満に抑えるためには、温室効果ガスの大幅な排出削減が必要とされています。この目標達成には、経済の至る箇所で根本的な変化が不可欠です。

低炭素経済への移行には、エネルギー効率の向上、化石燃料から低炭素電源への切り替え、道路輸送の電化、産業や農業における非エネルギー源の排出量削減が欠かせません。

投資家は、汚い産業やCO2排出量の多い発電への投資を慎重に検討すべきでしょう。その投資意思決定を通じて、気候変動へのプラス効果を与えるのか、マイナス効果を与えるのか、投資家には選択肢が与えられています。

多くの投資家は環境や社会に良い結果をもたらすことを望んでおり、気候変動はリスクだけでなく投資機会を提供しています。投資家とマネージャーは、気候変動による経済リスクと投資リスクを十分に理解する事が重要です。その第一歩は、収益への長期的な影響を考える際に、行動しない事=ゼロコストではない事を認識する事から始まります。

投資家における気候変動の重要性の高まり

気候変動そして環境や世界経済活動に与えるその影響について、投資家の理解は向上しています。分散投資家、特に大手の機関投資家にとって、これは重要なポイントです。なぜなら、これら「ユニバーサル・オーナー」の投資ポートフォリオは、気候変動を中心とした様々な環境リスクに晒されているからです。しかし、これら外部性を最小化し、リスクへのエクスポージャーを管理することで、プラスの効果を得る事が可能です。

高度な知識・経験を有する投資家は、気候変動を2段階に分けて考えています。まず第一に、投資先企業・資産・インフラ資産の事業活動が気候変動に与える影響を検討します。この結果、最低でもCO2排出規制の影響を考慮し、倫理上の理由から一部の投資を処分・除外とする場合があります。環境面で問題があると見られる有料道路を投資対象外としたり、採炭企業への投資を処分又は持分の一部を売却する等は、この一例です。

第二に、物理的リスク、公共政策の変更、テクノロジーのディスラプションを通して、気候変動が企業収益に与える影響を分析します。この一例として、一部の輸送手段に対する課税や禁止、保険企業においては異常気象による被害増加を受けた保険料の見直しによる収益への影響などが挙げられます。

気候変動から最も影響を受けるセクター

気候変動は、海面上昇、異常気象の増加、疾患リスクの高まりや地政学的な不安定さだけでなく、経済にも重大な影響を及ぼします。

気候変動政策からの影響を最も受けやすいのは、エネルギー・セクターとなるでしょう。先進工業国の多くにおいて、最も大量に温室効果ガスを排出しているのが、このエネルギー・セクターです。豪州の気候変動評議会が発表したデータによると、発電は2017年に豪州におけるCO2排出の33%を占めています1。また同発電セクターは、主要な排出セクターの中でも、排出削減の余地が最も大きいセクターでもあります。

豪州におけるセクター別CO2排出割合、2017年

出所:気候変動評議会(2018年)、https://www.climatecouncil.org.au/wp-content/uploads/2018/06/CC_MVSA0143-Briefing-Paper-Australias-Rising-Emissions_V8-FA_Low-Res_Single-Pages3.pdf

発電、炭鉱、石油やLNGなど、エネルギーの供給チェーンに属する事業モデルは、これら事業をサポートするビジネスと共に、変革を遂げるか、もしくは消滅することになるでしょう。これら既存事業からの収益は、長期的に持続不可能であると考えられることから、投資家にとって極めて大きなリスクです。

一方で、風力や特に太陽光発電など、排出ゼロのエネルギー事業を展開する企業には、パネル価格が大きく低下している点からも、多くのオポチュニティが存在します。公共政策もこれら事業者寄りの内容であることからも、経済的にも追い風が吹いている状況です。

ミクロレベルでは、テクノロジーの進化とコスト低下を受けて、一般家庭や小規模企業における太陽光発電の蓄電性能が向上しており、売電をも可能にしています。

運輸セクターもまた、先進国における主要なCO2排出セクターのひとつで、豪州では排出量の18%を占めています1。排出ゼロ経済への移行と共に、これまでのマイカー利用は大きく変化し、自動運転かつ電気自動車のカー・シェアリングが主流となるでしょう。

世界的な中流階級の拡大を受けて、航空機を利用した旅行は世界GDPを上回るスピードで今後幾年にわたり増加を続ける見通しです。航空機を利用した旅行は、温室効果ガス排出だけでなく、騒音や大気汚染の主要な要因であることからも、航空機メーカーや航空会社が生き残るためには、燃料効率に優れた空の旅を実現するための改革が鍵となると見込まれます。

エネルギーや運輸セクター程ではないものの、農業セクターにおける温室効果ガス排出も相当な量に達しています。これは、ニュージーランドなど農業セクターが占める割合が大きい国では、特に言えることです。食生活や規制の移行を背景とした農産品需要の変化は、これらの食品バリューチェーンに属する企業に大きく影響を与えることになります。

豪州を含む多くの国、特に一部の発展途上国にとって、経済の大きな部分を占めるのが観光セクターです。気候変動によって自然環境が破壊され、グレートバリアリーフなどの観光スポットや、海抜の低い太平洋の島々は危機に瀕することになります。また、海面上昇や異常気象が増加することで、ベネチアなどの世界遺産も被害を受けると見込まれます。

これら主要なセクターにおける影響は、為替の影響を通じて、経済全体に影響を及ぼします。例えば、豪州の石炭・LNG輸出収入が劇的に減少するとなれば、豪ドルも下落することとなり、インフレ要因となるでしょう。

投資家行動の変化要因

豪州は、一人当たりで見た屋上ソーラー・パネル設置数が世界トップの国です。この一般消費者の自己啓発向上を受けて、気候変動に良くも悪くも影響を与えている事業も大きく影響を受けています。

一般家庭向け電力システムの増加は、コスト低下と信頼性向上を反映するとともに、気候変動に対する消費者の懸念が重要な要因であることを示しています。さらには、国の政策もこのトレンドを促進する内容となっており、一部の州政府では、家庭におけるソーラーパネル設置に対して払戻金の増額を実施しています。

低炭素経済への移行においてより大きな役割を果たすのが、国の政策です。エネルギー・ミックスにおける化石燃料と再生可能エネルギーの割合は、企業や投資家の投資意思決定に大きな影響を及ぼします。

当たり前の事ですが、ファンドマネージャーは、持続可能性リスク調整後リターンの最大化が可能な投資へと資金を割り当てます。このことから、機関投資家は、化石燃料からの移行を支援する投資の更なる促進に向けた政策開発を、政府に対して推奨してきました。豪州における政策不透明感の継続は、投資家にとって引き続き課題となっています。

これと同様に、航空規制も、航空機の環境性能を決定するにあたり極めて影響力を持つと言えます。

気候変動に悪影響を及ぼす投資の正当化を求める世論が高まっており、投資家は厳しい目に晒されています。豪州の新規炭鉱プロジェクト開発の発表と共に、これらに資金提供する企業や関連企業に注目が集まったのも、この良い例です。貸し手企業にとっては、直接的な風評リスクが浮上しています。

従って、機関投資家は、投資先企業とのエンゲージメントにおいて頑強なアプローチを取る必要があります。なぜなら、気候変動政策に関するコミットメントを行う事は、結果の実現に向けた受託者責任を負う事になるからです。つまり、マネージャーは、スチュワードとしての長期責任と世間の期待の変化を考慮する必要があるのです。

1 気候変動評議会:Australia’s Rising Greenhouse Gas Emissions(2018年)

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