変化する消費者の期待とテクノロジーの進化を背景に、消費経済には構造的な変化が起きています。これは、古い事業モデルにディスラプション(破壊的イノベーション)をもたらしており、この変化を上手く取り入れる事ができる企業には、素晴らしいオポチュニティが提供されています。
長期に渡り、持続的に経済利益の成長を実現することが出来る企業を特定するためには、データと分析、マス・カスタマイゼーション、D2C(Direct to Consumer)という3つの主要な経済シフトを理解することが重要となります。
1. データと分析
顧客の属性や地域、いつ・どこで・何を買い、どの様に使い、いつ再購入するのか等、顧客に関する情報を提供するデータは、消費ブランドにとってパワフルなツールです。
この情報優位性から収益を生み出すべく、大手ブランドは事業モデルの見直しに取り組んでおり、消費経済が大きく変化しています。
スポーツウエア企業がフィットネス熱心な消費者向けに無料アプリを配布し、購入商品以上の価値を提供するなどは、その取り組みの一例です。企業にとっても、より詳細な個人データの獲得を通じて優れたカスタマージャーニーの開発が可能となるため、最終的にはブランドの利益向上が可能となります。
これらブランドの取り組みは、従来の実店舗におけるショッピング体験を大きく変えています。店舗数を絞ってイノベーションを全面に打ち出した大型旗艦店に注力し、顧客の感覚を刺激するような体験を提供する密接かつダイナミックな環境を創ることで、ブランドと消費者との関係強化が図られています。
これら、ブランドの「聖堂」である大型旗艦店は、ネットショッピングと補完関係にあります。アプリを活用することで、サプライチェーン情報の提供、実店舗の在庫やオンライン購入商品のピックアップ時間の確認、商品のカスタマイズ、店舗スタッフを介さないセルフ会計など、実店舗環境をシームレスに統合することが可能です。
2. マス・カスタマイゼーション
ヘンリー・フォードは、自動車製造に大量生産の工程を取り入れる事で産業生産にディスラプションをもたらしました。その後には、産業効率、そして商品や小売チェーンの大量規格化が飛躍的な進歩を遂げています。
しかし、今日の消費者が選好するのは大量生産ではなくパーソナライゼーションです。この流れを受けて、製造業は、従来のプロセス主導型から、テクノロジーを活用した機動的でより柔軟なものへと変化しています。自動車企業を例にとると、仕様やアクセサリー、カラーなど、標準モデルに様々なカスタマイズを提供しています。
一方で、このシフトに悪戦苦闘している企業も存在します。消費財メーカーは製造を外注している企業が多く、特に影響を受けやすい状況にあると言えます。なぜなら、これら外注先は、より革新的で柔軟な新しいブランドに製品ソリューションを提供することが可能だからです。
3. D2C(Direct to Consumer)の事業モデル
Eコマースの台頭により、ブランドによる顧客とのダイレクトな関係構築が始まっています。ホールセールや小売など、バリューチェーンの中間流通業者を中抜きにするこの流れは、ブランドにとってマージン改善のチャンスです。
この流れは、少量生産のインテリアやクラフトビール製造等、より規模の小さい事業にも、市場との直接的なコネクションを確立する機会を提供しています。これまでは、店舗の陳列スペースを支配する力を持った大手ブランドが市場を支配していましたが、インターネット上の陳列スペースは無限に存在するからです。
この直接的な関係によって、データやテクノロジーを上手く活用することで、在庫管理の改善や新商品開発が可能となります。今や幅広く普及しているソーシャルメディアも、エンゲージメントを容易にし、エンドースメント(推薦)の価値を高めるものであり、このD2Cモデルを支援するトレンドです。
勝ち組と負け組
これら経済における構造上のシフトは、イノベーションを通じて消費者期待の変化を利益に変えるチャンスです。有名ブランドの一部が、この変化を歓迎し、更なる進化を遂げようとしている一方で、ディスラプターの新規参入も確認されています。
とはいえ、消費者は誰とでも情報を共有する訳ではありません。テクノロジーだけでなく、そのITプラットフォームやブランド、企業に対する信頼も同じように重要となります。信頼とは、多くの点で、イノベーションの開発・検証を通じてロイヤリティの高い顧客の理解向上を可能とするソーシャル・ライセンスだと言えます。また消費者は、情報共有の対価として、商品購入以上の継続的な付加価値を求めており、セール告知や消費者の選好を無視したエンゲージメントでは満足しないのです。
勝ち組となるのは、構造上の変化に順応し、進化を続ける企業となるでしょう。
共同寄稿:コートニー・ロス
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重要事項
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