豪州の住宅価格は13か月連続で下落となり、都市部平均価格はピークから4%下げています。堅調だったシドニーやメルボルンがここ1年の下落を先導する形となり、ブリスベンやアデレードでは若干の価格上昇が確認されたものの、鉱業ブームの終焉を受けて下落基調に入ったパースとダーウィンでも下落が継続しています。
住宅価格下落の背景には幾つかの要因が存在します:
- シドニーとメルボルンでは供給が増加
- 銀行貸出の引き締めは目新しい話ではありませんが、王立委員会(Royal Commission)による金融サービス業界の調査・審問を受けて更に厳格化
- 海外マネー流入が減少、中国からの投資は2015年以降で70%減少
- アフォーダビリティの問題
もう一つの要因
シドニーとメルボルンを中心に確認され始めている要因がもう一つあり、今後数年間において下落幅に大きく影響を及ぼす可能性があります。それは、政権交代の可能性です。
ニュースポールの世論調査によると、野党労働党の支持率は55%と、与党保守連合の同45%をリードしています。
野党労働党は、既存投資を対象外とし、ネガティブ・ギアリングを新築住宅に制限する制度変更を提案しています。
また、保有期間が12ヶ月以上の資産については現行50%であるキャピタル・ゲイン税についても、新規取得資産に対しては25%とする政策を掲げています。
野党労働党が総選挙に勝利した場合、実際にこれらの変更がいつ行われるかは未だ発表されていません。
野党労働党の政策の狙いは、住宅投資需要を抑制し、より手が届きやすくすることで、マイホーム購入を促進することです。
住宅価格への影響
投資家にとっては、これら変更案を受けて、税制優遇の魅力が低下することになります。投資家が不動産市場から資金を引き揚げるとなれば、需要が失われる事となり、住宅価格は継続的にマイナスの影響を受けることになります。
現行制度が適用される現時点で住宅投資を検討している投資家も、数年後の売却時には制度変更の影響により需要が低迷し、キャピタルの伸びが抑制される可能性があります。
住宅市場、中でも投資需要の50%を占めるシドニーやメルボルンでは、この変更案を受けた影響が確認され始めている模様です。
一方で、野党労働党が掲げる政策が住宅のアフォーダビリティ向上に寄与する点はメリットでもあります。しかし、このアフォーダビリティ向上は、今後2年、または3年以上に渡って住宅価格の下落に拍車をかける恰好で実現する可能性もあります。
注視すべき住宅市場
これら野党労働党の政策変更から最も大きな打撃を受けるのは、シドニーとなりそうです。メルボルンはシドニー程ではなく、それ以外の州では更に影響が抑制される見通しです。
そして、2019年総選挙を目の前に控えた今、住宅市場ではシドニーやメルボルンを中心に不透明感が高まっています。
この状況は、住宅価格は2020年にかけて10%近く、シドニーやメルボルンに代表される主要都市では20%近く大幅下落するという当社の見通しをサポートするものです。
ポートフォリオにおいて住宅不動産投資が果たす役割はさておき、足元における住宅への投資には慎重なアプローチが得策と言えるでしょう。
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