経済&マーケット

資産運用(パーソナル・ファイナンス)のための13のヒント

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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資産運用(パーソナル・ファイナンス)は簡単なことではありません。今回は、あなたの資産運用に役に立つかもしれない13のヒントを挙げてみようと思います。金融サービスについてもいろいろ見比べること、借り入れをしすぎないこと、金利は上下するものだと心に留めること、不測の事態に備えること、クレジットカードは便利だが注意が必要なこと、長期債務として住宅ローン(できるならば)を活用すること、貯蓄や投資を早めにスタートすること、資産価格の変動に一喜一憂しないこと、市場で起きることを長期的な視野で見ること、自分のリスク許容度を把握すること、「ママ・アンド・ダッド銀行」を最大限に活用すること、他の人たちが言うことに囚われないこと、借金や投資関してフリーランチはないことを肝に銘じること。

はじめに

数カ月前、豪州準備銀行(RBA)のフィリップ・ロウ総裁は、住宅ローンの借り入れに際して留意すべき4つの常識について言及しました。私はこの内容が理にかなっていると思ったので、ツイッターで要約したところ、「そんなこと誰でも知ってるよ」というコメントを受け取りました。このようなエピソードがあって私は、多くの人が知ってはいるものの、実際にはよく理解していないのではないかと思うようになりました。でなければオーストラリア人がお金の管理に苦労することはないはずです。そして、ロウ総裁が言及した「常識リスト」を使って、借入れ全般や投資の意思決定についてお話することは有益かもしれないと考えるようになりました。以下の内容は、意図的に簡潔なものにとどめており、また多くの事例は、私の個人的な経験に基づくものです。

1. 金融商品についてもいろいろ見比べましょう

私たちは、消費財について、最良の取引を得るためにいろいろ店を見て回ることがありますが、金融サービスに関しても同様のアプローチをとるべきです。ロウ総裁が指摘するように、「住宅ローン、電力契約、電話プランといったものについて、より良い条件の商品がないか見比べることを躊躇すべきではありません」。保険、銀行預金、スーパーアニュエーション(豪州の確定拠出年金制度)についても同様です。金融サービスの世界は競争が激しく、金融会社はあなたとの取引を獲得し、それを維持したいと考えています。そのため、例えば家財保険の更新時期が到来し、料金を見直したときに年間の支払料がインフレ率(現在は2%程度)を上回って上昇していることが分かった場合には、保険会社に電話してもっと良い商品がないか聞くことは大切なことです。私は、長期にわたるロイヤルティの高い顧客であるという理由で、しばしばこのようなことをして、より良い取引を獲得しています。

2. 借金をしすぎてはいけません

借金は、ある時点までは素晴らしいものです。本来、明日まで待たなければならないものを今日手に入れるのに役立ちます。それによって、家のような長期「資産」に関連した費用を何年にもわたって分割することが可能になり、投資リターンを高めることができます。一方で、借り過ぎに陥る可能性があります。かつて、ある賢者は「あなたを破滅させるのは、持っているものではなく、負っているものだ」と述べました。借金の返済のために、投資を積み増すべき時に売却せざるを得なくなったり、さらに悪い場合には破産したり、あるいは、価値が下がったところで家を売却しなければならないといった可能性を秘めた過度の負債を負わないように常に注意しなければなりません。おおまかな指針として金利負担が所得の30%を超えると、その負債は多すぎるかもしれませんが、これはあなたの収入と費用次第です。所得が高い人は、生活費が収入に占める割合が小さいため、所得に対する金利負担が高くなるのを消化することができます。

3. 金利は上下するものだと心に留めましょう

2010年に豪州で政策金利が最後に引き上げられて以来長い年月が経ちました。そのため、ロウ総裁が述べているように、「多くの借り手が政策金利の上昇を経験したことがありません」。しかし、最近の金利低下や長引く低金利環境に慣れきってはいけません。金利の上昇はまだ先の話(RBAの次の一手は追加利下げかもしれません)と私は考えていますが、これは単なる一つの見通しであり、間違っているかもしません。歴史が示すように、最終的に金利サイクルは上昇すると予想されます。米国に目を向ければ、6年近いゼロ金利の後、米国の政策金利は過去3年間で2%上昇しました。したがって重要なことは、将来ある時点で金利が上昇した場合でも、それに対応できるだけの余裕を確保しておくことです。また、政策金利が上昇したときの株価の振れ幅は、最近市場に大きな懸念をもたらした銀行株を中心とした景気サイクルを背景とした株価下落よりもはるかに大きくなる傾向があることも心に留めておくべきです。

4. 時にはうまく行かないこともあることを認め、不測の事態に備えましょう

もう一つ、ロウ知事の言葉ですが、「物事はいつも予想どおりになるとは限りません。だから不測の事態に備えて余裕を持っておくことは非常に大切なことです」。最悪の日は、金利上昇、失業、あるいは予期せぬ出費の後にやって来るかもしません。このことが基本的に意味することは、借入可能額ギリギリまで借りることは控え、支払いは期日前に行うようにし、借入れを行う際には少なくとも2%の金利上昇に耐えられることを確保しておくことが重要だということです。

5. クレジットカードは便利ですが、注意が必要です

私はクレジットカードが大好きです。クレジットカードは、最大6~7週間の無利息の融資を提供してくれるだけでなく、ポイントを付与してくれ、そしてポイントはどんどん溜まっていきます(ポイントをギフトカードに交換することで、素敵なクリスマスプレゼントができてしまいます!)。ですから、できるだけ多くの費用をクレジットカードで賄おうとすることは理にかなっています。しかし、キャッシングを受けたり、支払期日までに全額を返済しなかったりすると、20~21%程度の高金利が課せられます。そのため、キャッシングは極度の緊急事態でなければ絶対に使ってはならず、返済は常に期日までに行わなければなりません。確かに、20-21%の金利は法外な水準に聞こえるかもしれませんが、クレジットカードの負債はあなたの家では担保されておらず、少なくとも高い金利が支払期限までに追加的な支払いインセンティブを与えていることも事実です。

6. 長期債務として住宅ローンを活用しましょう

クレジットカードによる借入は長期債務ではありませんが、住宅ローンは長期債務です。住宅が担保となっていることが1つの要因となり、住宅ローン利率の大半は約4~5%と、他の借入金利と比較して低水準です。このため、もしあなたがクレジットカードの返済期限と比較して長期の借入をしているとしたら、その借入は住宅ローンであるべきです。

7. 貯蓄や投資を早い段階でスタートしましょう

もしあなたが住宅資金の確保や退職に備えた貯蓄のため、富を築きたいと希望するのであれば、利益が利益を生む複利を利用することが最善の方法です。当然のことですが、複利は長期間にわたり、平均して高い利益を生む資産クラスにおいて最も機能します。しかしその効果を最大限に利用するには、可能な限り早く投資を始めることが必要です。このため、銀行が定期的に子供たちに手渡す貯金箱には、貯蓄の習慣が早いうちに身に付くというメリットがあります。

ここは、複利効果を示すため、1900年1月に豪州の株式、債券、および預金に1ドルを投資した時のその後の価格の推移(配当および金利を同期間中に再投資)を示す、私のお気に入りのチャートをご覧いただく良い機会となります。預金は安全ですがリターンが低く、1米ドルが今日時点で僅か237米ドルに増えたに過ぎません。株式はボラティリティが高いものの(以下のチャートの→部分で強調した箇所)、資産が成長しているのが確認でき、1米ドルが今日時点で526,399米ドルまで拡大しています。

出所:Global Financial Data、AMPキャピタル

8. 資産価格の変動に一喜一憂しないようにしましょう

株式市場において下落局面があることは良く知られています。株式市場で確認されるボラティリティは、株式に長期的に投資した場合、大半の他のアセットと比較してより高いリターンが得られることへの対価です。しかしこれが不動産となると、価値は決して下がらないという都市伝説があるようです。不動産は日々取引されるものではなく、日々のセンチメントの変化に影響を受けないため、不動産価格の変動はもちろん株価よりも常に小幅となります。しかし過去を振り返ると、住宅価格も上下していることが分かります。日本の不動産価格は1980年代のバブルの後、約20年に亘り下落し、米国および一部の欧州諸国の不動産価格は世界金融危機において急落し、豪州の住宅市場ではここ何年かにおいて価格の下落局面が確認されており、現在も一つの下落局面の最中にあります。つまり大事な点は、たとえ人口が増加し経済が拡大局面にあったとしても、資産価格は必ずしも常に上昇するわけではないということです。

9.市場で起きることを長期的な視点で見ましょう

500億米ドルが株式市場から一日で消滅したと聞かされると恐怖を覚えますが、実際に市場がどれだけ下落したのかについての情報は少なく、市場が下落した後に保有株式を売却したときに何らかの損失が確定するのです。2015~16年にかけて株式市場が約20%下落したことは衝撃でしたが、世界金融危機(GFC)の時はさらにひどく、約50%下落しました。しかし、このようなことは株式市場では頻繁に起きており、1987年のブラックマンデーの時は数ヵ月で50%もの下落を経験し、また1973年から74年にかけて豪州株式市場は59%下落しました。そして、その度に株式市場は回復してきました。したがって、多少の違いはあっても、これらは全て我々が経験してきたことなのです。またこれらの急落は投資戦略において周期的に経験するもので、それが実際に起った時に、以前にも経験してきたことであり、株式市場は必ず底をつけ、その後は長期的な上昇トレンドが始まることを思い出すことが大切です。

10. 自身のリスク許容度を把握しましょう

投資を始める時に、もしも株式市場の下落によって、あなたの資産の20%の価値が損なわれてしまったら、どのように思うかについて考えてみる価値はあります。もしもあなたの反応が、「好ましくはないが、このようなことは株式市場では時折経験することで、適切な投資戦略を忠実に実行していればいつかは回復するだろう」と考えることが出来るのであれば問題はありません。しかし、「このことで夜も眠ることができない。この状況から救ってくれ」と考えるのであれば、投資を再考することが望ましいでしょう。でないと、高値で買って、底値で売却する羽目になります。したがって、自身のリスク許容度にあった投資戦略を立てるようにしましょう。

11. 「マム・アンド・ダッド銀行」を最大限に活用しましょう

1990年代半ばに始まった豪州の住宅ブームは、昨年シドニーとメルボルンでピークに達し、多くの人々にとって住宅購入が非常に困難な状況になりました。このことがミレニアル世代からベビーブーマー世代や一部のジェネレーションX世代への巨額の富の移転に貢献しました。現在進行中の住宅価格の調整が、その状況を修正し始めるのに役立つことを期待しています。しかし、そうしている間にもミレニアル世代は、可能であれば「マム・アンド・ダッド銀行」を最大限に活用することが理にかなっていると考えられます。これには2つの方法があります。一つは、出来る限り長い間両親と同居して、安い家賃を享受しつつ不動産投資を行い、所得から金利コストを差し引いて税金を減らして出来る限り早く負債を返済することで、その結果として本当に欲しいものを手に入れることが出来るかもしれません。(もちろん、労働党政権に変更があった場合には、ネガティブ・ギアリングに影響を及ぼす可能性があります。)もう一つは、預金を増やす手伝いを両親に頼んでみることを検討しましょう。私の子供には、くれぐれも言わないでください!

12. パーティーで聞いたことには御用心(他の人たちが言うことに囚われないようにしましょう)

一年前、ビットコインは大流行でした。私の犬でさえ、それについて尋ねていました。画期的な発明と思われていたビットコインは、誰もがビットコインの話をしていた時に約1万9000米ドルまで上昇しましたが、結局、賢明な投資先とは言えませんでした(現在の価格は、6,500米ドル以下)。時には人と反対のことをするのが最良の投資となります。

13.フリーランチはないことを肝に銘じましょう

借金や投資に関して、フリーランチはありません。もし話しがあまりにもうますぎて信じられないと感じるのであれば(超低金利であれ、超高収益・低リスクをうたう投資商品であれ)、それはおそらくあなたの感覚が正しく、避けておくのがベストです。

最後に

今回は、主にパーソナル・ファイナンスと投資にフォーカスしてお話してきましたが、分散投資や長期的な視点での投資といった点にご関心のある方は、英語版アーカイブでレポートをご覧いただけます。

 

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