不動産サイクルはインカム成長ステージに突入しようとしています。不動産投資の観点からは、豪州政府が発表した連邦予算案は、中期的に力強いアップサイドの存在を示唆しています。
不動産投資家の朗報は、所得税減税、インフラ支出、R&D/高齢者ケア・サービス投資です。これら政策を背景に、失業率が低下、そして消費者信頼感が徐々に回復するにつれ、オフィス・セクターでは需要が拡大し、良好なパフォーマンスが期待できるでしょう。
以下では、連邦予算案が各セクターにもたらす恩恵を取り纏めています。
オフィス
オフィス・セクターでは、雇用の伸びが需要拡大に寄与する構図が予想されます。法人税減税、そして新規雇用に対するインセンティブの発表を受けて、今後は小規模事業における雇用拡大が新規需要を大きく後押しすると見込まれます。
オフィス・スペースのベース需要を見ると、従業員20名未満の小規模事業がその8割超を占めています。フロア一部やより小規模のオフィス・スペースに対する需要は、短期で拡大が見込まれており、シドニーやメルボルンといった空室率が低い市場では、賃料上昇のオポチュニティをもたらと見られています。
ITや科学、リサーチ企業といった次世代のテナントにとって朗報なのは、13億豪ドル規模の21世紀医療産業成長計画です。中でも、シドニー北部やメルボルン南東部といった大都市圏のオフィス市場が恩恵を受けるでしょう。
注目ポイント:CBDオフィス市場では、雇用拡大を背景に、堅調な需要環境が継続する見通しです。また、大都市圏市場では、ヘルスケア・セクターを中心に、R&DやIT産業の成長が需要を後押しすると見込まれます。
小売
2024年には年間総額4,600豪ドルの税負担軽減が盛り込まれた所得税減税は、長期にわたり家計に余裕を与えることとなり、これが小売消費に反映されると見込まれます。
この所得税減税を背景に小売消費が本格的に拡大するためには、2003~2008年のハワード政権時の様に、実質成長2%を超えるペースで賃金が上昇する必要があります。一方で、短期的には、食料品など生活必需品サービス分野が恩恵を受ける見通しです。
その効果のほどですが、今年7月以降は年間500豪ドル程度と、当初はそれ程期待できません。しかし、減税は今後7年間に渡って段階的に実施されることから、賃金は徐々に上昇基調へと向かい、小売売上高の伸びは年率2-3%から2020年には4%を上回る水準に達すると予想されます。
また、同政府によるエネルギー政策(National Energy Guarantee、NEG)も年間400豪ドルの家計支出節約に寄与しており、低所得層に更なる余裕を与える要因となっています。
注目ポイント:消費者信頼感は短期的に改善する見通しです。所得税減税の長期的な恩恵が家計に浸透するとともに、小売事業環境は2019~2020年以降も継続的な改善が期待できるでしょう。この局面でも、利便性を追求したコンビニエンス型資産や多様なテナントを組み入れたモール等が引き続き選好されます。
産業用不動産
勝ち組の中でも、特に見通しが明るいセクターのひとつが産業用不動産です。250億豪ドル規模のインフラ支出拡大というプラス要因以外にも、今後5年間で所得税減税を背景とした小売消費拡大からも恩恵を受ける見通しです。
全国の産業用不動産市場において、テナント賃貸の70%超を占める小売、卸売、運輸/ロジスティクスのセクターでは、家計のゆとりと共に拡大する小売消費からの恩恵が確認できると見られます。
都市部の渋滞緩和に向けた10億豪ドル規模の基金など、インフラ公共投資や交通改善の戦略を受けて、都心部におけるラストマイルのロジスティクス・セクターの進展を支えるポジティブな環境が整うでしょう。
245億豪ドルという大規模インフラ支出計画は、貨物輸送にとって大きなプラスであり、東海岸のロジスティクス・オペレーターや処理能力の改善をサポートするものです。コフス・ハーバーのバイパス開発(971百万豪ドル規模)は、シドニー~ブリスベン間の貨物輸送を大きく変えるカタリストとなる見通しです。
注目ポイント:最も堅調な需要が確認される市場は引き続きシドニーとなるものの、その水準は過去最高となっており、より割高となると懸念されます。空室率がより高いブリスベンでは、比較的に軟調さが継続しますが、インフラ投資計画を受けて中期的なアップサイドが期待できるでしょう。
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