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豪州経済:成長の改善が続くものの、利上げは2019年以降になると予想される5つの理由

主なポイント

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2017年、豪州経済は2.4%成長を記録した一方、人口増を勘案した潜在成長率を大幅に下回りました。

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経済成長が継続し若干上向きとなることを見込む根拠としては、ほぼ一巡した鉱業投資の減速、非鉱業投資の加速、好調な公共投資、貿易の貢献、企業収益の改善が挙げられます。一方、今年の成長率は3%を僅かに下回る可能性が高く、基調インフレ率の低迷が持続すると見られます。

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当社では豪州準備銀行(RBA)が2019年までに利上げに舵を切ると見込んでいません(当初は今年後半の利上げを見込んでいましたが)。豪州株式は年末までに更なる上昇を見込んでいるものの、グローバル株式を引き続きアンダーパフォームすると思われます。

何とか成長を維持する豪州経済

ここ数年、豪州経済は2-3%成長をさまよっています。今回も2017年10-12月期の国内総生産(GDP)が前期比で僅か0.4%増、前年比では2.4%増となり1年前と同程度の成長に留まりました。当期は個人消費と公共投資が成長を下支えした一方、住宅投資や設備投資の減速、そして純輸出減が大きな足かせとなりました。

出所:ABS、AMPキャピタル

豪州は引き続き景気後退に陥ることのないよう抗っていますが、一方で、一人当たりGDPは前年同期比で僅か0.8%増とほぼ全ての主要国を下回っていることから、経済成長も潜在成長率を大きく下回るものとなっています。

いつもの懸念事項リスト

グローバル市場における懸念材料はさておき、豪州の懸念材料は明らかです。

  • 2013年から2016年にかけてみられた住宅建設の成長への貢献が弱まり、また建設許可件数は減少に転じています。
  • 平均住宅価格は急落に対する不安視から、少しずつ下落に転じています。しかし、住宅供給の急増、RBAによる大幅な利上げ、そして(もしくは) 失業率の急上昇がないという前提において、当社では引き続きシドニーやメルボルンの住宅価格の下落率は5-10%にとどまり、他の都市ではより明るい見通しが確認されると見込んでいます。
  • 低い賃金上昇率や高水準の不完全就業率、個人資産の低い伸びを背景に、個人消費の見通しは好転せず、依然不透明です。資産の増加が家計部門の貯蓄率低下に拍車をかけ(現在僅か2.7%)ているものの、シドニーとメルボルンの住宅市場が冷え込んでいることから、この傾向が続く可能性は低いでしょう。
  • 鉱業投資は依然減速しており、今年度及び来年度の投資計画では約15%減となっています。
  • 豪ドルは2015年の底値から12%上昇し、約0.78米ドルで推移しており、観光業、農業、製造など対外依存度が高いセクターの成長を脅かすリスクがあります。
  • インフレ期待の減退から基調インフレ率が超低水準にとどまり、賃金上昇がより困難となっており、また豪ドル高の進行も足かせとなっています。
  • 政治家が一致団結して生産性向上に向けた経済改革を断行するのは困難と見られます。2017年の生産性は0.8%に低下し、状況がすぐには打開されない可能性が高いと見られます。

なぜ経済成長が維持されるのかの5つの理由

これらの懸念材料は何も今に始まったものではありません。当社では、景気後退が回避され、まずまずの経済成長が維持される理由として、引き続き以下の5つを挙げています。

  • まず第1に、鉱業投資の停滞はほぼ一巡しています。5年前、鉱業投資がGDPに占める割合は過去最高水準の7%を伺う水準となりましたが、その後、年率1.5%程度の成長率押し下げ要因となりながら低下してきました。現在はGDPに占める割合が2%程度となり、今後は年間で0.3%程度の押し下げ要因に留まると予想されるため、底入れは近いと見ています。
出所:ABS、AMPキャピタル

第2に、非鉱業投資が足元で増加してきています。今年度における企業の設備投資計画を1年前の数値を比較すると、今年度の設備投資は約3%の下落を示しており、2018年から2019年は同様の規模で上昇しています(下記チャート参照)。しかし、これは2013年以降で最高水準であり、鉱業投資を除いた場合、2018年、2019年とも非鉱業投資は8%上昇することになります。

出所:ABS、AMPキャピタル
  • 第3に、公共投資はインフラ支出の増加を背景に堅調に上昇しています。
  • 第4に、資源開発プロジェクトの完了や世界的な資源需要の増加が資源輸出高を押し上げると見られ、また観光・高等教育事業といったサービスセクターも伸びていることから、純輸出が経済成長を増加させると見られます。
  • 最後に、上場企業の収益も改善しています。これは投資にとって支援材料となります。
出所:UBS、AMPキャピタル

2016年から2017年のコモディティ価格急騰を背景に豪州企業は2016年~2017年の決算で16%もの増益を記録しましたが、その効果ははげ落ち、足元では6%程度の増益となっているものの、世界金融危機以前よりも増益企業の数は増えています(全体の74%)。また豪州企業の92%は直近の決算において、業績や成長見通しに対して大きな自信を示しており、増配もしくは配当水準の維持を発表しました。

出所:AMPキャピタル

住宅市場が減速し、個人消費が抑制されている一方で、足かせとなっていた鉱業投資の影響が弱まり、好調な非鉱業投資(公共および民間)、堅調な輸出増により経済成長が維持され、2.5%~3%の経済成長が見込まれます。とはいえ、今年および来年におけるRBA予想3.25%を引き続き下回ることが予想されます。これに加えて、賃金成長やインフレ率が暫くの間は低水準で推移すると予想されるため、RBAが利上げに踏み切る時期は今年後半から来年の2月と予想しています。

最後に

投資家に対するいくつかの見解を述べさせていただきます。

第一に、経済成長の継続は成長資産にポジティブな影響を与えると見ています。豪州株式市場は、グローバル市場における懸念材料、 特に米国のインフレ率や米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ、貿易戦争に対する不安などとは無縁ではありませんが、ASX 200が年末にかけてさらに上昇するとの見方を維持しています。

第二に、暫くの間、投資家は銀行預金から高いリターンを望むことはできないでしょう。もし投資元本の保全を求めるのなら、銀行預金を続けることが良いかもしれません。しかし、それがそこそこの利回りであるのならば、銀行預金金利を上回る利回りを提供するたくさんの選択肢があります。豪州株式市場と銀行預金金利のイールドギャップは、依然として大きく拡がった状態が続いています。

第三に豪州株式市場はインカム収入を得る上で最良の投資先ではあるものの、グローバル株式市場は引き続き豪州株式市場をアウトパフォームすると予想しています。実際、2009年10月以降、グローバル株式市場は豪州株式市場をアウトパフォームしており、直近5年間では現地通貨建てベースで年率4%近く、豪ドルベースで年率約9%アウトパフォームしています。これは、豪州の金融政策が相対的に引き締め傾向であったことや、コモディティ市場の低迷、2010年にパリティを上回る豪ドル高となった影響が遅れて出てきたこと、2000年から2009年にかけてアウトパフォームした豪州株式市場の平均回帰的な動きなどを反映していると見られます。豪州企業の利益成長率は7%程度である一方、その他主要国の企業の利益成長率はその倍であることから、豪州株式市場のアンダーパフォーマンスは、しばらく続く可能性があります。したがって、グローバル分散投資は投資家にとって引き続き重要な戦略となります。

最後に、豪ドルについては下落リスクが続いています。RBAは金利据え置きを継続し、一方でFRBは今月後半にも利上げを行い、今年中に計4回の利上げが見込まれる中、RBAとFRBの金利差がマイナスとなり、年末にかけてマイナス幅がさらに拡大すると見られます。歴史的に見て、このことは豪ドル安の要因となってきました。豪州の相対的に高い貿易依存度を考えると、世界的な貿易戦争の恐れがリスクを増幅させる可能性があります。こうしたこと全てが、ヘッジなしベースでのグローバル分散投資の重要性を示しています。

出所:ブルームバーグ、AMPキャピタル
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