リタイアメント投資:間違ったリスクを管理していませんか?

個人投資家の多くは、時間の経過とともに、ファンド目標に沿って資金運用の調整が必要であると考えています。

しかしながら、豪州における従来のスーパーアニュエーションやリタイアメント向け運用は、幅広い環境やリスク、バリュエーション水準が必ずしも検討されないまま、各資産クラスへの固定のアロケーションを取るというアクティブ運用が中心でした。この戦略において「アクティブ」なのは、各資産クラスのマネージャー選択でした。

世界金融危機(GFC)は、本当のリスクとは何であるのかを人々に知らしめた出来事となり、誤ったリスクに対して必要以上のフォーカスを置いていた事が明らかになったのです。投資家にとっての最大のリスクは資産アロケーション自体であり、これら各資産クラスの運用を担当するファンドマネージャーではないという点です。

GFC後、ファンド目標にもっと忠実(そして、多くの場合、より関連性の高い目標を持つ)かつ、最終投資家の目標達成に向けてあらゆるレベルのリスクをダイナミックに管理する、新しいタイプのファンドが登場しています。

従来の資産アロケーションのアプローチ

マルチアセット投資は、2つの異なる層で構成されています。まず最初は、異なる投資の相対ウエイトを決定するためアセットアロケーションです。2つ目は、アセットアロケーションに基づくポートフォリオの運用です。

従来のバランス型ポートフォリオは、一般的に株式と債券で構成され、確定給付型(DB)のスーパーアニュエーション基金の運用に活用される事が多く、ベンチマークに対するアウトパフォーマンスという投資目標にフォーカスしたものでした。付加価値の創造は、銘柄選択または株と債券の組み入れ比率の(多くの場合控えめな)調整を通じて行うというものでした。

このDBに代わり台頭するようになったのが、確定拠出型(DC)です。これは、最終投資家の長期投資目標に沿った固定の戦略的アセットアロケーションの構築にフォーカスしたもので、インフレに連動して調整が行われる場合があるものの、ダイナミックな変更は行われません。

この戦略は、ポートフォリオ・マネージャーによってベンチマーク運用が行われます。付加価値の創造は、この監督やマネージャー選択と再選択、そしてベンチマークに対するアウトパフォーマンスによるものでした。

最終投資家の目標にフォーカスする事の重要性

リタイアメントを目の前に控えた投資家は、目標を達成するために経済サイクルの好転を待つ時間や、リスクを取る事はできないのが一般的です。中でも、資産残高が多くない人は特に、市場の大きな下げに対して、金銭面そして感情面で極めて敏感です。ボラティリティを可能な限り抑えつつ、ある程度の成長を求める中で資本の保全を目指すこれら投資家にとって、この目標を達成する事の方が有意義な結果なのです。

残念なことに、ベンチマークやピアグループ、マネージャーリスクなど、資産運用業界がこれまでに管理に慣れ親しんできたリスクの管理にフォーカスを置くマインドセットを持つ運用マネージャーはいまだ数多く存在します。最終投資家が目指す長期のインカムとキャピタルの目標を判断するメジャーとして、これらは力不足であるにもかかわらず・・・。

長期の投資結果を予測するにあたり、短期的なピア・グループやベンチマークの比較が有効だと考える人は少ないものの、簡単な比較を可能にするという点は事実です。複雑化した世界において、徹底した分析に代わる立派なツールであると考えられています。

ゴールに基づく投資目標の台頭

GFCが発生し、ファンドは、最終投資家の期待から大きく逸脱した損失を被ることとなりました。これを受けて、特定のインカム目標や低リスクのインフレ連動リターン、リタイアメントが近づくにつれて低下する市場リスクの許容度を反映したリターンなど、結果にフォーカスした目標に基づくマルチアセット型ポートフォリオが台頭することとなったのです。この様なファンドの人気が高まっているとはいえ、伝統的なベンチマーク運用のファンドと比較すると、その運用資産規模はまだ極めて小さいものとなっています。

ゴールベースのファンドでは、最終投資家の目標達成を考える上で対ピアグループで見た短期的なパフォーマンスは有効な指標ではないと考えることから、運用マネージャーにとってこの優先度は低くあるべきです。しかし、ファンド成績を比較するリーグテーブルが登場していることからも、ファンドの投資目標から多くのマネージャーの注意をそらすことになりかねません。

コンサルタントやマルチアセット運用マネージャーの中には、伝統的な戦略的アセットアロケーションをゴールベース投資に組み入れているケースもあり、この場合、ガバナンスに配分されたリスクは全て、リスクを固定かつ最低限に抑えた戦略的アセットアロケーションのモデルの構築で使い切ってしまうことになります。従って、マネージャー・リスクの管理は、多様な投資スタイルやリスク管理アプローチを持つアセット・マネージャー複数に運用をアウトソースすることで行われます。

しかし、固定の戦略的アセットアロケーションに基づく投資戦略では、ファンド全体を見る運用マネージャーがボラティリティを機動的に管理することは不可能です。

マネージャー分散が高いということは、マネージャー数が増えるほど、手数料控除前のリターンは市場リターンと近くなると言えます。これによって、市場リスクが戻ってきてしまいます。また、異なる戦略やマネージャー・リスクの許容度、ガバナンスの取り組みを理解し、分析し、モニタリングする必要があることから、複雑性のリスクも大きくなります。

その他、実物資産への投資は、推定される短期的な市場ボラティリティの低減に役立ち、マルチアセット投資において有益な役割を果たすことができます。しかし、非上場資産へのエクスポージャーを引き上げることは、市場の混乱が高まる局面では特に流動性リスクの上昇を意味する事から、リタイアメントを目の前に控えた投資家にとっては特に問題となります。

これらの「リスク管理ツール」はどれも、外部の投資環境や最終投資家のデモグラフィクスの変化に合わせた、運用マネージャーによる市場のダウンサイド・リスクの効率的な管理を可能とするものではありません。

ボラティリティの管理には、より機動的なアプローチが必要

リタイアメントではシークエンス・リスク(退職直前・直後の市場暴落リスク)が増加し、インカムに対するニーズも柔軟ではなくなっていきます。よりインフレ・リスクに敏感となり、流動性に対するニーズが高まり、課税面の課題が浮上する可能性もあります。従って、注力すべきは、最終投資家のニーズに沿った投資結果を達成するにあたって決定要因となる、これらリスクの管理です。

つまり、最終投資家の長寿やインフレ・リスクをもっと機動的に管理し、ライフステージに合わせて進展させることで、マーケットのダウンサイド・リスク許容度の範囲内で絶対リターンの最大化を図ることが必要なのです。

機動的なアセットアロケーションのアプローチは、対価が最も期待できる局面で使い切る様にリスクバジェットを調整することで、優れた投資結果を提供することが可能です。これは、景気サイクル、異なる局面における様々な資産クラスや通貨、投資スタイルやセクターの相対価値の分析に基づいています。この分析を通じて、成長が不均等に同期したり、イールドに異変が生じたりする局面や、テールリスクに対するプロテクションのコストに差が生じたり、インフレ・プロテクションのコストが通貨間で異なってくる場面において、機会の発掘が可能となります。固定の戦略的アセットアロケーションのアプローチでは、この様なオポチュニティを活用したボラティリティの管理は不可能です。

しかしながら、十分なリソースを有する機関投資家向けマルチ・マネージャーの様に、リスク許容度の変化に合わせてボラティリティを機動的に管理するのは、個人投資家やフィナンシャル・プランナーにとって困難です。

マネージャーがフォーカスすべきは、投資目標の達成である

投資運用業界は、最終投資家の投資目標において決定要因ではないリスクに注目しすぎています。

運用マネージャーがフォーカスすべきは、インフレと長寿リスクのコントロールに向けて市場のボラティリティを機動的に管理しながら、特定の投資目標を達成することです。これを行わずに、ベンチマークやピアグループといった短期的な要因にフォーカスし続けるのだとすれば、満足できる投資結果を最終投資家に提供することは不可能でしょう。

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ゴールベース投資におけるリスクとは、ベンチマークに対するパフォーマンスではなく、自身の目標が達成できるのかです。

マルチアセット・グループ、シニア・ポートフォリオ・マネージャー、リタイアメント担当ヘッド ダレン・ビーズリー

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