ESGラップ 2018年12月

今月は、2018年の主なテーマを振り返ります。

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ソーシャルメディアとデータのプライバシー

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気候変動

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プラスチックと廃棄物

ソーシャルメディアとデータのプライバシー

主な出来事

  • 3月、政治データ分析会社ケンブリッジ・アナリティカが、ドナルド・トランプ氏の2016年米国大統領選挙キャンペーン支援目的で、フェイスブック利用者50百万人超の個人情報を利用者の同意なしに購入取得していた事が発覚しました。フェイスブックのプライバシー問題は、今年一年を通して話題になりました。
  • グーグルもまた、メディア批判を受けています。設定をオフにした状態でも、ユーザーの位置データを収集し続けていたことが8月に発覚し、プライバシーの侵害として訴訟に発展しました。
  • サイバーセキュリティの脅威に対応すべく、規制や調査が幅広く実施されました。豪州では、新たな情報漏えい通知義務(The Australian Notifiable Data Breaches、NDB)が2月に施行されています。
  • 12月には、豪州競争・消費者委員会(ACCC)がデジタル・プラットフォームに関する調査の暫定報告書を発表し、豪州メディアはフェイスブックやグーグルによって操作されており、信頼性に欠ける情報源に対してより多くの権限を与えるようなフィルターが使用されているとの懸念を表明しています。
  • 世界各国の法人税制度は日々変化するソーシャルメディア企業の事業モデルに対応できておらず、これら企業は、課税額や納税先など法人税に関する非難を浴びています。

投資への影響

  • ソーシャルメディアやIT企業において、プライバシーやデータ・セキュリティの取り扱いは、その事業の成功への鍵であると言っても過言ではありません。これら企業は、収集データの収益化とユーザーの信頼とのバランスを維持しなければなりません。
  • 事故であれ違法行為であれ、データ侵害は、規制当局による罰金や制裁、被害者からの損害賠償請求だけでなく、世評の観点からも企業にとって大きな痛手となります。最終的には、個人情報を保護できない企業と取引したいと考える人はいないからです。
  • サイバー・セキュリティやデータ保護の対応に乏しい企業は、損失を被ります。企業は、そのリスクだけでなく、新しい規制や計画に基づいた義務を理解する必要があります。新たな情報漏えい通知義務(NDB)制度下では、違反を重ね、問題解決への取り組みに乏しい企業は、報告義務を果たしていても、処罰を受ける可能性があります。
  • これら問題を認識し、企業の対応を知ることで、情報に基づいたより良い投資意思決定が可能となります。

 

気候変動

主な出来事

  • 今年年初、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は、同市の年金基金5件において化石燃料事業への投資総額50億米ドル規模を処分すると発表しました。また、これら年金基金は、BP、シェブロン、コノコフィリップス、エクソン・モービル、ロイヤル・ダッチの石油メジャー5社を起訴し、気候変動被害の対策コストとして損害賠償を求める計画であるとしています。
  • 4月には、世界最古の保険会社である英ロイズ・オブ・ロンドンが、石炭関連企業への投資を停止することを発表しました。
  • また、英国環境監査委員会(EAC)は、国内の大手年金に対して、気候変動が年金貯蓄にもたらすリスク情報の開示を要求しています。
  • 欧州では、蓄電技術の向上と費用低下を反映して、複数の国や都市が、2030年までにディーゼル車やガソリン車の販売を禁止する計画を発表しています。電気自動車(EV)への移行は、気候変動対応の必要性を受けた次世代のディスラプションであると言えます。
  • 一方、豪州では、リオ・ティント社オリジン・エナジー社に対し、豪州鉱物資源評議会(MCA)等業界団体への参加状況の見直しと開示を要求する内容の株主提案が提出されました。両社の株主提案ともに、数多くの賛成票が集まりました。
  • これら株主提案は、豪州だけでなくグローバルで見ても、気候変動に関する株主アクティビズムの高まりを浮き彫りにしています。投資家主導の5か年イニシアチブである「Climate Action 100+」は、温室効果ガス排出量の多い大企業に対して気候変動対応を働きかける事を目的としています。投資家は、企業に対して、気候変動に関するガバナンスと財務情報開示の強化や、排出削減を求めています。
  • 豪州では、2019年の総選挙を前に、新しいエネルギー政策「国家エネルギー保証制度(National Energy Guarantee、NEG)」の導入が先行き不透明となっています。
  • HSBCは、危うい地球(Fragile Planet)と題したレポートを発表し、豪州が気候変動に最も脆弱な国の一つであることを指摘しています。
  • 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)もまた、特別報告書を発表しています。同レポートでは、気候変動による大きな影響を避けるためには、地球温暖化を1.5°C以内に抑制する必要があることが指摘されています。
  • ポーランドで開催された国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)では、気候変動を受けた投資リスクの高まりが指摘された一方で、一部の石炭産業代表者から批判の声が上がりました。

投資への影響

  • 化石燃料関連企業から投融資を引き揚げる投資家の動きは、たばこ関連企業を投資対象から排除する動きと様相が同じです。持続可能ではない事業や気候変動への寄与度が大きい事業への投資にはリスクが伴うことから、今後20年程度で徐々に廃止となるでしょう。
  • 気候変動への対応に関しては、正しい方向への第一歩を歩み出したと言えますが、株主やステークホルダーらが企業に求めているのは、透明性により優れた、一貫性のあるアプローチです。
  • エネルギー政策の不透明感が高まる豪州では、化石燃料関連を含む多くの企業が、設備投資に関して情報に基づいたより良い意思決定を可能にするようにと、政策と炭素価格の明確化を呼びかけています。

 

プラスチックと廃棄物

主な出来事

  • 国連環境計画(The United Nations Environment Programme、UNEP)は、大きな環境問題のひとつである使い捨てプラスチックに関する報告書を発表しています。同レポートは、各国政府や企業が幅広く取り組みを開始しており、その試みや失敗、成功事例から多くを学べると指摘しています。
  • 人間の体内にある事が初めて発見されたマイクロプラスチックは、世界で販売されている塩の9割にも含まれています。
  • スーパーマーケット大手のコールズとウールワースはプラスチックのレジ袋禁止に動きましたが、一度撤廃した後、再度禁止となりました。この廃止を受けて、レジ袋使用は僅か3ヶ月で15億枚削除となりました。これは、豪州国内における使い捨てプラスチック袋使用の8割削減に匹敵します。
  • ダボスで開催された世界経済フォーラムでは、アムコール、エコベール、エビアン、ロレアル、マーズ、マークス&スペンサー、ペプシコ、コカ・コーラ、ユニリーバ、ウォルマート、ヴェルナー&メルツというグローバル企業11社が、2025年までに全ての包装を再利用、リサイクル、堆肥化可能な素材にするための取り組みを行うと発表しました。
  • タイで打ち上げられ、死亡したゴンドウクジラの胃からは、プラスチック袋80枚が発見されています。
  • 2017年末に廃プラスチックの輸入を禁止した中国の動きは、廃棄物問題に関する有効な法令整備や廃棄物輸出という問題に直面する国が存在する中で、世界に波紋を広げました。

投資への影響

  • 2018年における一連のイベントから学ぶべき主なポイントは、幾つかあります。まず、使い捨てプラスチックに関する消費者意識が高まっていることから、ブランド各社にとっては絶好のPRの機会である点です。プラスチック問題に関する話題が多い点も、事業や消費者の注目を維持する上で役立っています。
  • この早い段階でプラスチック対策を提唱する企業にとって、持続可能なものづくり、廃棄物処理、リサイクルが競争優位性となり得るでしょう。また、サプライヤーとの協働を通じて、プラスチックに代わる新たな包装や、よりサステイナブルな解決策の発掘に取り組む機会です。サプライチェーンの透明性向上を求める動きが高まっている事からも、サプライヤーはより多くの責任が問われる事になるでしょう。
  • また、包装とプラスチック使用にかかる外部費用の転嫁が広く認識されるようになっており、廃棄物処理に関する企業責任の徹底を図る法整備がより多くの国で進むと見込まれます。従って、生産者や販売者を中心としたバリューチェーンの多くでは、プラスチックや包装利用の最小化やリサイクル推進といった取り組みにフォーカスする必要があります。
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