経済&マーケット

2018年のレビューと2019年のアウトルック:緩やかな景気サイクルの継続が見込まれる

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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2018年はグローバルで堅調な経済成長と収益の伸びが見られ、依然として低金利が継続したものの、米連邦準備制度理事会(FRB)の動向や貿易戦争、そして世界経済成長を巡る懸念が市場変動の高まりやリターンの悪化に繋がり、投資家にとっては難しい1年でした。

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2019年は、成長が収益の伸びを支えつつ安定化することが予想されることから、多くが警戒する不況突入の可能性は低いでしょう。FRBは利上げを停止し、世界的に引き続き緩和的な金融政策が維持されると見られます。豪州準備銀行(RBA)は利下げが予想されます。

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このような状況のもと、市場変動は依然として高いと思われますが、市場は来年改善に向かうものと思われます。

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注視すべき主な点はFRBの動向、米中間の貿易摩擦、世界経済の成長、中国経済の成長、豪州の不動産価格下落を巡るリスクです。

2018年 – 想定より弱含んだ1年

相対的にボラティリティが低く良好なリターンをあげた2017年に対し、2018年はボラティリティは高くリターンも弱含む真逆の1年となりました。堅調な出だしとなった1月でしたが、2月以降市場は混乱に見舞われました。大局的に見れば決して悪くはありませんが、世界経済は3.7%前後で堅調に推移し、米国ではインフレ率は上昇したものの、他国では引き続き低水準にとどまっており、FRBはFF金利の引き上げを行ったもののグローバル全体では依然として金利水準は低位にあり企業収益も堅調に推移しました。ただし水面下に潜むリスクが同時に顕在化したことから市場は混乱しました。

2018年は以下の5つが主なネガティブ要因となりました。:

  • FRBへの懸念: FRBはサプライズを起こさず、米国のインフレも同様でしたが、投資家はFRBによる利上げが米国の経済と企業収益を圧迫するとの懸念を強めました。
  • 米ドル高:米ドルは2016年時の水準を上回らなかったものの、米ドル建て債務を多く抱える新興国にとって悪材料となりました。
  • トランプ米大統領による貿易戦争:2018年において常に高いリスクであり株式市場の重石となりました。当初米国とそれ以外の国々という構図が次第に中国との新たな冷戦の様相を呈するようになり、成長と収益に対する懸念が高まりました。
  • 中国経済の減速:信用引き締めの結果、中国は予想通り6.5%前後の成長となりましたが、貿易戦争と組み合わさりグローバル経済の成長に対する懸念が更に高まりました。
  • グローバル経済の非同期化:米国経済は堅調である一方で、欧州、日本、中国、新興国は軟調でした。

豪州の経済成長は概ねトレンドに沿い27年間景気後退を経験せずに成長を継続しました。インフラ投資、設備投資の改善や堅調な輸出は経済成長を支え、雇用者数の伸びに加えて失業率の低下を促し、連邦予算も黒字化に近づきつつあります。一方で王立委員会の調査結果に伴う銀行への規制圧力や貸し出し基準の大幅な引き締め、住宅価格の下落、依然として弱い賃金の伸びや目標を下回るインフレを背景にRBAは政策金利を据え置いています。

結果として全般的にボラティリティが高まり、投資環境は混乱に見舞われる形となりました。

出所:トムソン・ロイター、モーニングスター、REIA、AMPキャピタル
  • グローバル株式市場では2月と10月にかけて大幅に調整する局面が見られ、現地通貨ベースで下落しました。米国の株式市場は上昇したものの、グローバル全体では下落したため、米国の上昇がみえない結果となりました。ヘッジなしグローバル株式市場は豪ドルの下落により上昇しました。
  • アジアおよびエマージング株式市場では2017年は力強いリターンとなったものの、2018年は米ドル高による債務増大、米国を発端とした貿易戦争による成長鈍化、一部の国における政治的問題といった点に対する懸念から下落しました。
  • 豪州株式市場は、銀行、住宅価格の下落を背景とする個人消費の低迷、利回りに敏感な通信、公益セクターの下落といった悪材料が、例年並みの企業収益や低金利といった好材料を上回ったため、軟調なパフォーマンスとなりました。
  • 国債市場は、低い利回り水準や、FRBの利上げによる国債利回りの上昇を受けてキャピタル・ロスが発生したため、昨年に引き続き凡庸なリターンとなりました。一方で豪州債券は他の債券市場をアウトパフォームしました。
  • リート市場は引き続きFRBの利上げと高い債券利回りに左右されました。
  • 非上場の商業用不動産やインフラは相対的に高い利回りを求める投資家により引き続き堅調に推移しました。
  • コモディティ価格はグローバル経済の成長懸念により軟調な展開となりました。原油価格は、米国の対イラン制裁により上昇したものの、その後は需要鈍化を受けて下落し、ボラティリティの高い展開となりました。
  • 豪州の住宅価格はシドニーとメルボルンが主導する形で下落しました。
  • 現金や銀行預金のリターンは過去最低水準のRBA金利を反映し低水準となりました。
  • 豪ドルは、米ドルの上昇やコモディティ価格の下落等を受けて低迷しました。
  • 大半の資産クラスの軟調なリターンを反映し、バランス型のスーパーアニュエーションファンドのリターンも軟調に推移しました。

2019年-視界良好も、さらに変動の大きい相場展開に

大局的に見ると、グローバル経済は、2011年~2012年、2015年~2016年頃に確認されたように、小幅な景気減速傾向にあるようです。この点は、減速しているものの、依然として良好さを示すPMIにおいて最も顕著に表れています。下記のグラフをご参照ください。

出所:ブルームバーグ、IMF、AMPキャピタル

上記グラフで示されるような景気減速は、株式などの上場リスク資産にとってプラスにはなりませんが、景気後退の始まりを示す兆候とは考えにくく、主要な外的ショックを遮断していると考えられます。金融政策は世界的に利上げの方向にありますが、世界金融危機以前とは異なり、金融引き締めとはほど遠い状況にあり、景気後退時に先行して確認される高インフレ、急激な債務拡大、過剰投資といった顕著な兆しは米国やグローバルで確認されていません。実際、現在進行中の成長の鈍化がインフレ圧力を押し下げ、緩和的な金融環境をもたらす限り、景気サイクルが延長される、すなわち次の景気後退入りのタイミングが遅れる可能性が高くなります。主要な例としては石油価格の下落が挙げられ、インフレを幾分押し下げ、消費支出を押し上げます。このような背景により、2019年のグローバルのテーマとしては、次のようなものが想定されます。

  • 世界の経済成長の安定化と再同期化:世界の成長率は2018年から低下し、3.5%前後と予想されますが、中国政府による財政刺激策の若干の拡大、FRBによる利上げの一服、通貨が対ドルで下落することによる米国以外の国の経済成長の底上げ、(願わくば)貿易戦争に対する懸念の鎮静化といった下半期における状況の改善は、これらに先立って現れる年前半の成長鈍化を覆い隠す可能性が高くなります。全体的に見れば、これにより企業の利益成長はグローバルである程度下支えを受けると予想されます。
  • 引き続き低位の世界のインフレ率:経済成長率が短期的に、ほぼトレンド、もしくは、それを僅かに下回る水準まで低下し、コモディティ価格も下落するため、インフレ率は引き続き低い水準を維持する可能性が高いと思われます。米国は労働市場が逼迫しているため、依然としてインフレ率が高くなるリスクが最も高いとみられますが、様々な企業調査によると、今のところ米国のインフレ率は2%前後でピークに達している可能性があります。
  • 比較的緩和的な金融政策:FRBは、政策金利が利上げにより中立金利のレンジに突入することから、上半期に利上げを打ち止めにする可能性が高く、2019年は2回の利上げにとどまる可能性があります。FRB以外の中央銀行による利上げは、程遠い状態です。実際、中国や欧州中央銀行(ECB)では、さらなる金融緩和が行われる可能性が高く、銀行に対して更に低コストの資金が供給される可能性があります。
  • 地政学的リスクの継続とボラティリティ:今後も米中関係に主眼が置かれ、とりわけ両国の貿易が注目されます。トランプ大統領は、関税が米国経済に深刻な影響を及ぼし、2020年の再選を脅かす前に貿易面での解決策を見つけたいと考えていますが、ブエノスアイレスで開催されたトランプ大統領と習近平中国国家主席との首脳会談で決定した関税引き上げの猶予期限である3月1日までに解決するかどうかは不透明であり、この問題を受けた市場のボラティリティがさらに高まると予想しています。南シナ海を含むより広範な問題や、予算案を巡るイタリア政府とEUの交渉に関する問題も再燃する可能性あります。

豪州では、インフラ投資、企業投資、輸出額が堅調に推移することで、経済成長は維持されると予想されますが、住宅市場の下落や、住宅価格の下落による消費支出に対する逆資産効果により、経済成長率は2.5~3%程度に抑えられる可能性が高いです。その結果、賃金の成長は鈍化し、インフレ率は長期的には目標を下回ると予想されます。このような状況から、RBAは、政策金利を2019年後半に2回引き下げ、1%にすると予想されます。

投資家へのインプリケーション

米国の金利、貿易、経済成長を巡る不透明感は引き続き高いと思われることから、ボラティリティは2019年も高水準を維持する可能性が高いと思われますが、最終的にはグローバルで緩やかな経済成長と、依然として緩和的な金融政策が、2018年よりも高いリターンを生み出すであろうと思われます。

  • グローバル株式は2019年初めにも新たな安値を更新する可能性があり(2016年のように)、ボラティリティは高水準を維持する可能性が高い一方、バリュエーションは改善し、2019年中に緩やかな経済成長と企業収益が回復すると思われます。
  • 新興国市場は、米ドルが予想どおりにより抑えられる展開になれば、アウトパフォームする可能性が高くなります。
  • 豪州株式市場は堅調に推移すると見込まれますが、リターンは8%程度に留まると予想されます。S&P/ASX200指数は2019年末までに6000ポイント近辺に到達する見込みです。
  • 債券市場は、足元の利回りが低く、債券投資のリターンは低くなると見られます。
  • 非上場の商業用不動産やインフラ資産は、今後も投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する可能性が高いですが、そのペースは減速しています。
  • シドニーやメルボルンでは、信用が逼迫し、供給が増加し、海外投資家からの需要が減少し、労働党が支持率を拡大するなか税制が変更される可能性があることから、全国の住宅価格はさらに5%下落し、10%程度下落すると予想されています。
  • 現金と銀行預金によるリターンは、引き続き低い状態が続くと見られます。
  • 豪ドルは、豪州準備銀行(RBA)のキャッシュレートと米国FF金利の乖離がさらにマイナスに転じるにつれて、0.60ドル台後半にさらに下落する可能性が高いです。

最後に

2018年の混乱後、2019年の見通しは例年よりも不透明感が強いものとなりそうです。2019年の注目点は次のとおりです。

  • 米国のインフレ率とFRBの金融政策:弊社の基本シナリオは、米国のインフレ率が2%前後で安定し、FRBが利上げを一時停止/先延ばしするというものですが、インフレが加速すれば、より速いペースでの金融引き締め、債券利回りの急激な反発、そしてエマージング市場にとって悪材料となる米ドルの大幅な上昇を意味します。
  • 米国の貿易戦争:中国、欧州、日本との交渉により、現在停戦中かもしませんが、間違った方向に進み、再燃する可能性があります。米中間の緊張は、概して市場にとって重大なリスクをもたらします。
  • 世界の経済指標:当社が正しければ、上のグラフに示されたPMIのような経済指標は、今後6ヶ月間に安定化する必要があります。
  • 中国の経済成長:中国経済の継続的な減速は、グローバル経済の成長とコモディティ価格にとって大きな懸念材料となるでしょう。
  • 豪州の不動産価格下落:今後の下落度合い、そして非鉱業投資やインフラ投資、輸出が住宅建設や個人消費の落ち込みを相殺できるか。
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