環境・社会・ガバナンス(ESG)

ESGラップ 2018年8月:ソーシャルメディアのプライバシー

By AMPキャピタル

ESG(環境・社会・ガバナンス)ラップでは、メディアで話題のESGトピックを取り上げ、投資への影響を考えます。

今月は、ソーシャルメディアに影響を及ぼしているデータ・セキュリティやプライバシーなどに焦点を当てます。

ソーシャルメディア企業による利用者のプライバシー保護が話題になっています。なぜなら、これら利用者の信頼なくしては、無料サービスを中心としたこれらの事業モデルが成り立たないからです。

利用者がソーシャルメディア企業に置いている信頼は、ハッカーからの情報保護だけではありません。ソーシャルメディア企業による個人情報のアクセスや利用は、利用者が想定する方法(例:広告)でしか行われないという点でも信頼を置いているからです。しかし、偽ニュース、偽アカウント、アルゴリズム主導のサイコグラフィック(心理学的属性)プロファイリングの台頭に伴い、利用者は購買習慣以上のより幅広い範囲で影響を受けるリスクに晒されています。ソーシャルメディア企業は、利用者の信頼維持と商業面やその他の関係を管理するに当たり、非常に微妙なバランスを維持しなくてはいけません。

ソーシャルメディア企業がプライバシーと経済的な重圧をどの様に管理しているかは、話の一部にすぎません。パブリック及びプライベートな議論の場として急速に成長しているソーシャルメディア企業は、利用者がどのコンテンツを閲覧するのか・しないのかという観点から、重要な役割を果たしています。ある利用者が言論の自由と考えるコンテンツでも、他の利用者にとっては迫害と感じる場合もあります。また、民主的に選出されたわけではない営利主導型の企業、すなわちソーシャルメディア企業が、裁定者としての役割を担っているのです。

2000年代初期以降、ソーシャルメディア企業は急速に成長しています。個人情報保護の法令に関しては、世界各地の法令をつぎはぎ的に合わせて対応されてきたものの、ソーシャルメディアの規模と高度化に追い付いていません。また、ソーシャル・ライセンス・トゥ・オペレート(社会的な営業許可)の維持に必要な倫理的行動に関して、コンセンサスに達するまでの道のりはまだ相当遠く、合意に至ることさえも難しいかもしれません。従って、これらの問題に取り組んでいる主体は、ソーシャルメディア企業自身となっています。

プライバシーとデータ・セキュリティのリスクは、ソーシャルメディア企業に限ったものではありません。何らかの顧客情報を保持していない人・組織・事業を見つけることは困難です。数多くの企業によって収集される顧客個人データは、多くの場合、中核事業の副産物です。友人と写真やメッセージを共有するなど、無料サービスを個人情報と引き換えに提供する企業は、収集した顧客データの保護と利用において、利用者の信頼を損なうリスクがより大きいと懸念されています。また、極めてセンシティブな個人情報がしばしば共有されている点は、ソーシャルメディア独特の性質です。ソーシャルメディア事業モデルの多くが深刻なプライバシー・リスクをもたらす可能性があるという意見の背景には、個人情報の量、性質、商業性など、複数要因が相重なっている事実があります。

ソーシャルメディアとは?

ソーシャルメディアは、ウェブサイトやアプリケーション/アプリ等のテクノロジーを活用して、利用者が情報を作成・共有、ネットワーク接続できる場を提供しています。ソーシャルメディア技術には、ブログ、フォーラム、ビジネス/ソーシャル・ネットワーク、写真/ビデオ共有、ソーシャル・ゲーム、バーチャル・ワールドが含まれます。

ソーシャルメディア企業の収益源

利用者データを収集し、そのデータを広告販売に使用するというのがソーシャルメディア企業の典型的な事業モデルです。ソーシャルメディア企業は、プロファイル情報を収集し、どのページが好きかをモニタリングし、他に訪問したウェブサイトをトラッキングすることによって、自社プラットフォームの利用者の特性を見極め、それに応じてターゲティング広告を表示しています。

このターゲットを絞った広告によって、ターゲットを絞らなかった場合と比較するとコンバージョン率(広告を見て商品やサービスを購入する利用者)の改善が期待できるため、広告主としてはより効率的に予算を使う事ができます。代替肉広告の有効性(と経済性)を考えた場合、Facebookでビーガンやベジタリアンである利用者に対して広告を打つのに対し、屋外看板広告を打つのでは、どちらが優れているのでしょうか?Facebook上に食の選好を表記する設定がなくても、菜食主義に関するポストやウェブサイトを訪問して「いいね!」した事がトラッキングされていれば、ソーシャルメディア・プラットフォームが使うアルゴリズムによって、ベジタリアンであることを判断するのは極めて簡単です。

なぜ、プライバシーをめぐる議論が過熱しているのか?

一般的に、自分自身に関するプライバシーをある程度保持したいと考えるのは普通なことです。その理由としては、なりすましリスクの低減、監視の回避、パブリックな場において機密情報や個人情報を共有したがらない、といった事が考えられます。

ほとんどのソーシャル・メディア利用者は、プラットフォームへの「無料」アクセスの対価として、そのデータと個人情報が利用され、ターゲティング広告の対象となることを認識しています。これはTVコマーシャルが放送される民間テレビの視聴と似ていますが、主な違いは、ソーシャルメディアにおける広告やコンテンツのターゲティング精度が優れている点です。

しかし、利用者の許可なしに、他の人や事業体がその情報を取得したとすると?もし、その情報が利用者の想定を超えて利用されて、利用者行動に影響を与えていたとしたら?例を挙げると、商品やサービスの広告目的以外の利用や、政治的意見や社会的意見に影響を与える事を目的とした場合です。これらは、ソーシャルメディア企業によるプライバシーの取り扱いにおいて、主要な関心事のひとつです。

個人情報の保護

プライバシーとデータ・セキュリティの取り扱いは、ソーシャルメディア事業の成功に不可欠な要素です。企業は、収集したデータのマネタイズとユーザーの信頼維持のバランス取らなければなりません。

情報漏えいは、事故・違法行為に関係なく、規制当局の罰金や制裁措置、被害者に対する賠償といった金銭面、そしてレピュテーション(評判)の観点から事業に悪影響を及ぼします。個人情報を保護できない企業は、利用者を失います。これは、利用者の信頼を維持することでデータ収集や活用を行っているソーシャルメディア企業にとって、特に重要な点です。

プライバシーは人権なのか?

1948年に採択された世界人権宣言(UDHR)の第12条では、「何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。」としています。
UDHR自体は法的拘束力を持たないため、どの様に解釈され、批准されるかによって、実際に法的影響を持つようになります。プライバシーの法的性格は、国や地域に根ざした規則・規制を組み合わせによって決まってきますが、膨大なグローバル情報経済が急速に成長する中で、ますます不十分なシステムとなっています。

2018年5月にEUが導入したEU一般データ保護規則(GDPR)は、プライバシー管理における世界的なベンチマークとなることが期待されています。GDPRは、データ・プライバシーに向けた文化的なシフトのカタリストとなり、情報経済に大きな影響を与える可能性があります。米国のCONSENT法案その他法案 では、データ収集を行うソーシャル・ネットワークに対して、「個人情報の利用、共有、または販売」にあたり利用者から明確な同意を得ることを要求しています。

その他の人権は?

より不透明なのは、思想の自由、意見、言葉など、その他の人権の取り扱いに関する道筋です。例えば、ソーシャルメディアにおける人権の対立(コンフリクト)の取り扱いです。ソーシャルメディアからヘイトスピーチを排除・削除することは、思想や意見の自由に対する権利の侵害となるのでしょうか?その境界線は、どの様に判断・合意すべきなのでしょうか?Googleは、人工知能(AI)に関する倫理原則を発表し、この分野における前進を試みました。この詳細はこちら に掲載されています。

ソーシャルメディアの倫理:その他の検討事項

たばこ産業に関する大規模な調査によって、3大陸にわたる児童労働の蔓延、特に開発途上国における児童労働の増加が明らかになりました。

コンテンツ管理

偽情報、偽ニュース、偽アカウント、ヘイトスピーチ、暴力描写の広まりに関するニュースで、ヘッドラインを賑わせているのがソーシャルメディア企業です。2018年2月、世界最大規模の広告主であるユニリーバは、違法コンテンツの適切な取り締まりが行われない場合、FacebookやGoogle等をボイコットすると警告しました。Facebookは、2015年1月以降、この種のコンテンツを除外するためのアルゴリズムを整備しており、2016年12月には、同コンテンツの対処法を大幅に見直すと発表しています。Facebookなどのソーシャルメディア・プロバイダーにとって、これは依然として大きな問題です。こうしたコンテンツを許可することは、少なくともユーザーの信頼を損なう事になるからです。

ソーシャルメディアは中毒/社会的危害をもたらすのか?

ソーシャルメディア企業は、ギャンブル産業が利用者を「病みつき」にさせるのに使った戦術と同様の手法を使ったとして、非難を浴びています。また、利用者の脳内では、自分のポストに対する「いいね!」やコメントを受け取るたびに、ドーパミン(快感・多幸感・意欲に関連するホルモン)が排出されるといった推測もあります。また、オンラインの表現が自動的に記録され、アーカイブ化されるというソーシャルメディアの性質を十分に理解していない、経験の浅い利用者にも有害な影響が及ぶことがあります。独自コンテンツと修正されたコンテンツを識別するのは難しいばかりか、コンテンツの潜在的な可視性は極めて莫大です。すべての閲覧者が目に見えるわけではく、どこまでがプライベートで、どこからがパブリックなのかが不明確です。

政府による監視

米国防総省は2007年2月4日、出来事、状態、関係の観点から個人生活の「スレッド」を追跡することを目的とし、対象者の電話番号や電子メールの利用履歴、行動や訪問先など、当事者の経験をすべて取り込む事を可能とする「ライフログ(生活行動記録)プロジェクト」を廃止しました。このプロジェクトが廃止となった同日、Facebookがスタートしています。

その後2013年には、NSA(国家安全保障局)の元請負業者であるエドワード・スノーデン氏が同局の機密情報を暴露し、様々なテレコム企業や政府の協力を得て実施されている多数のグローバル監視プログラムの存在が明らかになりました。スノーデン氏によるリークと米国政府の対応を受けて注目が集まったのは、政府が通信会社に対してデータ収集を要求し、政府がそのデータを利用している点です。プライバシーの問題は、民間企業による情報利用に限らず、政府による情報利用の問題でもあります。

今後の行方

ソーシャルメディア企業は、友人や家族とのつながりを提供するだけでなく、言論の自由という観点からも利用者に多様な社会的メリットを提供しています。言論の自由は、もはや伝統的なメディアを支配する「エリート」に限った話ではないのです。良くも悪くも、あらゆる人がその声を世界に向けて発信できるようになりました。また、チュニジアやエジプトにおける大規模な抗議行動を可能とし、独裁政権を打倒する上で大きな役割を果たすなど、政治運動の促進にも貢献しています。

その反面、新たに発言力を得た声は必ずしも望ましいものであるとは限りません。Facebookライブの動画生配信では驚くべき暴力映像が幾度となく放送され、すべてのソーシャルメディア企業は憎しみやいじめの広がりとの闘いを続けなければなりません。ソーシャルメディア企業は、公的な議論の司会者として行動するという暗黙の責任に直面しています。また、有効なマーケティングとプライバシー侵害の違いは、実に紙一重です。

これらの問題を認識し、ソーシャルメディア企業がこの問題をどう管理されているかを知ることは、ソーシャルメディアの利用にあたり、情報に基づいたより良い判断を行うのに役立ちます。これと同様に、投資家にとっても、より優れた情報に基づいた投資意思決定を可能とするものです。

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