主なポイント
消費者は瞬時の満足(インスタント・グラティフィケーション)を追求しており、配送時間が短縮しています。
人手不足と交通渋滞は、ロケーションに優れたロジスティクス施設の重要性を強調しています。
賃料コストは上昇していますが、ロジスティクス・サプライチェーン費用に占める割合は僅かです。
サプライチェーンにおけるロジスティクス不動産の重要性が高まるにつれて、賃料成長の余地が生まれています。
「失われた時間は二度と戻ってこない」-ベンジャミン・フランクリン(1706-1790年)
自宅配送という利便性に対するプレミアム支払いに対する私たちの意欲を誰よりも先に見通したのは、恐らくベンジャミン・フランクリンではないでしょうか。
一部市場が完全雇用に近づく一方で、ネットショッピングは急増しており、スピード配達のニーズが高まり、都市部における交通渋滞の悪化をもたらしています。
企業はB2BとB2C顧客との距離の近さに注目しており、TTM(time to market、製品を市場に投入するまでの時間)の重要性という観点から、サプライチェーン効率が話題となっています。
この流れを受けて、都市部ロジスティクス不動産の需要が劇的に変化しており、世界の不動産投資家に興味深いオポチュニティを提供しています。
Eコマースにおける配送時間は大きく短縮されました。配送期間は昔、週単位で考える事が一般的でしたが、アマゾンの翌日配送サービスが普及する現在、もうこれは受け入れられません。
翌日配送や同日配送、アマゾンのプライム・ナウが提供する1時間配送を経験した顧客が、より時間のかかる配送に戻ることはほぼ不可能でしょう。時間の重要性はB2Bのロジスティクス市場にも影響を及ぼしており、2日配送がより幅広くスタンダートになりつつあります。
これを受けて、ロジスティクス企業におけるサプライチェーン管理の役割に注目が集まっています。つまり、戦略的な観点から言うと、配送時間を最小限に短縮しつつ、ロジスティクスのサプライチェーン総費用を管理することです。
通常の実店舗と比較すると、Eコマースのフルフィルメント(受注から配送までの一連業務)には約3倍の床面積が必要ですが、賃料がロジスティクスのサプライチェーン総費用に占める割合は僅かでしかありません。
唯一最大の費用は輸送です。輸送コストは上昇していることからも、業界全体にとって特に頭の痛い問題です。米国トラック輸送会社JBハントによると、トラック輸送費用は今後1年で10%の上昇(これは貨物料金に転嫁されます)が見込まれていますが、より長期では、自動化によるコスト削減により最終的には低下する見通しです。
米国でトラック運転手として働く労働者は約3.5百万人おり、トラック輸送セクターは同国における大雇用主だと言えます。輸送費用の上昇は運転手不足が原因であると米国トラック輸送協会は指摘します。収益見通しに対して研修費用が高額であることや、車両自動化の流れを受けてキャリア寿命が懸念されることからも、就業者の数は減少しています。最近の賃金引上げや入社ボーナスにも関わらず、トラック運転車の人手不足は2017年年末時点で5万人となっています(出所:米国トラック輸送協会)。
サプライチェーン費用の大きな要因は、総費用の約10%を占める人件費(出所:JLL)であることからも、主要な課題は人手の確保でしょう。一部の主要市場では失業率が過去最低に達し、米国では2018年7月に3.9%と、2000年4月以来の最低水準に近づいています(出所:米国労働統計局)。
米国では過去10年間で14万人程度の減少を記録するなど、小売の雇用低下は目新しいニュースではありません。しかし、この減少分を十二分に相殺しているのが倉庫作業員の雇用増加で、米シンクタンクのプログレッシブ・ポリシー・インスティチュートによると、約40万人増加しています。この影響は特に、雇用需要が高まる12月のホリデー・シーズンに鮮明に表れています。
サプライチェーン費用の大部分はロジスティクス関連費用であり、輸送、在庫、人件費を合わせると総費用の約80%に達します。これに対し、賃用は5%未満に過ぎません(出所:JLL)。つまり、ロジスティクス不動産のロケーションとクオリティが重要となるのです。
図表1:ロジスティクスのサプライチェーン費用内訳

輸送コストの上昇、人材確保と人件費、スピード配送需要を背景に、ロジスティクス企業は揃って人口集中部近郊の配送センター確保に動いています。土地代は、一般的に都市部に近づくにつれて上昇しますが、ロジスティクス事業全体から見たコスト要因として考える必要があります。
米国や日本のように、人手不足が深刻な市場においてロジスティクス不動産が提供する価値は、人材確保と維持に寄与するでしょう。ロジスティクス顧客がリース時に求めるのは、より「人間中心」に設計された配送センターで、従業員向けの食堂やフィットネス・センター、保育所など、これまでCBDのオフィス不動産に限定されてきた施設・サービスを備えたものです。
この様な施設を配送センターの設計に組み入れることで費用は明らかに上昇しますが、テナントは、これらの福利厚生を従業員に提供することで、給与や採用コスト面で採用者側にも恩恵がある点に留意しているのです。
長期で考えると、倉庫の自動化が進み、電気/自動運転の配送トラックの導入が始まることからも、人件費や輸送コストの重要性は低下し始める可能性もあります。しかし、ロジスティクス不動産プロバイダーの成功の鍵を握るのは最終顧客に対するサービスである点は変わらないでしょう。
これとは別に、足元の市場における喫緊の課題といえるのは、多くの配送ネットワークが複雑で、短期的な成長や買収目的で発展してきている点です。つまり、非戦略的に開発が進んできたことから、サプライチェーン効率は極めて低いという問題です。これは、ロジスティクス不動産オーナーにとってみると、テナント企業とのコラボレーションを通じた配送戦略の最適化を実行する機会でもあります。一般的に、最適化を通じてサプライチェーン総費用の5~12%削減が可能です。 |
当社では、Eコマースの成長は今後も継続し、そのスピードは世界的にも加速すると見込んでおり、従来の小売事業も、サプライチェーン効率の向上に注力すると予想しています。この複合効果によって、ロケーションに優れたロジスティクス施設の需要は更に高まるでしょう。
図表2:米国ロジスティクス市場-完工、ネット・アブソープション、空室率の推移

この影響は現在、優良ロケーションに位置するロジスティクス施設の空室率と賃料成長見通しに反映されています。中でも、米国では空室率が過去最低水準に達しています。この成長軌道にのったロジスティクス不動産からバリューを得ようと、機関投資家はそのエクスポージャーを積み上げに動いています。
ネットショッピングのサービスに対する期待の高まり、交通渋滞、輸送コスト、人手不足といったトレンドは、今後も継続が見込まれています。従って、投資家が注目すべきは、人口増加が目覚ましい都市部近郊の効率性に優れたロジスティクス資産です。
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