経済&マーケット

軟調なシドニーとメルボルンの住宅価格:これは急落の予兆?

By シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジー&エコノミクス担当ヘッド、チーフ・エコノミスト 豪州、シドニー

主なポイント

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シドニーとメルボルンの不動産価格はさらなる下値余地があると見られますが、住宅ローン金利の大幅な上昇や極端な物件供給の増加が起きず、最近の極めて活発な建設活動が長期間続かない限り、急落が起きる可能性は低いと考えられます。

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パフォーマンスでは、他の都市が優位性を発揮すると予想されます。

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不動産投資家は、今後もシドニーとメルボルンでの投資には慎重な姿勢を示し、出遅れ感のある都市での物件投資、あるいはより投資利回りの高い市場を重視すると見られます。

はじめに

3月に豪州の主要都市の住宅価格は0.2%下落し、5ヵ月連続で前月を下回りました。この結果、昨年5月は11.4%だった年間上昇率が、現在は0.8%にまで低下しました。直近に見られる軟調な動きの大半はシドニーが要因となっており、シドニー程ではなくともメルボルンにも下落傾向が現れています。

出所: コアロジック、AMP キャピタル

通常は住宅価格の下落に先行して金利の大幅な上昇が起きることから、現在の状況は異例とも言えます。シドニーとメルボルンの住宅価格下落と一致して、オークション・クリアランス率や住宅販売件数にも落ち込みが見られます。

出所: ドメイン、AMP キャピタル

住宅価格はどの程度まで下落するのでしょうか?また、シドニーとメルボルンの軟調な傾向が他の都市にまで波及するでしょうか?さらに、住宅市場が幅広い経済にとってどのような意味を持つのでしょうか?

豪州のアキレス腱 – 住宅価格の急落リスク

シドニーとメルボルンで住宅価格が下落する中、これが急落の始まりと見る向きも一部で存在します。懸念する妥当な理由として、以下の点が挙げられます。

  • 主要都市の実質住宅価格は、長期トレンドを27%上回っており(以下のチャートを参照)、住宅価格に対する収入の比率、賃料において、OECD(経済強力開発機構)加盟国の中で豪州は最上位の一群に位置します。
出所: ABS、 AMP キャピタル
  • 1990年代半ば以降の所得に対する住宅価格の急上昇は、OECD加盟国の中で最上位の一角を占めるほど急増した家計債務と歩調を合わせて進行しています。
  • 長期的な価格上昇と低い住宅ローン金利の影響で、融資基準の一部で劣化が見られるようになる中、2015年は利息のみの返済が可能なインタレスト・オンリー・ローンが住宅ローン全体の約45%にのぼり、住宅購入者がローンを申請する際に実施される所得や生活費の査定に対する信頼性に懸念が生じていました。
  • 最後に、特にシドニーで稼働する住宅建設用クレーン数の多さが示すように、集合住宅の供給が急増しており、供給過剰に対する懸念も浮上しています。  
出所: RLBクレーン指数、AMP キャピタル

ただし、急落が起きる可能性は依然として低い

急落を予想する声や、住宅ローンから発生するストレスの話題は一般的になっており、これは過去15年間も延々と繰り返されている題材です。ただし、例えば豪州全域の平均住宅価格が20%急落するといった状況は今後も起こりそうにないと考えられます。

このように考える第一の理由として、厳格な不動産開発規制やインフラ整備の遅れによる影響から、住宅供給が人口の増加に伴う需要の増加ペースに追いついていないという現状が、住宅価格の上昇と高止まりを促した真の要因として挙げられるためです。過去10年間における年間の平均人口増加数は、2000年代半ばまでの10年間の数値をおよそ15万人上回っており、これは年間で5万戸ほどの新たな住宅が必要となることを意味します。それでも人口の増加に供給が追いついたのは、ごく最近のことです。そして、人口の増加傾向は依然として極めて高水準に留まっています。

出所: ABS、AMPキャピタル

人口の増加傾向と一致して、主要都市の空室率は過去の長期平均と同水準か、それを下回っており、この傾向は特にシドニーで顕著です。

第二に、住宅ローンから発生するストレスはリスクであるものの、APRA(豪州健全性規制庁)による貸出基準の厳格化以降は、インタレスト・オンリーの住宅ローン数が急速に減少しており、また、収入に占める借入金支払いの比率は過去10年間でやや低下しています。国勢調査のデータによると、住宅ローンを使用した持ち家所有者の所得に対する借入金の支払い比率が2011年では28%だったものの最近では約20%まで低下し、住宅ローンを抱える多くの家庭が返済を前倒しで行っているほか、銀行の持つ不良債権となったローンも低水準にとどまっています。また、一部では融資基準が甘くなったものの、GFC(世界金融危機)以前に米国で見られたNINJA(無所得、無職、無資産者)向けのローンに類似したような基準の劣化は存在していない模様です。

最後に、現状を一般化して評価するのは危険だと考えます。不動産価格はこれまでシドニーとメルボルンで急騰しましたが、パースとダーウィンでは下落しており、他の都市では緩やかな上昇に留まっています。

不動産価格急落の引き金となる可能性として、おそらく金利もしくは失業率の極端な上昇が挙げられますが、このいずれも起きそうにはないと予想されており、また、最近の高水準にある住宅建設が今後数年間継続した場合でも、かなりの影響が生じると考えられますが、住宅着工許可件数の伸びは2016年のピークから沈静化しており、この状況も実際に起きる確率は低いと見られます。

今後の見通し

銀行がローンの借手の所得や生活費の水準を以前よりも厳しく精査し、貸出基準のさらなる厳格化を図るほか、住宅の供給増や住宅購入者の住宅価格の上昇期待がより現実的になる中で、シドニーやメルボルンの不動産価格は2018年に5%程度下落し、翌年もさらに下落する可能性が高いと考えられます。

出所: コアロジック、AMP キャピタル

対照的に、パースやダーウィンの住宅価格は底値かそれに近い水準に位置しており、アデレードやキャンベラの価格上昇は緩やかなものに留まると見込まれる一方、相対的に高い人口増加の恩恵を享受するブリスベンでは、価格上昇がやや加速する可能性があり、現在ブームにあるホバートではさらなる上昇が予想されます。

より限られた供給や、都市部を約1.5%上回るより魅力的な賃料利回りを反映して、地方中心部の住宅価格は、今後も比較的速いペースで上昇する可能性があります。供給の急増から判断すると、戸建住宅のほうが高いリスクにさらされやすいと見られますが、これまでのところ住宅価格の伸びの鈍化はシドニーやメルボルンでより顕著です。

住宅市場のサイクルと豪州経済

住宅市場サイクルの減速は、住宅建設の鈍化、消費支出に波及する逆資産効果に加え、住宅ローンのデフォルト(債務不履行)率が上昇した場合は銀行を介して、より広範な経済にマイナスの影響をもたらしかねません。ただし、現状では、住宅建設による景気の下押し要因はごくわずかとなる可能性が高いと見られます。住宅建設許可件数は、新規の建設が激減するような状況を示しておらず(次のチャートを参照)、改修や増築件数は増加する様相を呈しています。逆資産効果は消費者の重しとなりますが、当社の見解が正しければ、さほど劇的な変化が現れることはないでしょう。さらに、不動産価格の暴落さえなければ、銀行に及ぶ影響も管理可能な範囲にとどまると考えられます。最後に、企業の投資や州の公共事業など他のセクターが、経済成長の牽引役として住宅セクターの代役を担いつつあります。

出所: ABS、AMP キャピタル

投資家に対するインプリケーション

投資家に対しては複数のインプリケーションが存在します。

  • まず、非常に長期的な観点では、費用調整後の住宅価格は豪州株式と同様のリターンをもたらしています(次のチャートを参照)住宅市場の、株式市場との相関性の低さ、流動性が低い一方ボラティリティも低いという特性はポートフォリオの分散化を図る上で優れた効果を発揮します。それゆえ、投資家のポートフォリオ内で不動産は明確な役割を果たします。

出所: ABS、 REIA、 グローバル・フィナンシャル・データ、AMP キャピタル
  • 二番目に、住宅市場に関しては、現時点で資金を投じる対象として慎重になるべきケースも依然として存在します。全ての尺度から割高感があり、他のグロース資産との比較で、得られるインカム(賃料)利回りは非常に低いものとなっています。これは、住宅投資家が資産価値の上昇に対して高く依存していることを意味します。
  • 三番目に、前述のコメントで指摘した点は、豪州の住宅市場全般に言及していますが、一般化して解釈することは危険です。シドニーやメルボルンと比べ、他の都市や地方の物件のほうがはるかに魅力的であると考えられます。
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