ゴールベース投資

現代ポートフォリオ理論を強化するゴールベースの投資アプローチ

By ジェフ・ロジャース
ipac担当チーフ・インベストメント・オフィサー(退役) 豪州、シドニー

従来、個人投資家とフィナンシャル・アドバイザーが目指してきた共通の目標は、許容できるボラティリティ水準に基づいたポートフォリオ・リターンの最大化でした。国民の多くが積立期にあった豪州にとって、この現代ポートフォリオ理論(MPT)のお手本的なアプローチは、理にかなっていました。

重要性の異なる目標を複数を持つ退職者数の増加など、大きな影響力を持つ出来事や社会的トレンドによって、一部の重要な局面における同アプローチの限界が浮き彫りになりました。市場とマネージャーにフォーカスを置くMPTは、投資という長い旅における投資家の期待値コントロールを助けるという観点から、程遠いものとなっています。

このMPTアプローチの欠点を受けて登場したのが、重要な個人投資家層により多くの信頼感と満足感を提供するゴールベース(目標主導型)のアプローチです。

本当に「合理的」なのか?

伝統的なMPTのアプローチにおける大きな課題のひとつは、投資家が投資オプションをどの様に比較するのかについての主な仮定が妥当なのかという点で、特に満足できない結果となるリスクの相対的な重要性です。

不透明な局面において、投資家は「合理的」なトレードオフに関する教科書的な仮定に基づいて行動するのではなく、様々な固有バイアスが投資家行動を左右し、時には投資家の目をくらませたということが、プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授の行動経済学の研究によって示されました。

世界金融危機(GFC)

もう一つの大きな課題は、GFCの強烈な体験です。ポートフォリオはMPTに基づいて分散されていたものの、分散をもたらすはずの資産が同じように下落しました。

それが例外的なケースであるのはもちろんですが、GFCは対応に悩む個人投資家やフィナンシャル・アドバイザーの姿を浮き彫りにしました。GFCが進行する中で、MPTはシンプルで規律あるプロセスをもった戦略的な行動の手引きを示すことはできませんでした。個人投資家はキャッシュに乗り換えるべきなのか?ここは我慢してお財布のひもを締めるべきなのか?だとすれば、どの程度節約したら良いのか?

ベビーブーマー世代の退職

しかし、伝統的な投資アプローチにおける大きな課題は、豪州そして世界でベビーブーマー世代の退職です。

これら退職者の投資目標は、積立期の人々とは大きく異なる事が明らかになっています。退職者が資産ポートフォリオに求めるのは支出の手助けであり、安定した一定の収入を必要とする一方で、海外旅行やリノベーション、子や孫への遺産といった他の目標も併せ持っています。

これら退職者の金融戦略は、退職特有の様々なリスクに対応するものでなければなりません:長生きすることで貯蓄が不足する長寿リスク、退職直後に資産価値が大きく破損するシークエンス・リスク、購買力を侵食する想定外のインフレ上昇などのイベント・リスクです。

リスク調整後の投資リターンの達成に基づく伝統的なMPTアプローチは、個人投資家の目標から独立しており、多様な目標を持つデキュミュレーション(資産取り崩し)期の人々を念頭において設計されたものではありません。ファンドマネージャーの注目は、相場環境とリターンの最大化に置かれており、それぞれの個人投資家によって異なるのユニークな状況からはかけ離れていました。

異なるアプローチ

これら課題のソリューションとして誕生したのが、ゴールべース投資です。

伝統的なMPTのアプローチにおける意思決定の順番が逆に並べ替えたのが、ゴールベースのアプローチです。まず最初に個人的なゴールやライフスタイルの目標を特定し、これらを最優先に位置付けます。その後、これら目標達成の可能性を最大化する戦略の設計に取り組みます。

ゴールベース投資において成功を図る物差しは、ベンチマークに対するアウトパフォーマンスではありません。失敗とは、アンダーパフォーマンスではなく、目標が達成できないことです。

目標のピラミッド階層

ゴールベースのアプローチにおいて、投資家やフィナンシャル・アドバイザーは、まず最初に、目標の十分な理解とその順位付けが可能となります。

心理学者のアブラハム・マズローは、1943年に発表した「人間の動機づけ理論(A Theory of Human Motivation)」において、人間の欲求を階層で理論化し、人間として生き残りに関連した最も基礎的な欲求を満たすことが最優先であると語り、このニーズが満たされて初めて、自己実現等のその他高層の欲求を追う事ができるとしています。

ゴールベースの投資アプローチでは、日々の生活費に関するニーズを最も重要かつ基礎的なニーズとして位置付けています。これは、第一に満たされるべきニーズであり、不足するとなれば苦しい生活に追い込まれます。旅行や遺産といった裁量の欲求や願望は、ピラミッドの上層に位置します。

情報と知識に基づく戦略

ゴールベースのアプローチは、デキュミュレーション期の人々を中心に、投資戦略の設計に寄与しています。

ファンド・マネージャーは従来、個人投資家が退職したばかりで、今後老後後期において望むよりも市場へのエクスポージャーが大きいという情報を知る事はありません。従って、これを戦略に組み入れることは不可能です。

退職者にとって必要なのは、インフレリスク、退職直後におけるエクスポージャーを上手く管理し、最初の5-10年の間はダウンサイド・プロテクションを組み入れることでシークエンス・リスクを回避してくれる戦略であり、短期で必要となる現金のニーズを満たしてくれるものです。

自信に満ちた投資家

ゴールベース投資の最大の恩恵は、投資という長い旅において、投資家とフィナンシャル・アドバイザーに自信を与えるという点ではないでしょうか。

GFCの最中、投資家は白旗をあげて投資戦略を投げ捨てて、キャッシュという誘惑に殺到しました。これは、最悪の売却タイミングです。

しかし、この決断は無理もない事です:投資家は単に、個人の目標とは全く関連性をもたない、抽象的で現実味のない戦略への信頼を失ったのです。

投資家の意見が尊重され、それぞれ個人の目標や願望がアドバイスや投資プロセスの全面に位置付けられており、マーケットが下落する局面でも戦略が目標に向かって忠実であるという点を再認識させられるという点で、ゴールべースのアプローチは、GFCの経験で失われた投資家信頼感の回復に寄与しています。

満足度した投資家

シンプルな目標ただ一つを持ち、豪州国民の多くが積立期にあった当時、現代ポートフォリオ理論は理にかなっていました。これによって誕生したリターン・フォーカスの哲学は、退職がまだ相当先となる積立期の人々にとって、相当の関連性があるものです。

しかし、退職者が増加する中で、退職直前や退職後の投資家が持つ複雑な目標に対応するためには、新たなパラダイムが必要となったのです。

ゴールベースのアプローチは、この課題のソリューションとなるものであり、フィナンシャル・アドバイザーの生産性向上を助け、満足度の高いハッピーな投資家を生み出しています。

AMPキャピタルにおけるゴールベースの投資アプローチに関しては、こちらをご覧ください。

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ipac担当チーフ・インベストメント・オフィサー(退役) ジェフ・ロジャース

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